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ミライの悪魔  作者: 宵暁
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第1話 プロローグ

プロローグ

その時は、突然だった!

ゴン!

倒れていく祠がスローモーションのように見える。少し足をつまずかせた拍子にこれだ。今日は運がないみたい。

ドーン!

ゴロゴロと転がっていく祠だった岩たち。私もこのまま、ゴロゴロしてたいよ。でも、そうはいかない。実際に、もうすぐ声がかかるだろう……。





 私は小学校から高校まである未来学園という所に通っている。そこを卒業した者は、皆エリートと呼ばれる。私もその一員だ。そして、今、私たちの物語が始まる!

「陽架ちゃん、起きて!入学式始まっちゃうよ!」

体を揺すぶられつづけて、少し目を開けると、焦った顔をした瑞葉がいた。

「うーん…まだ眠い…」

「え〜、抜け出そうと言ったの陽架ちゃんだよ」

その言葉を聞いて、ヤバいと思った。

「今何時?9時55分!」

うわ〜。今日入学式の30前には集合だって里彩にきつく言われてたのに!もう5分前だ!

「陽架ちゃん、これ!」

瑞葉が渡してきたのは、大きな鮭フレークのおにぎりだった。ちょうどお腹がすいていたから、瑞葉が勧めてくれた椅子に座って食べた。さすが、瑞葉!一口かじると鮭の塩辛さと白米の甘さが口いっぱいに広がった。食べ終わると、いつの間にか瑞葉が髪を結んでくれていた。

「ありがとう、瑞葉!すぐ着替えてくる」

急いで制服を着て、顔を洗う。支度が終わると、瑞葉は扉を開けて待ってくれていた。2人で急いで外に出て、黒薔薇寮へ向かう。

この未来学園には、白薔薇と黒薔薇の二つの寮がある。分けられ方は完全にランダム性で、私と瑞葉は白薔薇、里彩は黒薔薇となっている。

少し起きるには早い時間だからか、ホールには誰の姿もなかった。いつもは人で溢れているホールがこんなに静かなのは初めてだった。

寮の門のところまで行くと、瑞葉の姿がないことに気づく。もしかして

「陽架ちゃん。置いてかないでぇ〜」

瑞葉が少し離れて走っていた。走ってきたといっても、すごくゆっくりだけど。

「ごめん、瑞葉!急がなきゃって思って、飛ばしすぎた」

「ううん、急がなきゃ行けないのは本当だし、陽架ちゃんが速すぎるだけだよ!」

「ううん。それに、黒薔薇は少しまっすぐ行けばすぐだから、もうちょっとだよ」

「うん、そうだね」

黒薔薇と白薔薇は向かい合わせに立っていて、寮同士は互いが見えないくらい離れているが、まっすぐ進めばいいのでわかりやすい。

瑞葉の息が整ってから、また走り出した。今度は瑞葉の少し前を走るくらいのスピードにした。そうして、走っていると、黒薔薇寮が見えてきた。そして、門の前には里彩の姿があった。

「りさ〜!ごめん、遅れた!」

里彩は、寮の前の薔薇があしらわれた黒い柵にもたれ掛かるようにして本を読んでいる。すごく怒っているかと思ったが、こちらに気づくと、なんでもないふうに挨拶してきた。

「おはよう。意外と早かったね」

「おはよう、里彩ちゃん。入学式の時間までには間に合ってよかったね」

「ほんと、ごめん2人とも!じゃあ、さっそく行こう」

私が黒薔薇の方へ歩き出すと、里彩と瑞葉は校門の方へ歩き出していた。

「あれ?2人ともどこ行くの?」

「どこ行くのは、陽架だよ」

「陽架ちゃん、もしかして外出届貰ってないの」

「がいしゅつ、届け?」

そんなものがあったのか。里彩がじとっととした目で見てくる。

「陽架、外出届をもらえば隠し通路を使わなくても出られるんだよ」

「ごめん!私てっきり今日使うのかと思って…」

「陽架ちゃん、外出届は最低でも1週間前までには申請しておかないと…」

「うん、陽架は隠し通路使って、後で合流するしかないね。多分神社に繋がっていると思うから、着いたら電話して。いい、すぐに電話するんだよ」

「うん!」

里彩と瑞葉は、校門の方に歩いて行った。私もさっそく黒薔薇寮の裏手の方から柵を飛び越えて、中に入った。ここの庭は、いつも黒い薔薇が咲いていて、綺麗な所だ。今回は身を隠すのにぴったりだけど。

私は、身を屈めながら、庭の一番奥、大きな木があるところまで来た。

「確か、木の幹のすぐ下にあったはず」

里彩が前、見せてくれた時は、幹のすぐ下の草の中に取っ手があった。

「これだ!」

取っ手は、シンプルな丸い取っ手で、外にあるのに、ツルツルして銀色に輝いていた。取っ手を思いっきり引っ張ると、中から、階段が現れた。壁の両側には、ランプが一定の間隔でついていて、歩くのに十分な明るさだった。

「よし。早くみんなと合流しよう」

階段を降りていく。中は、外よりも少し涼しいくらいだった。ずいぶん長い階段みたいで、一番下の階段がかなり遠くにある。

下の階に降りると、今度は平らな通路が進んでいて、こちらも両側をランプに照らされていた。しかし、今度は道が曲がりくねっているところも多く、いつ着くか分かりにくい。

「うーん。一本道みたいだけど、どこまで続くんだろう」

道は、地面がむき出しで、形も歪だった。ランプがあるおかげで明るいが、目を凝らしても奥の方が見えない。

「里彩たちも待ってるし、とりあえず行ってみよう!」

ひとりで行くのは不安だったが、今から里彩たちを呼びに行くのはもう無理だし、それに里彩には絶対呆れられる。

とりあえず、歩き出す。でも、行けども、行けども同じ光景ばかりで飽きてきた。早く里彩たちに会いたいな。

いや、でも里彩も瑞葉も外出届がいるなら言ってくれればよかったのに。いや、でも里彩はこんなの普通のことって言いそう。

とそんなことを考えながら、最後の方は考える事もなくなって、ただただ歩いていくと、ようやく目の前に扉が現れた。

「やっと、出口か!」

ドアノブに手をかけて、まわす。扉を開けると、階段はなく、光が身に飛び込んできた。目が慣れてくると、少し向こうに神社の鳥居が見えた。たぶん、里彩が言っていた神社なんだろう。

「そうだ!電話しなきゃ」

里彩に電話しようと、携帯を出す。里彩はすぐに電話にでた。

「もしもし、ついたよ。今、神社の裏手にいる」

「うん、わかった。じゃあ、そこから動かないで」

「わかった。じゃあね」

電話を切って、あとは里彩たちを待つだけだ。

少し、神社の中へ進むと、左手に何か立っていた。

「あれ?何だろう」

それは、祠があった。周りをしめ縄で巻かれていて、何かをしまっているみたいだ。とりあえず、元の場所に戻ろう。そう思って、後ろを振り返ると、何かぬるりとするものを足に感じ、そして、後ろに思いっきり倒れてしまう。

「うわ!」「バリ!!」

自分の声と一緒にかなり嫌な音がした。

後ろを振り返ると、祠が真ん中から何かに押しつぶされたような状態で壊れていた。


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