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入院二日目 手術当日


 夜中々寝付けず、暑くて寝て起きての繰り返し。

 下剤を飲んでるので何度もトイレに走り、一番の問題は頭痛。

 雨だったから気圧の関係で頭痛が治まらず、結局そんなに眠れることなく朝を迎えた。


 病院内は二十二時消灯の六時起床で看護師さんが病室を回ってくる。

 起床後、朝食は手術前なので絶食。

 顔を洗ったり歯磨きしたりして過ごしていた。

 看護師さんが私のところに七時頃来て、手術の準備を開始。

 二錠の吐き気止めの薬飲んで、着圧ソックスを履き、今度はかん腸。

 地味に辛い。

 ベッドに座って我慢してると、看護師さんが「トイレに籠もってもいいよ」と言ってくれたので、点滴引き連れてトイレに籠る。

 言われた三分を我慢し、全部出きったか分からないけど、便意は落ち着いたのでベッドに戻り、次は手術着にお着替え。

 ここまで大体四十分程だったかな。

 

 看護師さんに「手術室まで歩く? それとも車椅子で行く?」ってきかれたけど、いや、めっちゃ元気やし「歩いていきます!」って、元気やのに車椅子はちょっとね。

 「また時間になったら呼びにくるわ」って言い残し看護師さん去っていったけど、それからの時間はとても早かった。

 十時すぎくらいかな、看護師さん来て「そろそろ行こうか!」って、本当に急なお誘いで慌てて準備。

 髪の毛覆うキャップ被せられるんだけど、私の髪の長さと毛量で悪戦苦闘。


 

「これ、どうやったら全部はいるんかな」

「毛量多いから難しいですよね」


 

 とか軽口言いながら頑張って入れきって、さぁ出発!

 点滴引き連れて行くのがちょっと面倒だったけどね。

 先ずは病室に来れない母が待つパントリーへ。

 手術待ちのご家族の方が何組かいらっしゃって、その中に母の姿も。


 病室の金庫の鍵を渡して「今から行ってくるわー」ってかるーく挨拶。

 母も「頑張っておいでー」ってこっちも軽い。

 深刻になるよりこっちのがいいのよ、きっと。

 そして手術室前に繋がるエレベーターに乗りいざ手術室のある階へ。

 初めての場所に普段入る事の縁のない手術室というのもあり、此処までくると手術の怖さとかはなく、わくわくと好奇心が勝り手術室へ向かった。

 その場所に着き中へ入ると、入口付近に手術が終わったであろう患者さんがベッドに寝ていて、私は横に避けて場所を譲り、付き添いの看護師さんから私を手術室の看護師さんへバトンタッチ。

 そこで履いてきた靴から手術室内のスリッパへ履き替え、手術着が大きいから開けるのが心配でストール纏っていったんだけど、それは私が行う手術室の室内まで「まだ着てていいよ」と軽く言ってくれたので受付で、名前の確認と腕に着けているリストバンドをピッとして私がどんな手術を受けるかの確認をした後奥の手術室へと案内される。

 いくつもの手術室があり、こんなふうになってるんだなぁと見学しながら奥の手術室に行けば、既に待機している手術室の看護師さん達が出迎えてくれて、人の幅くらいしかない手術台を見て更にびっくり。


 

「よろしくお願いします」



 人見知りな私だけれど、これから私の手術に携わってくれる看護師さん達に挨拶をする。

 


「頑張ろうね」

「じゃあここに寝てくださいね」



 そう優しく言われたのでストールを預けてその細身のベッドに寝ると、上から見えないように布と言っていいのか覆いかぶされていると私が来た方から入院前に手術の説明をしてくれた婦人科の吉川科長と麻酔科の先生が入ってきたので、こちらにもご挨拶。

 


「おでこの傷広がってない?」

「二日前にまたヘアアイロンでおでこ焼きました」



 麻酔科の先生は覚えていたようで突っ込まれてしまった。

 そうして「またやったん!?」って笑われてしまった。

 私もまさか入院前にまたやるとは思ってなかったけど。


 

「昨日はよく寝れた?」

「天気のせいで頭がずっと痛くて殆ど寝れませんでした」

「そういう人いてるわな。けど今からたっぷり寝れるから」


 

 そんな雑談を交えつつ「枕高いなぁ、頭ちょっと頭上げて」って言われたので頭上げると少し低い枕に変更しいい感じの高さになり、そんなことしてる間にも手術着の上外されて、パジャマのズボンやインナーを脱がされ、私は脱がしやすいようにお尻を上げると「そのままで大丈夫よ」と布の下は何も着ていない状態になり、それからはあっという間で、口に酸素マスクをぽんっと乗せられた。

 私はその感触とその行為に何故か笑いが込み上げてきたけれど、そんな私を他所に「一度大きく深呼吸して」と言われたので深呼吸を何度かした。



「今から腕のところから麻酔入れて行くからよ。ちょっと痛いで。先ずは◯◯◯入れて⋯⋯」


 

 麻酔の量かな? 数字まで覚えてないけど、麻酔が入ってくるとほんとに痛くて冷たくて、思わず体がビクッとし目をギュッと瞑る。

 すぐに慣れて少し目を開けると執刀医である主治医の東先生が、いらっしゃって「頑張ろうな」と一言声を聞き私は「よろしくお願いします」とほぼ意識を失いつつ言ったのを最後にぷつんと意識が途絶えた⋯⋯





 

 

「手術終わりましたよ」



 その声が鮮明に聞こえたと同時にいろんな所から声が掛けられ雑音という音が言葉ではなく本当にざわざわと入ってくる。

 そんな中、ちゃんと声が聞こえたのは東医師の力強い声だった。

 私の肩をぎゅっとつかむ感触がある。



「子宮温存し予定通り腹腔鏡下で輸血なしで終わりました」



 そのような事を言ってたと思うのだけど、まだ意識はぼやぁっとしていて、けど私その声に「ありがとうございます」と弱々しく答えたのを覚えている。

 医師に声が届いたからわからないけれどね。

 私の中ではちゃんと答えたつもり。

 その後は、意識があるのかないのか分からない状態で、だた自分でも何故こんなに震えているのか分からない位にガタガタとほんとに音がなっているようなほどの震えに襲われているのは感じていた。


 

「凄い寒そうやなぁ」


 

 そう看護師さん達の声がはっきりと聞こえたが、今どこにいてどういう状態なのか周囲の状況が分からないけれど、自分がこんなにガタガタとしているのは認識出来ていて、本当に自分でも大丈夫なのか? って言うくらい震えているが別に寒いといった感じはない。

 後から調べたらそれは体温調節が出来ない為震えて温度をあげようとするシバリングと言うものらしい。

 そして次にはっきりと周囲の声が聞こえてきたのは病室に戻ってからだった。


 

「お部屋に帰ってきましたよ」

「お母さん呼んできて」



 そんな声が聞こえてはいるが周囲を認識することはできず、ただただ術後のしんどさに息をしているだけだった。

 それから母が来たのか、私に声をかけてくる。



「お疲れ様、よく頑張ったね。予定時間よりも一時間長く掛かったからお父さん心配してメール来てたよ」



 この言葉に私はただ頷くだけで声を出すことも出来ず、母も私がこんな状態だしコロナ禍と言うこともあり、長居せず最後に「鍵引き出しに入れとくからね。元気になったらこの本でも読んで」と言われた、私はただただ頷くだけだった。


 その時私が横を向いたのか、目を開けたのか、母が本を上から見せたのか定かではないけれど、猫の本だというのだけ記憶に残っていた。

 ほんと不思議。


 母が帰った後は本当に長い時間を過ごした。

 手術が終わったのが何時なのかも分からず、酸素マスクをつけた状態で一時間おきなのか血圧と体温を測られ、尿道カテーテルが入っているのでおしっこの確認がされる。

 左で血圧を測ってくれるんだけど、動かされると激痛で、腕が固まってしまってるじゃないかと思うぐらい痛くてそれが苦痛だった。

 そして何より一番しんどかったのは暑さ。

 暑くて暑くて何度も、看護師さんに「暑い」って譫言のように話していたのは覚えている。

 ガタガタと震えていたので、布団の他にも電気毛布掛けてくれてたみたいだけど、電気毛布を切ってもらい、布団もどけて電気毛布だけにしてもらってようやく少しマシになり、次に気になったのはフットポンプ。

 肺塞栓予防の弾性ストッキングを履いてる上にITCっていう足をマッサージされているんだけど、それがもう熱くて辛くてそれに輪をかけてお腹周りと背中がダルくて痛くて、とにかく全身がその部位によって違う意味で辛くて痛くてしんどくて⋯⋯

 お口はからっから、頭は枕がないのでそれも輪をかけてしんどかった。

 右腕は点滴が入っているので難なく動かせるけど、何もない左腕と胴体は痛くてだるい、下半身は兎に角暑くてだるくて煩わしい。

 よく辛抱したよ、私。

 だけど流石に痛みが辛くてそう言うと「医師あんまり鎮痛剤使いたがらへんのよね」って言い、それでも聞きに行ってくれたのか鎮痛剤(座薬)を入れてくれることに。



「頑張って横向ける?」

 


 そう言われたので私は左手で左側の柵を持ち頑張って行ける範囲で横を向くけど入れにくかったのか応援を呼んだようで、もう一人の方が私をぐっと横向ける。

 その行為が痛すぎて思わず「痛い!」と叫んでしまった。

 それが声に出てたのかは私は分からなかったけれど、取り敢えず鎮痛剤が入ったので暫らくの我慢かな。

 こうして寝ているだけだったとはいえ手術が終わり長い長い夜を耐えながら朝を待った。


 酸素マスクが取れてからは喉に詰まった痰との戦いもあり、看護師さんに「痰吸引出来るからしんどかったら言ってね」って言われたから、次来たときに言おうとしても声が出なさすぎて私の声が届かずに、ひたすら我慢だった。

 時間も自分の状態も分からずに耐えるのって中々しんどいね。

 途中酸素マスクを少し開けて普通の空気を吸ったりしてひたすら時間がすぎるのを待った。

 寝ることも出来ず、うつらうつらとするだけの時間。

 私にはとてつもなく長い時間に感じられた。 

 

ご覧頂きありがとうございます。


今回の話は手術のお話。

私にとっては手術前の怖さとかはなくて、只々術後のしんどさが一番辛かったです。

麻酔が効くまでは数えてはないけれど、二十秒足らずで意識を失くしたと思います。

思ったよりも意識あるなぁと冷静に思っていました。


皆は寝てる間に終わってるよ!って言ってたけれど、寝るのとは全く意味合いが違います。

麻酔が入ってる間は仮死状態という言葉がしっくり来るのかな。

意識は勿論無いし、覚えてることもないし、麻酔が効いてからは気管挿管されるので、自発的な呼吸も出来ないから麻酔が効くと意識が落ち、麻酔から覚めると意識が戻るので、とても不思議な体験でした。

ちなみに、前日に言われてた麻酔から覚めた後の手を動かして、というやり取りは全く覚えてません(笑)

けど、クリアしたから病室に戻れたはずなので、無意識下に行っていたのかもしれません。


今更ながらに、お名前は全て本名ではありません^^;

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