表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

転生聖女

「アルメリア……。そうだ。お前の名前はアルメリアだ」


 暗闇の中で声がした。

 歓喜にあふれる声だ。おっさんらしき声と若い女性が喜んで何かを祝福していた。誰かの為に喜んで泣いているようだ。

 誰の為に?

 それに、俺の体がゆりかごのように揺れている。なぜ。


 ぼやっとする視界の中、俺はまた眠りについた。体が勝手に睡眠を欲しがったからだ。

 ――時が経ち、俺はまた目覚めた。


 気づくと立てるようになっていた。……まて、なんだこの低い視線は。まるで子供じゃないか。


「おぉ、アルメリア! ようやく立てるようになったか」

(え……)


 おっさんが俺を抱き上げた。

 な、なんだこの人……気色悪い!

 驚きの中、若い女性が現れた。

 まさか、この二人は夫婦なのか。

 女性の方は凄く美人で若いけど、犯罪じゃないだろうか。てか、変わった服を着ているな。まるで中世ヨーロッパみたいな。建物の中も実にそれっぽい。


 俺はいったいどうして、こんな場所に。それに俺は……あ。


 ちょうど鏡があった。

 そこには幼女の姿が……って、アレが俺!? あんな銀髪で可愛くて、緑の瞳でパッチリしていて……女の子ぉ!? 嘘でしょ……信じられねえ。


「母さん、アルメリアは将来有望かもしれんぞ」

「ええ、お父さん。アルメリアはきっと立派な女の子になることでしょう」


 なんか期待されちゃってるし……。けど、俺は男であり、つい最近までサラリーマンしていたんだぞ。それがなぜ、こんな幼女になってしまったんだ。誰の陰謀だ? それとも神の悪戯とでもいうのか?


 いや、これは二度目のチャンスだ。


 誰がくれた新しい人生なんだ。きっとそうに違いない。


 しかも可愛い女の子。……ああ、そうだ。俺は生まれ変わったら女の子になりたい願望があった。それがこんな形で叶うなんて。


 だから、これからはこのアルメリアとして俺は生きる。楽しい人生にしてみせるさ!



 ……それから十数年後。



 俺は十六歳の誕生日を目前にしていた。

 ここまで紆余曲折あったような、なかったような。いや、あんまりなかったな。女とは、異世界でもイージーなものだった。

 男が勝手に寄ってきて、いろいろ貢いでくれたから不便はなかった。


 そんな俺は両親のススメもあって、教会へ通っていた。


 ゼフィランサス教会は、帝国の中心に置かれている最大にして最高の権威を持つ教会だ。百年に一度しか現れないという『聖女』を熱心に育成しているようで、俺もなる為に日々努力をしていた。


 教会へ向かうと、いつものように貴族のプロテアが挨拶をしてきた。


「アルメリア様、ご機嫌麗しゅうございます。今日もお美しい」

「だからって抱きついてくるな、プロテア!」

「相変わらず乱暴な言葉をお使いなさる。もう少しお淑やかになるべきですよ」

「お前みたいなヤツが付き纏ってくるから、俺はこんな狂暴になっちまったんだよ」


 そう、俺は口調を変えなかった。

 父親には何度も注意されたが、やがて向こうが折れた。一人称も“俺”のままだ。この方が楽だし、変な男も寄り付かないからだ。

 それに元々俺は男だからな。隠す必要なんてないし、堂々としていればいい。どうせ、俺は可愛いからな!(自画自賛)


「神々しいシスター見習いなのにもったいないです。ですが、そんな君も良い!!」


 そう言って、プロテアは抱きついてきた――ので、俺はブン殴った。


「気安く触れるな気色悪い」

「――ぐほッ。そんな君も好きだ……」


 地面に倒れるプロテア。

 毎日毎日、鬱陶しいったらありゃしない。告白も百五十回は超えただろうか。いい加減にうんざりしているが、このゼフィランサス教会を支援しているとか何とか。だから無碍に出来ないんだよなー。


 そんなことを考えながらも、俺は教会内へ。


 祭壇には、先生であり、帝国一番の“ビショップ”とも謳われているクフェア様がいた。俺を待ち構えていたようで、こちらに歩み寄ってきた。



「待っていたよ、アルメリア。さっそくだが、話がある」

「お、おう。なんだよ、改まって」


 先生は、神聖な教会の中にも関わらず長いパイプタバコを取り出し、火をつけて咥えた。聖職者にあるまじき行為なのだが……いいのだろうか。もしかしたら、この世界では問題なのかもしれないが。


「お前、聖女にならないか?」

「はい!?」


 突然そんなことを言われ、俺は動揺した。

 先生は今なんと言った?


『お前、聖女にならないか?』


 マジかよ!

 そんな簡単になれるものなのかよ。確かに、俺が目指している最終地点でもあった。聖女になれれば、この堅苦しい教会と、先生からのパワハラにも似た訓練から解放されるのだから……!


「驚いただろう。だが、アルメリア……お前にはその資格があるのだ」

「俺に資格?」

「素行は悪いが、お前は長い銀髪の髪、宝石のように美しいエメラルドグリーンの瞳、それに無駄のないボディを持ち合わせている」


「それだけ?」


「あと魔力だ。お前は気づいておらんだろうが、聖女としての魔力が覚醒しているのだ。アルメリア、これから自動配信をし、魔物を成敗して稼ぐのだ」


 そういえば、この教会は世界のあちらこちらで跋扈(ばっこ)する魔物を倒すために存在するらしい。特に聖女にはその使命が一生与えられるという。それが聖女としての務めなのだとか。


「って、自動配信?」

「なんだ、知らんのか。この世には冒険者のライブ配信を楽しむ者達がいるのだよ。無論、中にはファンがついて多額の日銭を稼ぐ者もいる」


「な、なんだそりゃ!?」

「そこでだ。アルメリア、お前は聖女になり、自動配信をしてみんか?」


 な、な、なんだそれ~~~!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ