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白の章 第二話 の十四

誰かの呟きがポツリと落ちる。


「・・・・ブルマジョ」


そこには、武者に囚われているブルマにマント姿の桃瀬香里と瓜二つのものが顕在していた。


白夜は得意げに胸を張りちっちっちと指を振る。

「侮るなかれ!カノジョの馬力は百万倍。武道の達人。音速の瞬発力。モチロン、魔法も使えますぅ!」

では、魔法披露っ!という言葉にブルマジョ桃瀬は持っていた星ステッキをクルクルと回しだす。

途端に、コスチュームからリボンがシュルシュルと飛び出し彼女の体を包む。一瞬、繭のようになって解けた時には、ブルマから戦闘コスチュームのスクール水着に変身していた。


「うお~っ!これぞホンモノのブルマジョだ!」

野太い声援絶好調。


ちなみに本家本元のブルマジョの魔法もあくまで自分のコスチュームを代える時のみに使用され、戦闘には使用されない。


「さあっ!手加減ご無用っ!ガツッといっちゃってぇ桃瀬、・・・じゃなかった戦士ブルマジョ!」

伝書鳩でも投げ放つように白夜はせいっとブルマジョを放った。

声帯までは持ち得ないのか、ブルマジョは「はあい」と、口パクで応えて、勢いよく飛び立った。


が、着地と同時に石像のように動きを止めた。


「ちなみにな。持ち手の思考を読み取るヤツなので、放れると何も聞かんぞ。」

「それ先に言って。」

はああ・・・と、深い溜息を吐きながら白夜はブルマジョの手を取った。

途端、ブルマジョは再び勢いよく動き出した。


「ぅわおっ!」


振り放されそうになって思わずしがみ付くと運がいいのか悪いのか背中に飛び乗ることになった。


「わ、わ、わ、ちょっ、待っ・・・!」


そんな泣き言切捨てヨっ☆ と、ばかりにブルマジョは、慌てふためく落ち武者をおんぶしたまま敵に突進する。

初期設定どおりの俊足。

瞬く間に双頭の武者に肉薄し、高らかにジャンプ―――――


ドシャッ!


鉄兜と水晶を蹴り上げる鈍い音が二つ。

百万馬力の健脚が双頭を一気に吹っ飛ばす。


「のええええ―――っ!」


大声援の中、ブルマジョは着地と共に身を翻し、背後に迫っていた武者の巨躯に全体重を掛けたクロスアッパーを炸裂させる。


ドオオオオオオオオオン


大地を揺るがせ、後ろへ吹っ飛んだ武者の頭部が、兇刃ともいえる手刀によってポロリと捥げる。


「や、待っ、落ちるぅ~っ」


ブルマジョは悲鳴を上げる白夜を背負いなおし、されど勢いを落とさぬまま三人目の敵へ。

体当たりを食らわしてひっくり返ったところに上から飛び乗り首を太腿で挟む。


うらやましいッ!


白夜を含め周囲の(特に男性)ギャラリーが胸の内で声高らかに叫んだ本音は、捩じ切られて大地を転がった頭によってすぐさま雨散霧消した。


桃瀬ホンモノに兇刃を突きつけていた武者が、味方の劣勢に業を煮やしたようにユラリと動いた。


茜沢が駆け出す。

「あ、何処行くねん!」

双頭の一つを落とした武者と対峙していた天使が慌てて叫ぶ。

武者の目的はあくまで白夜のようで、向かってくる茜沢には目もくれず、二人は擦れ違った。


その頃、落ち武者をおんぶしたブルマジョも音速といわれる足で武者に切迫していた。

ブン―――

風を切って振り下ろされた刀をブルマジョは横に躱す。

「ヒィッ!」

遠心力で残された白夜の鼻先を紙一重で尖塔がすり抜ける。


ふわっ・・・・・と、無重力を感じた次の瞬間、


「ぎぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


凄まじい突き上げに、白夜は打ち上げ花火よろしく空へ舞った。

ブルマジョの頭突きを顎に食らった侍の頭部も一緒に大空へ舞う。


同刻―――

「せいやっ!」

裂帛の一太刀と共に髑髏が二つ跳ね飛んだ。

一つは天使が相手をしていた巨体の双頭の残りで、もう一人は桃瀬を捕らえていた侍のものを茜沢が。


侍を討ち取った勇敢な少女の頭から着地と同時に帽子が落ちる。


「あーっ!グラビアアイドルの茜沢マミリンッ!」


誰かの絶叫にギャラリーが色めき立つ。


「すげー!可愛いだけじゃなくて格好イイぞ~っ」

「マミリン、握手して~」


それまで存在感もなく脇で傍観を決め込んでいた秘密結社の魔術師集団がここぞとばかりに現れ出でて、茜沢に詰め寄るギャラリー達を制する。


「・・・・ステキ。」


茜沢が侍の首を討ち取る直前で覚醒した桃瀬は、その勇姿に薄っすらと目元を染めて、恋する乙女みたいに呟いた。


「ぅぅ・・・俺の活躍は?」


白夜は、誰に顧みられることなく、大地にへしゃげたまま暗涙する。


「お~い。いつまでもそんなところで暢気に寝とらんと、オマエさんもハヨ髑髏回収手伝ってな。」


駄目だしのように天使にせっつかれ、何もかにも諦めた白夜は、痛む体に鞭打って髑髏回収に精を出した。


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