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サハの王国  作者: 富幸
3/5

滅びの里

 僕の家族が、このダボダの街に来て僕は、散歩の途中で見つけた家の近くに在る博物館に入って見た。

 そこには、日本の学校で習った中東の古代文明の遺産が多数展示されていて本の中でしか見た事のない本物が展示されていた。

 チコの家の羊皮紙を解読した僕は、次の日博物館に足を向けた。

 その博物館の展示品の一つに写真屋の主人から教えられた羊皮紙がガラスケースに展示されていたからだ。

 その古代の羊皮紙は、数十枚にも渡って展示されていて僕は、チコの家の羊皮紙とは、少し違う文字にとまどったが博物館のガラスケースの前で僕は、ポケットの宝玉を握り締めながら羊皮紙を見つめると羊皮紙に古代文字で記された文字を少し読む事が出来た。

 その羊皮紙には、二つの王国に関する興亡の歴史が記載されていてそれは、次の通りであった。


 サハとセトの王国

 古代、サハ砂漠の中心にゼンダと言う神が宿ると言う大きな岩山がありその岩山を境に東西の山裾からは、水が滾々と尽きる事無く湧き出ており緑滴る豊穣な土地が広がって居た

 サハの王国は、岩山の西側に在り東側には、セトと言う王国が有った。

 二つの王国は、水源を同じくしている為にいざこざが絶えなかったが双方共ゼンダ神の住む岩山を越えてまで兵を進める事は、しなかったのである。

 しかしサハの国王ジャバは、覇権を争い近隣の諸国に兵を進め、これを制定支配した。

 サハの王国の国力は、増大し国王ジャバは、国が強大に成るに連れ、ますますセトの国が欲しくなったが神官オロに反対され思いとどまって居たが、いつの世も権力者には、おもねき、へつらう者が後を絶たない。

 この時サハ国王の側にイスムと言う側近がいて、そのイスムが国王に、そっーと囁いた

「ジャバ様、今やサハの国は、世界の中心でありジャバ様は、神にも等しい力をお持ちです。たかが神官一人の戯言なぞ耳に止める迄も有りません。ジャバ様の発せられる言葉は、神の命令とすべきです。もし、これに反する者は、罪人として取り除く事です」

 と側近のイスムに唆された国王ジャバは、セトの国に派兵を命じた。

 当然この派兵に反対した神官オロは、国王ジャバに

「ジャバ様、セトに派兵を命じられましたが、それはゼンダ神様の意志に反します。サハの国とセトの国は、一つの神、一つの水源を分け合う、いわば兄弟なのです。片方が滅亡すれば、もう一方も滅亡します。これがゼンダ様の定めです。派兵だけは、お止め下さい」

「えぇい、うるさい。派兵は、世が決めた事だ。お前ごとき神官が口を出す事では、ない」

「いいえ、私には、ゼンダ様の意志を伝える役目が有ります。このまま派兵を進めれば、必ず神罰が下りますぞ」

「えぇい、まだ言うか、衛士この者を捕らえ戦勝祈念の火炙りにしてしまえ」

 神官オロは、捕らえられその身を王宮前の広場で兵士や大衆の目前で火炙りの刑に処せられた。

 サハの軍勢は、セトに向かって進軍を開始したのである。

 サハ軍は、三日三晩で岩山を越えるとセトの国に攻め込んだのである。

 不意打ちを食らったセト軍は、なすすべもなくバラバラになって落ちて行った。

 王宮に居たセトの国王一族や神官・巫女も難を逃れて裏山の神殿に逃げ込んだが、そこにもサハ軍は攻め入り、そこで大虐殺が始まった。

 神殿内の一番奥に在る聖なるオシスの泉は、大きな洞窟となっており国王や神官達は、そこに逃げ込もうとしたがサハ軍に捕えられ泉の前で殺害された。

 聖なるオシスの泉は、国王の一族や神官・巫女達の血で染まり深紅の泉に変わってしまった。

 戦に勝ったサハ軍は、略奪を始めたが王宮内の宝物庫には、思った程の宝は、無かった。

「司令官、どの倉庫にも財宝は、有りません」

「そんな事は無いはずだ。セトの国は、裕福な国だと評判だったぞ。お前達捜し様が足らんのじゃー無いか」

「いえ、どの倉庫も食料品ばかりで財宝は、僅かで全部集めても木箱一杯分も有りません」

「可笑しいなぁー王宮に財宝を置いて居ないとすると神殿かな、よし神殿を捜して見ろ」

 しかし神殿に財宝を入れる様な建物は、無かった。兵士達が神殿を捜している時、一人の兵士が喉の渇きを覚え神殿の一番奥に在る泉で水を飲もうとして泉を覗き込むと泉の底にキラキラと光る物が見えた。

 不思議に思った兵士は、司令官に

「司令官、神殿奥の泉の底に光る物が見えますが」

「なに、それは本当か」

 司令官を初めとして主だった隊長達が泉を覗き込むと澄みかけた泉の底に光る物が多数見える。

 司令官は、生き残りのセトの女性を連れて来て尋問をはじめた。

「女、よく聞け、俺様が言う事にきっちりと返答しろ嘘、偽りを申すと即刻その首を撥ねるぞ」

 司令官の言葉に女は、恐れ慄き、知っている事を洗いざらい喋った。

 それによるとセトの国王は、何事にもつつましく王宮も小さな作りだったが国王は、民から宝石を集め水の神オシスへの貢物として祭事の際に泉に宝石を投げ込んでいた。

 これを聞いた司令官達は、どうやって泉の底の宝石を取り出すか、手段を協議した。

 その席で一人の隊長が

「司令官殿あの神殿の泉は、高台に有ります。私が思うに兵士に泉の壁を破壊させて水を抜けば宝石が簡単に手に入ると思いますが」

 司令官は、部下の進言を受け入れ全軍に命令をだした。

 その日から神殿と泉の破壊が始まった。作業は、昼夜を問わず泉の周辺は、岩を破壊する音が鳴り響きその音は、洞窟内で共鳴振動し岩山全体が振動している様な音だった。

 作業を始めて五日目にようやく最後の岩が取り除かれると同時に泉の水が濁流となって下流に流れ出る。

 それと共に泉の底から宝石の山が顔を出すと兵士達は、我先にその山に群がった。司令官を先頭に洞窟の奥まで宝石を集めていた。

 その時である突然地響きや轟音と共に洞窟もろとも岩山が崩壊したのである。

 サハ軍の大半が宝石と共に崩れた岩山に呑み込まれてしまったのである。

 僅かばかり残ったサハ軍の生き残りは、神の怒りを恐れサハに逃げ帰ったのであるが、そこでも神の怒りを見る事に成る。

 その日より三日前サハの国で大きな地揺れの後岩山が二つに割れ、それと共に潤沢に湧き出ていた水が枯れて仕舞ったのだ。

 サハの民は、国王ジャバがゼンダ神の意に反しセトの国に兵を進めた事が神の怒りをかった。

 と恐れ、その責任が国王ジャバに有ると考えたサハの民は、王宮を取り囲み国王ジャバにゼンダ神への謝罪と怒りを鎮める様に要求した。

 さしもの傲慢な国王ジャバも目の前に天変地異と怒りを顕わにし王宮を取り囲んだ群衆を見ると恐れ戦き、国王ジャバは、神殿で祭事を行う事にした。

 次の日の朝、神殿に国王ジャバを初めとして王族や高官が立ち並ぶ中、国王ジャバは、巫女を通じて許しを乞うたのであるが、巫女による祭事が始まると、まなしに雷鳴と共に神殿の屋根に大穴が開き同時に真っ赤な火柱が立った。

 神殿内に居た人々は、雷に打たれ死んでしまったが祭壇に居た巫女だけが無事であった。

 これは、人間の身勝手な要望に対しゼンダ神が下した裁断で有った。

 巫女は、ゼンダ神の宣託が降りると神殿の外に出て群衆に向かい大声で

「サハの民は、神から恵み与えられた水や土地を自らその血で穢し強欲の為にその環境を破壊する事は、人一代で許される罪では、すまない。子々孫々末代迄使用すべき道具を破壊し許しを請うても許されるものでは、ない。サハの民に国は、与えない。砂の海に沈める事とする。サハの民は、流浪の民となって彷徨うがよい」

 巫女は、其処まで述べるとその場に倒れ込んだ。

 神殿の前に集まって居た群衆は、余りにも過酷で厳しく無情なゼンダ神の宣託にサハの民は、怨嗟の声が湧きあがったが、その時セトから逃げ帰った兵士達の報告にサハの民は、仰天したのである。

 つい先程迄は、国王や王族・高官まで集まって許しを乞うて居るのに神罰を下し、その上無常な宣託が降りた事にゼンダ神の怒りが治まらなかった事を恨んでいたが、逃げ帰って来た兵士達の話を聞き、我が同胞がセトの国で行った神に対する冒瀆である。。

 オシス様の泉の破壊と貢物である宝石の強奪。つまり人が犯しては、ならない神様に供えられた貢物までも自分の物にしたいと言う強欲に神の怒りが爆発したのである。その同胞の行為を聞くとサハの民は、納得した。

 サハの人々は、周囲から押し寄せる砂と崩壊していく岩山を見ると我先に故郷を捨てて逃げ出した。

 一人の傲慢で強欲な国王が神の意に反した命令を下し兵を進めた結果、無辜の民が悠久の時の流れの中に彷徨う流浪の民となったのである。

 こうなると砂漠で一番大切な物は、水で有る。サハの民は、水の枯渇した国と崩壊していく岩山に追われたのである。

 残された王族は、強欲な国王ジャバが集めた財宝には、ゼンダ神の呪いが掛って居ると考え、サハの王宮に蓄えられた財宝を手つかずのまま地下の宝物殿に移し施錠したのである。

 そしてサハの王族は、王妃サラマを守りながら西のムスクを目指して落ちて行った。

 そして間もなくサハの王国は、砂の海に沈んでいったのである。


 僕は、博物館のガラスケースの羊皮紙の文字は、チコの家の羊皮紙とは、少し違う文字に戸惑ったが、その羊皮紙に書かれていたのは、以前ベリーさんから聞いたサハの伝説に似ていた。

 その展示されている羊皮紙の内様に興味を持った僕は、博物館に通いだした。

 その羊皮紙に記載されていた王国の興亡の歴史は、ベリーさんから聞いたサハの伝説に酷似していたが、チコの家に伝わる羊皮紙の内容は、記録紙の様に思えた。

 しかし博物館に展示されている羊皮紙は、王国の栄枯の歴史が古代文字で書き込まれていて、その内様に僕は、夢中になり博物館に通い詰めた。

 毎日博物館のガラスケースの前で熱心に覗き込む少年に博物館の学芸員のシャドは、不思議に思っていた。

 あのガラスケースに展示している羊皮紙は、博物館でも解読するのに手こずった代物で古代のサハ語で書かれた物だからだ。

 そのガラスケースの前で毎日熱心に通ってくる少年に興味を抱いたシャドは、その少年に声を掛けた。

「君は、毎日ガラスケースを熱心に見ているが、君は、中国から来たのかな、そのガラスケースの中の何を見ているのかね」

「いえ、僕は、日本から来ました。この羊皮紙に書かれている王国の歴史が余りにも面白くて、毎日帳面に書き写しています」

「君は、日本から来たのか、日本人の君に、この羊皮紙に書かれている文字が読めるのかね」

「えぇ、以前友達から見せて貰った写真に映っている文字と良く似た文字ですから、王国の歴史をこの帳面に写しています」

 と言って僕は、帳面をカバンから出しシャドに見せたが、日本語で書いた帳面を見たシャドは、日本語が判らず目を白黒させるばかりであった。

 シャドは、僕に

「君、この帳面を少しの間借りていいかい」

 と言って帳面を手にすると事務室に入って行った。

 シャドは、事務室に入ると

「おーい誰か、これが判る者がいるか」

 シャドの呼びかけに事務室の全員が

「どれ・どれ」

 と言って集まって来た。そのうち、オドと言う館員が

「これ、日本語じゃーないか、シャドさん、誰の帳面だい」

「それが最近サハの羊皮紙の展示ケース前で毎日羊皮紙を見つめる日本の少年の帳面なのだよ」

「まさか、あの羊皮紙を解読したと言うのかい。それも日本の少年が?」

「そうだ、私も不思議に思ったから少年に尋ねると、羊皮紙に記載されている王国の歴史が面白いから帳面に訳して写している。と言うんだ私達でもあの古代文字を四苦八苦して解読したのに日本の少年が訳して日本語に書き換えている。そんな事が信じられるか、だからその少年の帳面を借りて来たんだよ」

 すると先程の館員オドが

「誰か、S100の資料を持って来てくれないか」

 オドは、持って来た資料をテーブルの上に広げると帳面に書かれている内要と照合しだしたが羊皮紙の一枚目と帳面に記載されている内容に大差は無かった。オドは

「シャドさん、この少年は、凄いですね、一枚目の羊皮紙を完璧に訳しています」

「そうか、まさか日本の少年がサハの古代文字を解読するとは、思いもしなかった。そういえばあの少年は、写真に映した羊皮紙の文字に似ている。と言っていたなぁーどの様な写真だろう、聞いてみよう」

 シャドは、そう言いながら帳面を持って事務室を出て行った。シャドは、ケースを覗き込んでいる僕に

「御免・御免待たせたね、所で君は、先程この文字に良く似た文字を映した羊皮紙の写真を見た事があると言っていたけど今その写真は、如何している」

「あぁ、その写真なら家に有りますけど」

「すまないけど、その写真を見せて貰う事は、出来ないかい」

「うーん、友達に聞いてみないと」

「私は、シャドと言うんだが、急がないから、私も君の言っている写真を見て見たいのだ」

「判りました。僕は、根本一郎と言います。これから友達の所に行って聞いてみますから」

「悪いね、友達によろしく言って呉れないか」

 僕は、博物館を出て市場に足を向けた。チコは、何時もの場所で座り込んで居眠りをしていた。僕は、そぉーと近づきチコの耳元で

「わぁー」

 と大きな声を出すとチコは、吃驚した様に目を開けたが僕を見ると

「何だ、お前か、何か用か」

「うん、実は、ね、博物館のシャドと言う人が君の写真を見せて呉れないかと言うのだけど、僕は、君の了解を取りますからと言って来たのだけど、君が嫌なら断るけど、どうする」

「良いよ、見せたって」

「えっ、本当に良いの、君の先祖の財宝のありかを記した羊皮紙だよ」

「良いよ、俺、先祖の財宝と言っても見た事も無いし、こうして物売りをしていても人の世話になっていないからね」

「ふーん、欲が無いんだね、僕なら財宝は、ともかく神官の秘宝と言うのは、是非とも見て見たいなぁー」

「馬鹿言え、欲のない人間などいるものか、俺だって銭は欲しいさ、けど身に過ぎた銭は、身を滅ぼす元だ」

「何故、どうしてそう思うの」

「俺の親父が死んだ時に、爺様が、こんな事になるのなら、わしがあの羊皮紙を処分しておけばよかった。あの様な物を残して置いた為に大事な息子を死なせてしまった。と嘆いて居たのさ、その時は、俺も小さかったから爺様の嘆きがよく判らなかったけど今なら判る気がするのさ、あの羊皮紙は、俺の家の厄病神かもしれないから」

「でも君の家に代々伝わる物だろう、それがいらないなんてもったいないよ」

「何言ってんだよ、お前が欲張りなんだよ、あれは、家族に不幸を招くものだぞ、だから今迄家宝として絶対外に出しては、いけないものを親父が、出したからだ。お前も気をつけろよ、欲望に絡まられた人間は、恐ろしいぞぉー」

「それじゃー、本当にシャドさんに見せても良いんだね」

「良いよ、但しお前に忠告してやるが、あの羊皮紙には、ゼンダ様の呪いが掛っていて、あれは、強欲な人間を引き寄せるものだからなぁ」

「有難う、心配してくれて、でも、どうしてその大切な羊皮紙を外にだしたの」

「俺の親父は、会社を経営していて、俺が小さい頃は、良い生活をしていたのさ、しかし家の秘宝であり他人に見せては、いけない羊皮紙を持ち出し他人に見せびらかした為に騙され殺された。俺は、二度とあの様な目に会いたくないだけさ」

「御免、悪い事を聞いてしまったね」

「良いよ、お前は、変わった奴だけど悪い奴でないから」

「じゃー明日博物館に写真を持って行くよ」

 と言って僕は、チコと別れた。次の日僕は、写真だけ持ち、訳した便箋は、机の引き出しにしまい込んだ。

 博物館に行き窓口で

「あのー僕、シャドさんに会いに来たのですが」

 と言うと事務員さんが後ろを向き

「おーい、シャドさん、お客様だよ」

 と大きな声で呼ぶと、事務室のドアが開き

「おぉ、根本君か、待って居たんだよ、まぁーこちらへ」

 と言って事務室の隣に在る応接室に案内してくれた。

 僕とシャドさんが部屋に入るとその後から別の二人が入って来て

「私は、この博物館の館長をしているヤァングと言う者だ。此方は館員のオドと言う者だ。私達二人も君が持っている。写真に興味があってね、同席させて貰っても良いかい」

「僕は、構いませんけど」

 僕は、ソファに座ると紙袋から五枚の写真を取り出すとテーブルに広げた。三人は、写真を食い入るように見つめていたがシャドが

「うーん、これは、サハの古代文字と少し違うね。根本君、この写真を持っていた友達は、どこの誰か教えてくれないか」

「はい、持ち主は、チコ、アブドバサハと言います」

 すると館長のヤァングが

「なに、これがアブドバ家の羊皮紙だと」

「館長は、この写真の羊皮紙を御存知ですか」

「あぁ、もう十年程前にアブドバ家に関るサギ事件があってね、その時この羊皮紙が事件の発端になり当主のチタが事故死して結局事件は、うやむやになってしまったが、当時博物館に羊皮紙の解明の要請が有ったが博物館では、解明できなかった。と前任の館長から聞いた事がある」

「へーえ、そんな事があったのですか」

「そうだよ、もしこれがアブドバ家の羊皮紙の写真ならオド君これは、アブドバ家と言うかサハ王国の財宝の在処を記したものだぞ」

「本当ですか、信じがたいですけどね、根本君は、この写真を解明したのかなぁー」

「えぇ、館長の言われるとおりです」

「えっ、本当に財宝の在処を記した羊皮紙なのかい。君は、この羊皮紙の文字を解明したのか」

「はい、最初に取り組んだ文字ですが、チコ君が言うのには、この羊皮紙に記されている文字は、古代神官文字だそうです」

 するとシャドが

「古代神官文字だって、これはサハの古代文字とは少し違うが、何故違う文字で書いたのだろう」

「僕が思いますのにこの写真の羊皮紙は、アブドバ家の先祖が財宝の在処を子孫に残す為に作成したものではないかと、それと比較して博物館の羊皮紙は、サハ王国の興亡を記したもので財宝の事についても詳しい記載がありません」

「君は、羊皮紙の文字を解明したと言っていたが、この文字を訳したものを持っているのかい」

「えぇ、家に置いて在りますけど」

「すまないけど、それを私達に見せて貰えないだろうか」

 そうシャドに言われて僕は、一瞬どうするか、と考えたがチコの了解も取って居るし写真を見せた時点でこうなるだろうと予測出来たので

「判りました。これから家に取りに帰ります」

 と言って僕は、応接室を出た。残った三人は、写真を覗き込みながら

「館長、本当にこの羊皮紙が宝の在処を記したものですか」

「少なくともアブドバ家では、そう思っていた。事件当時は、誰も解明出来なかった代物だ」

「でも、あの少年は、この文字を解読したと言っていますが」

「まあ、シャド君もオド君もそれに私だってこの羊皮紙に記された文字は、解読出来ない。待ってみようでは、ないかあの少年を」

「でも、館長これが財宝の在処を記したもので、うちの博物館で発見出来れば大変な名誉と栄光を手に入れる事が出来ますよ」

「そうだよ、オド君、私も先程から考えていたのだけど本当にこれが宝の地図なら学術調査隊を計画しても良い事案だと思っている」

「館長、本当ですか、その際には、このシャドも是非一員にお加え下さい」

「館長、私もお忘れなく」

「両名共、判っているよ、私が隊長だから」

「えっ、館長みずから行かれるので」

「当たり前だ、こんなチャンスなど二度と来るものか、もし発見出来れば名誉と栄光は、無論の事歴史にも名が残る事になるのだぞ」

「私は、財宝の方が魅力ですね」

「オド君は、若いね、名誉より財宝か、俺は、両方欲しい」

「シャド君が一番欲張りだね」

 三人は、顔を見合せ大笑いしながら、妄想と欲望の世界にはまりこんで行った。

 僕は、家に帰る道中、ふとチコが言った

「あの羊皮紙は、強欲な人間を引き寄せる」

 と言う言葉を思い出していた。

 あの三人も、僕がアブドバ家の羊皮紙だ。と言った途端に目の色が変わった様に思えた。

 僕があの三人のパンドラの箱を開けたのかも知れないとも思った。

 僕は、家に帰ると机の引き出しから便箋を取り出すと封筒に入れ博物館に取って返した。

 博物館の応接室に入ると館長が

「すまんね、その封筒に訳したものが入っているのかい」

「えぇ、チコ君に説明出来る様にしましたから、ただし意味不明の一枚がありますが、この一枚だけは、チコ君にも判りませんでした。僕が思うにこの一枚は、アブドバ家の先祖が子孫だけに判るように暗号化したものと思いチコ君にも、その点を尋ねましたが判明しません。後の羊皮紙は、財宝の数量や場所を示したものでした」

 三人は、便箋を開くと貪る様に読みだし、読み終わると館長が

「うーん、これは、凄い。この羊皮紙に記載されている事が事実なら王宮の宝物殿には、五箱の財宝が眠っている事になる」

「館長、これだけで調査隊を結成する理由になりますね」

「オド君、我々が出す調査隊は、あくまで崇高な学術上の真実を追求するもので、宝探しが目的では、無い。其処の所を、はきちがえのない様にね」

「はいはい、館長、趣旨は、よぉーく、判りました。所で根本君、君は、学校に行って居るのかな」

「いえ、僕は、まだこのダボダ市に来て間が無いものですから学校には、行って居ません。いま首都の日本人学校に編入手続きをしている所です」

「すると君は、首都の日本人学校に行く事になるのかね」

「いえ、日本人学校には、行きません。首都だと遠いいので通信教育の様にレポートで勉強する事に成ると思います」

「だったら君も調査隊に参加してくれないか、両親には、館長の方から要請をしてもらうから、ねっシャドさん良いでしょ」

「うん、私もそう思っていた。根本君に参加して頂ければ心強いよ」

「うーん、今ここで返事は、出来ませんし両親に聞いてみないと、それに僕よりアブドバ家のチコ君の方が適任と思いますが」

「それは、勿論彼にも館長から要請して貰うから」

「僕は、チコ君が行くのなら考えてみます」

「本当かい。調査隊が決行する事に成った時は、お願いするからね」

 僕は、三人に写真と便箋を、あづけて博物館を出て家に帰りママに

「ママ、僕が一カ月程留守にしてもいい」

「どうしたの、いっちゃん、何かあるの」

「うん、博物館の館長に発掘調査に参加してくれないかと言われたんだ」

「まぁー、それ一カ月も掛るの」

「うん、その位は、掛ると思うんだ」

「いっちゃんは、行きたくて、うずうずしているんでしょ、それにこの様な事は、二度とないわ、行ってらっしゃい。良い経験になるわよ」

「パパは、何というかなぁー」

「パパなら大丈夫よ、金を払っても参加しろって言うわよ」

「そうかなぁー」

「そうよ、パパは、貴方の年には、両親に捨てられた。と思っていたからよ」

 僕は、ママの言葉に何も言えずに部屋に戻った。夕方になってパパが帰って来て

「いっちゃん、ママから聞いたけど、博物館の発掘調査にに参加するんだって」

「うん、館長から参加してくれないか、と言われているんだ」

「羨ましいね、出来ればパパも付いて行きたいね、良い経験にもなるし思い出にもなると思うよ」

「じゃー僕、参加しても良いの」

「勿論だよ」

「いっちゃん、良かったわねママが言った通りでしょ」

「それで、何時から行くんだ」

「まだ、何時になるか決まらないんだよ、決行日が決まったら館長からお願にくると言って呉れたよ」

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