告白
「……」
連絡事項をクラスごとにホワイトボードにまとめる作業が終わっても、まだ僕と森崎さんは二人でいた。
なぜかというと、森崎さんがホワイトボードをデコり始めたからである。
いつものことだ。
係の仕事なんて最低限やればいいのに、ご本人の美しさが最高なせいか、いつも最高レベルにホワイトボードを彩っていく。
あ、でも……
「今日はいつも以上に丁寧だね」
「あ、うん! そうかも。でも、このうさぎさん可愛いでしょ」
「うん。可愛いな」
それにしても、ホワイトボードに絵を描くのが上手いなあ。
僕は森崎さんのペンの動きを眺めていた。
曲線をささっと描くのがうますぎる。
「あ、あのさ」
いつの間にか連絡用ホワイトボードの周りには人が通らなくなっていたころ、森崎さんは言った。
「はい」
「突然でごめんなさい。あの、好き……です」
「え?」
森崎さんを見ると、森崎さんは僕を見つめていた。そして森崎さんの後ろにはうさぎさんがハートの形のぬいぐるみを抱いた絵が描かれていた。
えええええ。まじですか。
いや意外すぎる。
たしかに、かなり図々しいかもしれないけど、僕と森崎さんは少し親しかった。
少なくとも、僕が森崎さんのことを知れるくらいには。
係の仕事もちゃんとやるし、でも可愛い絵を描いたりして面白いし、そして優しいし、可愛い絵よりも森崎さんがさらに可愛い女の子だし。
そんな風に思えるくらいには、親しかった。
けど、告白してくるとはね。
だって言ってたもんな。
「よし! 私もイケメン彼氏作ろ!」
ってね。
てことはイケメンに好きな人がいたんだろう。
けど断られたんだ、きっと。
だから二つの面で意外で、一つ目は森崎さんが振られたということ。二つ目は、森崎さんがそんな次々告白するタイプだったということだ。
「あ……僕は……僕は森崎さんのこと、好きで……」
けどこの気持ちはちゃんと言わないと。だってそうなんだから、ほんとに。
「ほ、ほんと? う、うれしい……!」
よ、喜ばれてしまってるよ……。
なんでだ。僕は一体、第何志望なんだ?
そんな受験みたいな言い方しないか。
いやでもとにかくさ。
僕は気になるので訊いてみた。
「あのー、僕さ、今日の昼休みに、『私もイケメン彼氏作ろ!』って森崎さんが言ったの聞こえたんだけど……」
「あ、言ったと思うよ。と、とにかくねっ、あの、私、一番、好きだから! 隆斗くんが!」
そう、森崎さんは、僕の下の名前を言い、そして一番好きと言ってくれたのだった。