二十話 本音
会社近くのファミリーレストランで、美空は月子と向き合って座っていた。
ドリンクバーだけ頼み、またこんな風に彼女と時間を共にするとは思わなかった。
(ここまで来ちゃったけど、何から訊けば……)
居心地の悪さに胃が痛くなる。
が、それでも、どこかでまだ月子と友達に戻れると思っているのかもしれない――と頭に過った美空は首を横に振る。
「なんなの? 用がないなら帰るけど」
「あ、ごめん」
思わず謝ってしまった美空に、月子は顔を顰めた。
「あんたっていっつもそうよね」
「へ?」
月子の顔には嫌悪感が滲んでいた。
「すぐ謝る。別にこっちは何がしたいか訊いただけなのにさ」
口を開いた月子は、さらに続ける。
「すぐ自分が悪いって立場になってさ、なんなの? そんなに自分が弱いってアピールしたいわけ?」
「そんなこと……」
「無意識なら余計性質悪いわ」
吐き捨てるように言った月子に、美空は絶句してしまった。
「シュンも言ってたわよ。自分じゃ何もできないって顔をすぐするって。普通に話してても、どこかでこっちを悪者にしたがるような感じがあんのよ、あんたは。で、自分を下にして、従順ですって顔をして自分だけ守ろうとする。話しててこっちをイライラさせんの」
美空は何も反論できなかった。
月子は口端を上げた。
「だから、あんたには友達ができないのよ」
「ッ……」
体中が冷えていく。頭の中が真っ白で、目の前がチカチカと点滅する。
友達ができない。
それは、俊介に以前相談したことだった。その時、彼は言った。
『無理にひとと仲良くしようと思わなくてもいいんじゃないか?』
過去の美空には、その言葉がとても救いだった。
しかし、俊介はそんな美空の悩みを月子に話して、二人で嗤っていたのだ。
(こんなひと達だったんだ)
やっと振り切れるような気がした。
美空は、強張る唇をどうにか開いた。
「ず、っと……そう思っていたのね」
今度は、月子が口を噤んだ。
「月子の言う通り、自覚はなかったわ。何かいつも不快な思いをさせてしまっているような気持ちはあったけど……あたしは二人と一緒にいた時間を本当に大切に思っていた。これからもよ」
月子は軽蔑するような顔をした。
「嘘ばっか」
「もうあなた達にどう思われても構わない」
ハッキリと言った美空に、月子は目を瞠った。
今までこんなことを月子に言ったことはなかった。
そこで、自分がいかに月子や俊介に嫌われないよう振舞っていたことに美空は気付いた。
それが、二人には自分だけを守っているように見えていたのかもしれない。イライラさせてしまっていたのかもしれない。
すべて身から出た錆だったのかもしれない。
でも、それを今気付いたところで、過去はなくならない。
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「二十話 本音2」に続きます。
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