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第七話

 夢月・李奈(ゆずきりな)にとって、姉はかけがえのない家族。


 大好きなお姉ちゃん。


 だけども、その顔には何時も影があった。


 幼心に、姉が何かを隠しているのは知っていた。


 守られているのを知っていた。


 隠れて泣いていることを知っていた。


 その涙の理由は分からない。


 だけども…無意識に触れてはいけないものだと理解していた。


 理由は聞かない。


 姉はとても悲しい顔で微笑むのだから。


 だから、聞かない。


 何時からそのようになったのかはよく分からない。


 だけども…


………


……



◆◆◆


 そこは、微睡みのなか…。


 …闇の中に少女…冥はいた。


 その姿は憔悴し、ただ虚空を見つめ佇んでいる。


 唇を噛みしめ、その瞳は濁り、どろりとした感情のうねりと共に嫌悪、憤怒、侮蔑を混ぜ、た深い悲しみと、狂気が渦巻いていた。


 どれほど駆け回ったのか。


 どれほど探し続けたのか。


 ただ……さ迷い。


 何時そこにたどりついたのか。


 記憶は曖昧だ。


 暗がりで佇む冥は、本当に消えてしまいそうなほど、儚く見えた。


 その瞳は虚空を見つめ、ただ嗚咽も無く、泣き声を上げるでも無く、涙を流し続けていた。


 脳裏に浮かぶのは、思い出か、後悔か。


 何故あの時。


 それは己への嫌悪。


 己への怒り。


 届いたはずのこの手は、何もつかむことは無く。


 記憶は色あせていく。


 蝕んでいく。


 真っ黒に塗り潰されていく。


 深い悲しみと、暗闇の中に消えていく。


 恐怖が蝕んでいく。


 心が壊れていく。


 心も体も、崩れていくかのような…。


 孤独に震え、恐怖に震え。


 どれほどの時をそうしていたか。


 気が付くと、それが見えたのかもしれない。


 闇の中に一点の光。


 ただ、ぼんやりと明るい何かが近づいてくる。


 それは、あたたかい…。


 ただ包み込み、その光は…日だまりのようにあたたかい…。


 あぁ、そうか…。


 これは……


 いかないと…


 守らないと…


 私は……


 そして、意識は……途切れ。


 そこには大切な…何よりも大切な妹が、私を抱きしめていた。


 冥の瞳に映る小さなその姿。


 ただ何よりも…優先すべき存在。


 私は抱きしめていた。


 守ろう。


 この手は絶対に離さない。


 離してなるものか。


 それは自身の心を締め付け、縛り付け。


 この手で包み込むのは、大切な何よりも大切な、宝物()なのだから。


…………


………


……



◆◆◆


 シラユリ学園、中等部1年。


 名前を倉崎・穂花(くらさきほのか)

 彼女は、学生であると同時に、人には言えない秘密がある。


 それは、魔法少女。


 魔法少女・ミラージ。


 ある時彼女は、特別な出会いをはたす。


 妖精との出会いを。


 その時から、全てが変わった。


 魔法少女としての特別な力を持って、悪の組織ウロボロスとの戦い。


 最初は一人で。


 そのうち他の魔法少女と出会い、友として、戦友として戦った。


 敵は強い奴、変な奴、むかつく奴、様々で。


 とくに…道化師とか強敵でよく逃げられる。


 まぁそんなこんなで、日夜戦っている。


 そして、また一つ大規模な戦闘が起きた。


 学校の帰り道、魔法少女となってから出来た同じ立場の親友達と共に通学路を歩いていたときだった。


 契約妖精達が騒ぎだした。


 何か事件が起きた。


 魔法少女の出番。


 私達は裏の世界に飛び込んだ。


 そこは今までに無い数の怪人や化け物がたくさんひしめき合っていた。


 慌てて変身した。


 襲い来る敵を薙ぎ倒し、貫きとおす。


 やたらめったらと魔法を使う。


 何がどうなっているのか分からない。


 ただ敵は、どんどん押し寄せてくる。


 私達は追い詰められていた。


 そんな時、影が動いた。


 蠢く影が喋った。


 ゼッル…そう名のる不思議な影。


 妖精が敵じゃ無いと、魔法少女と同じ力を感じると教えてくれた。


 ゼッル…彼女?は私達にいくつもの情報を教えてくれた。


 この裏の世界、敵の親玉の存在。


 こちら側に巻き込まれてしまった一般人の存在。


 敵の数。


 私達の戦い方と敵との相性。


 ゼッルの指示は的確で不思議と背中を気にすること無く戦うことが出来るようになった。


 ゼッルは、驚いたことに私達魔法少女の戦闘から援護、一般人の避難と護衛までを同時に複数をカバーし続けていた。


 一人二人なら分からなくも無い。


 それこそ何十人、戦闘で動き回る魔法少女達も含めてもかなりの人数をリアルタイムで指示を出して、その全てが的確だった。


 敵を倒し、逃げ遅れた人を誘導して


 そうして、私達魔法少女は段々と疲弊していく。


 それでもと、闘い続けているとき、その化け物は現れた。


 大きな咆哮と共に、黒い鎧の騎士。


 黒騎士が現れた。


 恐怖を振り絞り走った。


 強かった。


 今までに無く強かった。


 防御は硬く強固、そのくせ動きは速く、その攻撃の破壊力は凄まじい。


 それは敗北。


 ゼッルの助けが無ければ、本当に死んでいた。


 影が押さえ込んでくれなければ…私達は。


 …それほどまでに危ない状況だった。


 戦線からの離脱、そして後退。


 黒騎士は追って来なかった。


 それどころか、咆哮とともに姿を消した。


 同時に、影が…ゼッルも消えた。


 焦った。


 すごく焦ったし、慌てた。


 そんな時、何処からともなく戦闘音が響いたのだから。


 私達は直感的に、動いた。


 それぞれが、各々の判断でその場所に。


 たどりついたときに視たのは、巨大サソリと、尾針に貫かれた瞬間の真っ白な姿の少女。


 魔法少女と同じ光、彼女が影の主、ゼッルだと思った。


 だって、周囲で影が蠢いてるし。


 まぁ色々と意味の分からない状況だった。


 それでも、こいつが敵の親玉だとは、分かった。


 怒りに震え、最終的には全力全開で残りの魔力を全て使っての必殺技とでもいう攻撃を叩き込む。


 ……正直、やり過ぎだと思った。


 互いに、互いの必殺技が混ざり合い、威力が増大。


 空間を巻き込む大爆発。


 私達魔法少女も、逃げ隠れた一般人もその全てが、その異界から弾き出された。


 それがことの顛末だ。


…………


………


……



◆◆◆


 そこでは四人の少女達が、何か真剣に考え、頭を悩ませていた。


「けっきょく、(ゼッル)と言う方は、誰も知らないと言うことですわ。」


 そう言って、ため息とともに道中で買ったアイスを頬張る少女、倉崎・穂花(くらさき・ほのか)

 

「今回は分からないことだらけだよ。」


 そう言って頭を抱え妙な動きをする少女、星野・えりか(ほしのえりか)または…魔法少女モニカ。


「…ふむ、大規模な群れ、黒騎士、…そして…多分、私達と同じ魔法少女…ゼッル…。」


 そう言って頷くのは赤羽・美波(あかばねみなみ)、または、魔法少女バレット。


「……あー、あの黒いのかぁ。」


 そう言って遠い目をする、幼い外見の少女、夜桜・翔(よざくらかける)、または魔法少女ヴラーチ。


 「私達とは違う系統の魔法少女ですよね」


 そう言うのはえりか(モニカ)


「うちの妖精さんは何も知らないみたいですわ」


 そうして頷く、ほのか。


「出来ればあって話したいけれど。」


「ゼッル…いったいどんな人だろう。」


「さぁ?でも真っ白な姿をしてたから……改めて考えると魔法少女って見た目じゃ無かったような…」


 首を捻り、考え込む、みなみ。


「……けっきょく間に合わなかったのは私だけか?」


 かける、はそう言。


「「「……」」」


 三者三様にジト目というか生暖かい視線を向ける。


「な。なに?」

 

「いや、そのうちね。」


「そうね」


「まあ翔ちゃんは怪我もしてたんだし。」


「……む、それでもだな、彼奴(ゼッル)やつは私のことをチビって…チビって!!」


「おぅお、どうどう、落ち着いて。」


「今思い出してもここに来る物がある、ぬぬぬ。」


「まあ、気にしない~気にしない~。」


「そうそう、お姉さんでしょ(笑)」 


「うんうん翔ちゃんはお姉さんだもんね(笑)」


「……なんか、釈然とせんぞ。」

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