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第三話

 魔法少女達の戦闘は、一時的な空白が生まれた。


 何処からともなく現れた黒い影。


 そして、ゼッルを名のる使い魔越しの相手。


 だがその力はどの魔法少女達とも異なり、それでいて強力だった。


 両者は互いに顔を合わせたわけでは無い。


 それでも、その魔法少女達と悪意の化け物共との戦いは、ちゃくじつに魔法少女達に有利に事態が動き始めた。


 戦場を飛び回る(ゼッル)が魔法少女達に最も有利な位置、相性の良し悪しの敵を教えて、まるで司令塔のように機能することで、バラバラに近い個人技の集団であった魔法少女達が、本当の意味でチームとして戦闘を行えていた。


「ハアァァ!撃ちぬけ【シャイニング・アロウ】全力掃射!!」


 上空で杖のような物を構えた、魔法少女バレットが傍らを飛び回る(ハト)の形をした影の指示に従い、他の魔法少女では対応できない空の敵を撃ち抜く。


 また、地上では山のような化け物の亀を左右から狙う、魔法少女二人。


「ミラージ、息を合わせるのです。」


「モニカこそ、ですわ!」


 互いに破壊に秀でた力の特性を持つ者同士、魔法少女モニカによる一点を集中破壊で強制的に敵の弱点を守る装甲を引き剥がし、むき出しの部分に魔法少女ミラージが攻撃を叩き込む。


 また別の場所では、魔法少女ヴラーチが強敵…スピードも防御も有り、そして何よりも知性をもつ厄介な化け物のリーダ格と激しい近接戦闘を繰り広げていた。


「いい加減に、殴られろコラアァァ!!」


「ヒャひぁあはハハ、雁首そろえた小娘共がいい気になりやがっテェェェエ!!」


 ヴラーチは、他の魔法少女達のサポートを、(ゼッル)に任せ、全力で戦っていた。


 それ以外に当てが無くもなかったが、まだ見ぬ仲間(魔法少女)…ゼッルと名のった影の主、その力の特性を考慮した上で信頼出来ると判断したのだから。


 それに(ゼッル)ほ、幾つかの情報を魔法少女達に教えた。


 それは敵の群れ、その化け物共の親玉の存在と、戦闘における敵と自分達の相性。


 そして、守るべき一般人達の存在。


 考慮した上で、全体のサポートを任せ、全力で戦っていた。


 決して前に出たかったというわけでもなく、やむにやまれず…の…筈だ。


「ふきとべぇぇぇ!」


 …ヴラーチは近接戦闘の魔法少女だ、戦いながら笑っていやがります。


 …戦闘狂…


「オオオオ!!くそ、があぁ?!」


 狼頭の化け物、光の粒子を纏ったヴラーチの拳を体を捻り、さらに片腕を盾にして防ぎきる。


 そんなふうに、魔法少女達は最も有利な、または相性の良い敵との戦いを推し進めていく。


 (ゼッル)の本体……冥は、廃ビルの上でその戦局を見下ろしていた。


「…(ミラージ)(モニカ)…は目の前の大型に攻撃を…空にいるやつ(バレット)、後ろからも来るぞ…チビ(ヴィラーチ)はさっさと片付けろ…チッ…。」


────よくまあ、やるものよのぅ。


 冥は、いくつもの光景が頭の中に流れ込んでくるのを不快に感じながらも、己の意識を、自身の影と言うもう一人の自分…いや一人じゃないかも知れないそんな意識を並列思考のような形で魔法少女達をサポートし続けながら、しずくを探し、ついでに敵の親玉を探し続けていた。


「……親玉は、見つけた…けど。」


 そして見つけたのだ、その化け物の親玉がいる場所を。


 だが……どうする、彼女(魔法少女)たちをけしかけるには遠すぎる、むしろ私の方が速いかもしれない…。


 本体である真っ白な少女の姿をした冥は、魔法少女達が戦う戦場よりも向こう側からいくつもの化け物共の群れが向かってきていることにも気が付いていた。


「…サポートを継続しつつ…行けるか?」


────汝の好きにすればいいだろう。


────汝の力は、まだまだ不明瞭だ、あの影だけでは無さそうだしのぅ。


 頭に直接響く声もそう言っている。


「……私の意識を半分ここに置いておけば……行けるか。」


 冥はそうぽつりと呟くと、姿が揺らぎ、足下の影が二つに分かれる。


「「……」」


───ほぉ?コレは面白い。


 目の前には、自分と瓜二つ、全くそっくりな真っ白な少女がいた。


「私はあっちにいく。」


「私はここで。」


 二つに分かれた、冥は残る者、廃ビルから飛び降りる者とに分かれた。


「…アレを、あいつを殺せば…しずく…必ず見つけるから……だから。」


 無事でいて。


 そう心の中で強く、何よりも強く願うのだった。


…………


………


……



 ここは?


 私は……


 何も思い出せない……


 どうして…



「…お~や?目覚めたようだねぇ……いやー、マにあってよかった。」


 そう言って、黒くて細長い白衣の化け物がケタケタ笑って、継ぎ接ぎの少女とも化け物つかない何かに視線を向けて話しかける。


「いやー、即席で結晶をぶち込んで、玩具と混ぜこぜ、壊れた体を作りかえたけど、思ったよりもヤバいのが完成したねぇ~気分は如何だぃ?」


 そう言って、見下ろすのはつい先ほど拾った死骸のような少女…しずく…だった。


「…なぁ…ヴぁ…が?」


 上半身を起き上がらせ、視線を左右に振る。


 体は動く。


 あれ?私は……


 私は……ぁあ…守ラなきゃ。


 …何を?だっけ?


 手が…届かなかった。


 どこ…に?


「…ふぅん…言語機能か記憶が少しいかれたかな?、まぁ面白い被検体だしぃ、後でまたいじれば良いかなぁ、じぁこのまま実戦投入しちゃいますか?」


 白衣の化け物が、そう言ってケタケタ笑っている。


「ハカセー、じゅんびできたのですよ?」


 そう言って、笑う白衣の化け物に話しかける女の子。


「おゃ?助手…そうですか~それじゃあ、この新しい実験材料に武装させて、魔法少女にぶつけてみますかねぇ~」


 そう言って、助手らしい女の子が持ってきた何かをつまみ上げる。


 それは甲冑。


 西洋甲冑とでも言うような、兜鎧…そして剣。


「……黒騎士…良い響き~」


 ケタケタと笑う白衣の化け物と、狂たように笑う助手がそこにはいた。


「……ぁ…。」


 そして、しずく…だった何かは。


 宙に視線をさ迷わせ、片手を伸ばして、死んだ魚のような瞳から、涙を流していた。


…………


………


……



 そこは、無理やり作り出した要塞とでも言うべき瓦礫の山。


 その場所にひしめき合う、化け物共と、中央にまるで王のように存在する化け物共の親玉。


「……ドうなッてィル!、()()すら見つけられないのか!

くそォが!虫けラ共が…速く駆逐せンカァ!!。」


 そう当たり散らす化け物。


 サソリのような多脚の胴体にいくつもの頭と目玉をもつ化け物共の親玉が足下にいた部下を挽き潰し、つまみ上げて口の中に放り込み咀嚼する。


「…ケーファー様…お静まりくだされ、かの魔法少女なる輩に邪魔され捜索が難航し取るのですギャ!!」


 そう言ってくる足下で騒いでいる者を適当に弾き転がしては、目の前の光景を見つめ続けている。


 いくつもの目玉の虫のような化け物が、魔法少女達と化け物共との戦闘を、映し出している。


「クソ、くソが!、残りの群れもすべて向カわせロ!」


「そ、それではこちら側の守りが手薄になります。」


「そンナもの、どうトでモなるァァ!!。」


 そう言って、足下の化け物共を蹴散らして怒鳴り散らす。


「おっんや~、ケーファー様がお怒りだぁ」


 ケタケタと笑いながら姿を現したのは、あの白衣の化け物と助手、そして禍々しい鎧兜の騎士。


「………オマェ何のヨうだぁ?。」


 そうこの場の、化け物共の親玉…ケーファー様は数ある目玉を血走らせて、ケタケタと笑っている白衣の化け物に視線を向ける。


「いやねぇ…新しいおもちゃをさぁ、作ったから、あっちに行ってこようかな~てねぇ。」


 そう言って、化け物同士は見つめ合う。


「……フン…貴様ハ部下でモ何でモ無ィ……好にスレばイい…。」


「いゃあ~それでは、それではぁ~。」


 白衣の化け物がケタケタ笑いながら、助手と騎士を連れて出て行く。


「……ヂッ…我ヨリ上位共の部下ノくセニ、対等のツモりかぁ?」


 そう言って、八つ当たりのように周囲の部下であろう化け物を掴まえて喰らうのだった。  



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