第八話 宿命が彼の名を呼んだなら-8
「そっちが人間火薬庫なら、俺は生きた仕込み刀だ」
ハサミの目前まで迫っていた銃弾が突然音を立てて弾かれる。
銃弾は全て弾かれて床に落ちる。
床に落ちた銃弾はどれも綺麗に両断されていた。
「俺のEXスタイル【メッシュブレード】はアホ毛を鋭利な刃物に変えて自由自在に操れる能力だ」
そう語るハサミの桃色アホ毛は何倍もの長さに伸び、生き物のようにぬるぬると動いていた。
「面白いじゃねーかYO! エクステンド同士、やっぱり最後は髪でバトルだよNA!」
アフロスはマシンガンを撃ち続けるが、ハサミのメッシュブレードはビクともせず、弾切れをした一瞬を狙い、防御を解いてレイピアのようにアフロスの身体を貫こうとする。
間一髪で躱したアフロスだったが、アフロスの頬にはいつの間にか、かまいたちに斬られたような傷がつけられていた。
「メッシュブレードは伸縮する特性を持っているのだから間合いなんて関係ない。復讐の刃は砂塵舞い上げるつむじ風のようにどこからともなく斬りつける」
アフロスは後方に飛び退こうとする。
しかし、アフロスの脇の下から何者かの両腕が飛び出し、アフロスは身動きを封じられる。
アフロスを拘束したのは麦わらテンガロンハットを被ったマネキンだった。
「ナイスだよ、アニキ」
『一丁上がり!』
「何故マネキンが動いてるんだYO!?」
「俺のアニキのもう一つの能力、【キャプチャーボット】さ。生物だろうか置物だろうが、被った相手に憑依する」
マネキンに腕を固定されたアフロスはアフロヘアから武器を取り出せなくなっていた。
「あとは腕と脚を刻むだけだ」
ハサミは両手に持ったセニングダガーでアフロスの両腕を斬りつけ、横一文字に振るったメッシュブレードでアフロスの両脚から身体を支える力を失わせた。
「ぐっ、うううっ!」
「アフロス・カーリー一味、お前たちを逮捕する」
ハサミは倒れているアフロスに手錠をかける。
「お前らのコンビネーション、素晴らしかったZE……」
アフロスが潔く負けを認め、ハサミは一安心する。
「――ハサミ、緊急事態だ!」
しかし、直後にフモウが切羽詰まる様子で通信を入れて来た。
「遅いじゃないか。襲撃者の三人は俺一人で倒したのだが」
「そちらは恐らく陽動だ! 私が指定するポイントに今すぐ向かえ!」
「何が起こった?」
「カミキリが現れた」
その名前を聞いた瞬間、ハサミの心は強く昂った。