表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/63

目覚める力と性癖

連続投稿はここまでです。

明日以降はなるべく毎日投稿していく感じで行きます。



 深い姿勢から放たれる、必殺の煌めき。


 何度練習したかもわからない居合の動きは、この<虎狼 零>の世界でも問題なく使うことができました。

 前作の時点で身体に覚え込ませるように練習していましたからね。居合は特に得意分野です。



 さて、私のこの居合にスキルのバフなどは乗っていませんが、それでもやはり首への攻撃は致命の一撃となったようで、男は一歩二歩と後退ると、アイテムをばら撒きながら倒れ伏し、それきり動かなくなりました。


 デスペナでアイテムがばら撒かれるんですね、このゲーム。

 こういうシステムだとPKerは結構多そうです。



 それはともかく、思わぬ横槍が入りましたが、これでまた一対一になりました。

 とはいえ、元の一対一ではなく相手側が一人を失っているという事実があるため、精神的には圧倒的に私が有利でしょう。



「ああ、クソッ……来るなら来やがれ!!」


「そんな化け物みたいに言われると流石に傷つきますね……」



 一応襲われてる少女を守る形になっているのですから、私の方が正義サイドだと思うのですけれど。


 まあそれは良いとして……このまま真っ正面から叩き斬るというのも考えましたが、流石にそれはやめておいた方が良いでしょう。

 二人目の男を相手にしている最中、私は凱亜へのマークを外す必要がありました。同時に二人気にかける余裕はありませんでしたからね。

 つまりは、その間に彼の『空蜘蛛』を仕込まれている可能性があるというわけです。


 私から彼の方向へ向かう直線上に配置されているのか、はたまた避けられる事を考えて別の位置に配置しているのか。

 二つ同時に設置できるため、その両方に設置することも可能ですね。

 能力がわかったのは大きいのですが、やはりこういう場面ではどうしても相手の思考や癖なんかを読む必要があるので難しい所です。


 どうしたものかと考えて、私はふと、あることに気づきました。

 先程殺した男の死体がまだ消えていないんです。

 リスポーンするまではその場に残される、という感じでしょうか。


 凱亜(がいあ)に注意を向けつつ、私は地面に伏した男の死体を持ち上げてみます。

 意外と重いのですが、それでも片手で持てますね。

 現実だったら成人男性一人を片手で持ち上げるなんて不可能ですが、そこはまあゲームなので。


 いずれにせよ、倫理的に肉体の切断が不可能となっているのもあって、ある程度の耐久力はありそうですし……これなら行けそうですね。



「お前、何を……」



 狼狽する凱亜に向かって、私はにこやかに微笑み——手に持った死体を盾にして、一直線に彼の元へと駆け出しました。


 予想通り、彼の前には空蜘蛛が仕掛けられていたようです。

 ズバッ、ズバッと二度斬撃が発動しましたが、そのどちらも肉盾に吸収され、私には届かずに終わりました。


 心の中でありがとうございますと感謝の意を述べつつ、死体を放り捨てて刀に手をかけます。



「マジかよ……クソッ!」


「さっきからクソクソ言い過ぎですよ」


「何者なんだよお前……!」



 相変わらず一人で喋りますねこの人……まあ私としても別に会話するつもりは無いんですけど。



「私のことはどうでもいいじゃないですか。さあ、早く戦いましょうよ」


「……ッ、らあああああ!!」



 叫び声を上げ、彼は突撃して来ました。

 その眼に浮かぶのは紛れもなく怯えの色。つまりは、私に恐怖しているというわけで。


 そう考えた途端、ゾクッと身悶えするような感覚が身体の芯に走りました。



『ふふ……申告通りSのようね』



 また謎の声が語りかけて来ましたが、何の話かわからないのでスルーします。

 そしてそのまま凱亜をじっと見据え、能力を発動しました。


 熱を帯びる感覚と、減速する世界。

 凱亜の攻撃は単調で、避けるだけなら能力を使う必要すらなかったのですが……ここは敢えて、嫌がらせをしてしまいましょうか。



「よいしょっ……っと」



 刀の一撃を懐に潜り込むように回避し、私はそのまま体勢を低くして凱亜の足を払いました。

 急な攻撃に対処できるはずもなく、彼は地面に背中を打ち付け、刀を取り落としてしまいます。



「ぐあッ!」



 さて、ここから反撃されることはないでしょうが……まあ念には念をということで、右肩を踏みつけて動けないようにしましょう。

 呻き声を上げ、こちらを睨みつけて来る彼。

 その眼に渦巻く感情の渦を直視して、ゾクゾクッと震え上がるような感覚が再度湧き上がって来ました。



『なんというか……貴女って意外と業が深いのね?』



 やかましいですね。

 とはいえ、新しい扉を開いてしまった感があってちょっと怖いので、さっさとトドメを刺すことにします。



「では、また会いましょう」



 刀を軽く振り、頸筋を斬る。

 たったそれだけで、彼はアイテムをばら撒いて事切れました。

 なんて事のない、あっさりとした幕引きです。



『結構強いのね』


「刀の扱いには自信ありますから」



 とにかく、目標としていた能力の把握と復讐は両方とも達成できたので万々歳です。

 これで多分、やり残したことはないはず。



「……あ、辞世の句とか聞くべきだったんでしょうか」



 そんな私の呟きに、謎の声はただ笑うのでした。

予想以上のブクマや評価、ありがとうございます!

おかげさまでモチベーションが増加傾向にあります

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
なにで動悸するのか彼女の人間みが感じられて好きです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ