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空を劈く

投稿が滞ってしまい申し訳ないです。

ちょっと用事が立て続けにあって……来週あたりから元のペースに戻せるようにしていきたいです



「ふう……これで終わりですね」



 刀を払って、鞘に納めます。

 とりあえず今の戦闘で倒せたのは二人。もう一人、鎖に捕われた人も行けるかなと思ったんですけど、どうやら棄権したようですね。

 まあ、そっちの方の味方も龍子とベアによって既に殺されていたでしょうし、人数的に勝ち目がないと判断したのでしょう。


 ちなみに当然ではありますけど、これは試合なので敵を倒してもアイテムをドロップしたりはしません。

 同様に業値も貯まりませんので、気にせず斬っちゃっていいと言うわけです。

 そもそも死んだことにはならないみたいですしね。

 まあ、蘇生猶予期間があるので死体は少しの間残りますけど。……それだとやっぱり死んでるのでは?


 なんて考えていると、森の奥の方から龍子とベアがやってきました。



「片付いたみてーだな」


「ええ。そっちも終わりましたか?」


「おう。……まあ、大体コイツに持ってかれたけどな」


「ふふっ、森の中は私の独壇場だからね」



 確かに、植物を操るベアの能力って森の中だとだいぶ凶悪ですよね。



「一応二人は殺せましたけど……シキ、良くなってたりします?」


『さっきよりは良くなったかしら……でも、新しい能力は解放されていないみたいね』


「そうですか。まあ、まだ二人ですしね」



 確か、能力が覚醒しやすいのは勝ち負け問わず強敵と戦ったときのはず。今は不意打ちだったのもあってかなり一方的な戦いでしたし、一気に成長すると言う感じではないのでしょう。

 それでも変化はあるみたいなので、この予選ではとにかく倒していきたいですね。



「とりあえず、次のターゲットを探しましょうか。シキ、またお願いします」


『ええ、分かったわ』



 先ほどと同様、視界共有を使用した索敵です。

 とりあえず今回も春エリアで敵を探してみますが、やはり戦っている感じではないですね。何チームか発見しましたが、どこも周囲を警戒しているように見えます。

 秋エリアではちらほら戦闘も見えますし、そちら側に行ってもいいのかもしれません。ただまあ、着いたころには全然敵が残ってないみたいな状況も考えられますけど。

 うーん……とりあえず、春エリアで見かけたチームの方に行ってみましょうか。

 龍子たちにもそのように伝えようとし――



『——極彩色!! 避けろ!!』


『っ!!』



 雷神の言葉にシキが振り向くと、そこには迫りくる銀色の閃光が。

 それが何なのかを理解するよりも早く視界の共有が切断され、上空でシキが勢いよく旋回し、凄いスピードで降りてきました。



「シキ!」


『大丈夫よ、掠ってもないわ。ライがいち早く教えてくれたもの』


『……気にするな。ってかライって呼ぶなよ』


「良かった……」



 刀霊も、実体化した状態なら攻撃が通ります。

 一定以上のダメージが入ると回復するまで能力が弱体化してしまいますし、所有者にダメージの一部が貫通したりもしてしまいますので、実体化させるときはなるべく安全な状況でと考えていたのですが、まさかこの状況で攻撃されるとは。


 それにしても、先ほどの攻撃……なんというか矢のように見えましたけど、それにしてはめちゃくちゃ遠くから攻撃されたような……。



「弓での狙撃……ですかね、これ。一瞬しか見えませんでしたけど、めちゃくちゃ遠くから射られてたような気がします」


「大分高い位置まで行ってたよな。ぶっちゃけ真下から射っても当たりそうにねー高さだったけど」


「ふむ……何にせよ、狙撃を出来る人間がいるのなら、能力を使った偵察は避けた方が良さそうだね。仕方ない。地道に探していくとしよう」



 とりあえず、今はそうするしかないですね。

 不意打ちでなければどうにかなるかもしれませんが、今はシキの体調も心配ですし、用心しておくに越したことはないでしょう。

 一先ずは、先ほどの偵察で見つけた比較的近いチームの方へと歩くことにしたのでした。





◆□◆□◆□◆□◆



「ちょっ、なばろんどうしたの!?」



 戦闘の最中、あらぬ方向へ矢を射ったパーティーメンバーに対し、少女はうごめく髪の毛で敵を縛り上げながら疑問の声を上げた。



「遠くの方、敵いたから。……外したけど」


「へえ、お前が外すなんて珍しいな」



 もう一人のパーティーメンバーが、身に着けた鋼鉄のグローブで敵を殴り飛ばしながら聞く。



「調子でも悪いのか?」


「動きからして、明らかに矢を射る前に気付いてた……球体だったけど、向き判定は確実に背後だったのに」


「気配察知能力ってやつじゃねーの?」


「僕が射ったのは刀霊だから……一般的な気配察知能力は効果ないはず」


「ふーん? じゃあ、そういう刀霊の能力なんじゃないかな?」


「実は刀霊じゃなくてプレイヤーでしたーみたいなやつかもよ」


「さあ……まあ、刀霊次第でなんでも起こりうるゲームだから、理由はどうでもいいんだけど……」



 敵の最後の一人が死んだのを後目に、先ほどまで球状の刀霊が浮かんでいた場所を眺めながら、彼はつぶやく。



「……戦ってみたいな」


「わー、なばろん燃えちゃった系? いいよいいよ~、私も付き合うから!」


「え、ここマップの端だぜ? 今戦ったばっかだし、わざわざ行く必要もないと思うんだけど」


「……予選じゃなくて決勝で。……邪魔が入ると嫌だから。あんな風に」



 彼が指さす先には、先ほどとは別のチームがいた。

 現在地を把握するのが難しいこの空間の中で、端というのは侵入不可能の霧という物理的な壁が存在するため、マップの端は敵との接触を避けたいチームが多く集まることになる。

 その結果かなり戦闘が起きやすいため、既にここでは二度の戦闘が発生している。



「やっちゃう?」


「……うん。……さっさと予選終わらせたいし」



 そう呟いて、銀髪の少年は先ほどと同じように矢をつがえ、無表情のまま新たなる標的に向かって矢を射ったのだった。

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