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剣翼の戦乙女

月間6位まで来てました!皆様がポイントをつけてくださったおかげです、ありがとうございます!



 先ほどまで戦っていた灰餓狼に比べて、数倍大きな銀餓狼。

 鋭くにらみつけるような赤い眼は、ただ私をとらえていました。



――――――


[銀餓狼(ぎんがろう)]

灰餓狼の中からごくまれに出現する、銀色の毛並みを持つ個体。

生まれ持った強さとカリスマ性によって無数の灰餓狼を従えて大規模なコロニーを形成する。

銀色の体毛は魔力を増幅する性質を持ち、身体能力も灰餓狼とは比較にならない。


――――――



「まさか本当に出るとは……」



 一応灰餓狼の説明の方に名前は出ていましたけど、ごくまれにって書いてありましたし……そういうイベントクエストでもあるんでしょうかって思ってたら普通に出てきました。

 どのくらいの強さなのかはわかりませんが……銀餓狼がどのくらいの強さだろうと、灰餓狼が無数にいるこの状況はちょっと無理がありすぎます。

 脈導石を使って脱出しようにも転移までに時間がかかりますし、その間に攻撃されてしまうとキャンセルされてしまうのでこの状況では使えないんですよね。



 一応、灰餓狼が攻めてくる様子はありません。

 今すぐ囲って叩かれるような状況ではなさそうですが……。


 もはや銀餓狼を倒すしか道はないかもしれません。

 ゲームって大抵悪の親玉を倒したら総崩れになるやつあるじゃないですか。それに賭けるしかないように思えます。

 一対一で倒せるような相手かどうかという賭けもする必要もありますが。

 いや、それはもう賭けすぎでは?

 銀餓狼が出てきてる時点で相当に不運だと思うのですけど、分の悪い賭けに乗らなくてはならない自分の弱さが悲しいですね。

 この辺はもうステータスとかの問題なので仕方ないんですけど。

 


 さて、私が刀を構えると、銀餓狼は高く吠え、それから私の方へとものすごいスピードで走り始めました。


 走り寄ってくる銀餓狼を見ながら《導紅血》で眼に血を集中させ、『極彩色』の能力を発動し、カウンターを発動させるべく構えます。

 カウンターさえ決めてしまえば、とりあえず回避すること自体はできますからね。


 減速した世界の中で私と銀餓狼の間隔は徐々に狭まっていき、その身体や地面にカウンターを発動するためのマークが現れ……マークが、マーク…………。


 ……マーク、全然でないんですけど。


 え、そんなことってあります!?

 ちょっと仕様がまだよくわかってないんですけど、これもしかして格上過ぎてカウンターができないってことなのでは…………じゃあこれ絶対に勝てないじゃないですか!



「やば……っ!」



 というか、カウンターを発動するためにギリギリまで引き付けていたため、回避する余裕がありません。

 減速しているにもかかわらず、銀餓狼は車のような速度で近づいてきます。

 そのスピードに私は死を覚悟し――



 ――瞬間、私と銀餓狼の間に何か(・・)が落下してきました。



「え、な……っ!?」


 突然の出来事に困惑する余裕もなく、数歩下がって目を凝らします。

 巻きあがる土煙と、その中にすくと立ち上がった人影。

 その人影が手を上げた途端風が巻き起こり、土煙が払われました。



「大丈夫か?」



 風にはためく流れるような金の髪と、白銀の西洋鎧。

 明らかに和風ファンタジーの姿ではありませんが、何よりも目を引くのは彼女の背後に浮かぶ八本の刀と、銀餓狼を抑えるように交差された四本の刀です。

 連なる刀はまるで翼のようで、彼女の姿はまるで戦乙女(ヴァルキリー)のようでした。


 注視すると、名前はヱヰラ。色は赤くもなく緑でもなく、善良な一般プレイヤーのようです。



「グルルルルァ!!」



 突然の参戦者に緊急事態を察したようで、私たちを取り巻く灰餓狼は一斉に彼女を排斥しにかかりました。

 四方八方から迫る多数の狼。

 その全てを眺め見て、彼女はゆっくりと手を振り上げ――



「『司令刀(コマンダー)-羽刃斬(ハバキリ)』、《六連双翼剣(スカイフリーソード)》!」



 高らかな技の宣誓。

 それによって彼女の周囲に浮いていた刀の全てが突如動き始めました。

 一つは炎を上げ、一つは雷を伴い、それぞれの刀が異なる軌道で宙を舞い、全てが的確に灰餓狼を切り刻んでいきます。


 ものの数秒で灰餓狼は全滅し、残されたのは銀餓狼ただ一匹のみ。

 逃げるそぶりを見せない銀餓狼に対し、彼女は更に技を重ねていきます。



「《四枚羽根(フォースオブアカインド)》、《七剣抜刀(セブンナイトブレイド)》」



 灰餓狼を葬り去った十二本の刀のうち、四本がヱヰラの背中に、七本が銀餓狼を囲むように現れました。

 そうして残った一本……ひときわ目立つ銀色の刀を持ち、彼女は高らかに宣言します。



「さあ、往くぞ! 《星剣一閃(シューティングスター)》!!」



 背後の四本の刀から白い羽のようなエフェクトが舞い、ヱヰラの身体はそっと浮き上がると、異常なほどのスピードで突き進みました。

 それに対し銀餓狼はどうにか回避しようとしますが、すぐに七本の刀がその身体を貫いて地面に縫い留めます。


 瞬間、接触。

 迸る閃光。

 

 その光の奔流が収まったとき、ズシンと音を立てて銀餓狼は倒れ伏し、そのまま銀色の塵となって消えたのでした。

 

トッププレイヤーは大体こんな感じです。

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