表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/63

結成



「ふう……どうにかなりましたね」


「一時はどうなるかと思ったけどな!」


「ああ、そうだね。この勝利はきっと糧になる」



 私たち三人の前に転がるのは、三頭の骸。

 かなり苦戦したキマイラ戦でしたが、弱点を発見してからはとんとん拍子で進んでいきました。


 接続部分の結晶を破壊したことによってキマイラは三頭に分裂。

 それぞれが完全な状態で分裂したのなら強敵だったでしょうが、本当にその姿のまま分裂したのでどの頭部も満足に移動できない状態になってしまっていました。


 そうなれば、後は死角に回って袋叩きにするだけ。

 高ステータスな二人がいろいろな技を使って敵をぼっこぼこにしているさまは、だいぶ苦戦させられたというのもあってかなり爽快でした。



「助かったよ、二人とも。君たちがいなければ、どうなっていたことか」


「いえいえ、それでもベアトリーチェさんがいなければ倒せませんでしたから」


「ふふっ、ありがとう。それと、私のことはベアと呼んでほしいのだけれど……どうだろう?」



 いちいち王子様みたいな喋り方しますねこの人。

 というか喋り方だけじゃなくオーラとか所作とかそういうところ全部含めて王子様っぽいんですけど、ヅカ的な人だったりします?

 まあそういうロールプレイなんでしょうけど、ここまで自然なロールプレイは今までに見たことが無いです。

 リアルでもこんな感じじゃ無いとできませんよ。



「せっかくだからフレンド交換します?」


「良いのかい? 他でもないアナタのお誘いだ。私としては断る理由が無いのだけれど……」



 チラリと横を見たベアは、額から一筋の汗を流しながら口を開きました。



「……彼女の視線が怖い」


「えっ」


「……………………」



 横を見ると、何故か龍子がめちゃくちゃ不機嫌になってました。

 ずっとベアを睨んでますし、足先で細かく地面叩いてますし、鞘から炎まで噴き出しています。

 『イライラしてる人』のフリー素材みたいですね。でもそれ言ったら絶対怒られるんで言いません。



「どうしたんですか龍子、そんなにイライラして……仕方のない人ですね。何かあるなら私に相談してみてください」


「だぁーっ! お前もお前だリクドー! 何こいつに言い寄られて頬赤くしてんだよ!」


「はぁ!? そんなことしてませんが!?」



 急に何を言い出すんですかこの子は。

 確かにペースに飲まれそうになってはいましたけれど、私はそんなチョロい女じゃありません!



「ふふっ、面白い人達だ」


「呆れられてますよ龍子」


「"人達"っつってんだろお前も同類だ」



 そんなこんなで龍子に胸ぐらを掴まれ往復ビンタされていると、視界の隅でふと何かが動いたような気がしました。



「何かいませんでした?」


「モンスターの類いだろうか。先程のキマイラの出現で、この辺りのモンスターは軒並み逃げてしまっていたのだけれど……」


「飛蚊症だろ」


「これVRゲームですよ? あといい加減ビンタやめてくださいHPがゴリゴリ減ってる気がするんですって!」



 ステータスの差が激しすぎて軽いビンタで視界の端が赤くなるんですよ。


 それはともかく、今私が気になっているのは先ほど視界の端で動いた何者かの正体です。

 そこの木の影に隠れたっぽいですね。見た限りでは、そこから動いてないみたいです。



「シキ、なるべくバレないように上空から接近できますか?」


『ええ、行けるわよ』



 ここは視界共有能力を得た『極彩色』の出番ですね。

 球体状態でも使えるようなので、発見されにくさも考えて球体のまま飛んでもらいます。


 ふよふよと浮かびながら木の裏に回り込むと、そこにいたのは黒髪の少女。

 どこかで見たような…………あ、目が合った。



「きゃっ!?」



 至近距離に浮かぶ人魂のような球体に驚いて、少女は尻餅をついてしまいました。

 木の影から飛び出たので、シキの目を通さずに直接目が合います。



「あっ、あの……えっと……」


「あ、リクドーが助けたやつじゃん。一日振り……いや三日振りか?」


「えっと、その節はどうもありがとうございました……! 助けられたのは初めてで、本当に嬉しくて……!」



 またもやお礼を言われてしまいました。

 わざわざ神織までお礼を言いに来たわけでもないでしょうに……。


 まあそれはともかく、彼女は彩音という名前みたいですね。

 確か最初にあった時は、彼女の刀霊の能力で回復してくれたんでしたっけ。


 ……と、ふと思い当たって私は彼女に聞いてみました。



「もしかして、先ほどの雨は貴女が?」


「っ、はいっ!」


「やっぱりそうだったんですね。助かりましたよ、ありがとうございます」


「えっ、いえいえそんなっ、私はただ能力を使っただけで……」


「いや、アレが無かったら全員死んでたからな? 助かったぜ、本当に」



 それにしても、また会えるんじゃないかとか話していたら本当に会えましたね。

 人の縁というのは不思議なものです。


 ……と、そういえば彼女に会ったら聞きたいことがあったのでした。せっかくだからベアにも聞いてみましょう。



「そういえば、二人は同盟に入っていたりしますか?」


「い、いえっ。私は入ってないです……知り合いもいませんし……」


「私も今はフリーだね。少し前は入っていたのだけれど、人が多い環境には疲れてしまってね……今は一人、さすらっているところだよ」



 意外にも、二人ともフリーでした。



「実はいま同盟のメンバーを探しているんですが、まだ全然見つかってなくて。もしよかったら二人も入りませんか?」


「い、いいんですかっ!?」



 彩音は結構食いついてきましたね。予想通りではありましたが。



「そうだね……どうしようか」



 ベアは腕を組んで暫し考え、それから指を一本立てて言いました。



「一つ、条件があるのだけれど」


「ええ、何ですか?」


「私は仇討人という役職に就いている。端的に言えば、ゲームのシステムで認められたPKKerと言ったところだろうか」



 PKKerというのは確か、PKerをPKするプレイヤーでしたっけ。必殺仕事人的な。



「仇討人である以上、私はPKerを殺さなくてはならない。つまり、条件と言うのは、同盟にPKerが入れないようにするということさ」


「なるほど……」



 まあ、私はPKerになるつもりは無いのでいいんですけど。



「龍子と彩音は大丈夫ですか?」


「アタシはPKとかしたことねーぞ」


「私もありませんっ」


「それなら問題はありませんね。私についてはむしろPKKに興味がありますし」


「ふふっ、そうか……それは良かった。実を言うと、私も君たちと共に戦いたいと思っていたところなんだ」



 そう言って、ベアは優しく微笑みながら手を差し出してきます。



「改めてよろしく頼むよ、リクドー」



 差し出された手を取って、私もそれに答えました。



「ええ、こちらこそ」



 斯くして、新たな仲間が二人加わりました。


 見るからに強そうなベアと、龍子曰く希少度の高い回復能力持ちの彩音。

 始めたばかりで色々なことが起きましたが、これならどうにかやっていけそうです。



「チッ」



 ……代償として龍子の機嫌が最悪になりましたが。

このゲームはシステム上ネカマも普通に存在しますが、この四人はリアルでも女です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ