路地裏の影
日間VR2位、日間総合62位ありがとうございます!
当分は毎日二話更新を目標にやって行くつもりです
「一旦表に出るぞ!」
「わかりました!」
迫り来る謎の敵に対し、とにかくまずは表に出ることにしました。
表にさえ出れば、少なくとも多方向から袋叩きにされるということはないはず。
くるりと踵を返し、路地裏を逆走します。
『横よ、リクドー』
「っ……と」
シキの声に合わせて能力を発動。減速する視界で戦況を把握します。
場所は路地裏の十字路に差し掛かった辺りで、左右の道から一人ずつ敵が攻撃を仕掛けて来ているようですね。
敢えて逃げることのできる道を作っておいて、そこを不意打ちで倒すという作戦でしょうか?
それなら普通に物量で固められた方が余程厳しかったと思いますけどね。
さて、右方向から駆け寄ってきた敵の攻撃をしゃがんで回避し、次の攻撃に転じるよりも速く腕に蹴りを放ちます。
「ぐあっ!」
「ぎゃっ!」
敵が刀を取り落とすのと同時に、龍子の方からも短く悲鳴が上がりました。
左側の敵も問題なくいなせたようです。
ここは追撃ではなく逃げに徹しましょう。
『【徒手の心得 弐】を獲得しました』というアナウンスを横目に、表通りに向かって再度走り出します……が、しかし敵の勢いは凄まじく、徐々に距離が詰まって行きます。
龍子が先を進んでいるのを見る限り、やはり私がステータス的に劣っているのでしょう。そもそも昨日始めたばかりですからね。
「しゃあねぇ、能力を使うか」
そう言って、先を走る龍子が刀を抜きます。
それから今度は片手で印を作り——
「《土障壁》!」
そう唱えた途端、私たちの前方に土の壁が生成されました。
これが龍子の能力……と一瞬思ったのですが、印を結ぶ動作があったので妖術の類いでしょう。前作の妖術もそんな感じでしたし。
「どうするんです!?」
「とにかく壁を飛び越えてくれ!」
何をするのかは分かりませんが、とにかく言われた通りにしましょう。
跳躍し、建物の壁面を蹴ってどうにか土壁の上へと辿り着きます。
壁の上から下を見ると、龍子が土壁に刀で大きく傷をつけている最中でした。
二度三度、交差するように壁を斬りつけ——瞬間、膨大な熱量が生じるのを感じました。
発現したのは、圧倒的熱量の炎。
迸る火焔は濁流のようにうねり、のたうち、路地裏に潜む敵を焼いて行きます。
その一つ一つはさながら龍のようで。
「凄い……けどこれ龍子も巻き込まれてません?」
ま、まさか龍子は私を守るために犠牲に……龍子……いい奴でした……。
「死んでねーよ、なに喪に服してんだてめえ」
「まあ生きてますよね」
声のした方を向くと、龍子が彼女の刀霊に抱きかかえられて空を飛んでいました。
人型だとそんなこともできるんですね。
さて、とりあえず私は壁の上から降りて、表通りの方へと走ります。
「一応説明しておくか。今使ったのがアタシの刀霊『龍爪散華』の能力。簡単に言えば、斬りつけた場所から焔の柱を吹き出させる能力だな」
「それ強くないですか?」
「これでもサービス開始当初からずっとやってるからな。能力なら基本時間かけただけ伸びるし」
私の能力も今後強くなっていくのでしょうか。
まあ私としては今でも充分強い気がするんですけどね。
「ちなみにリクドーの能力は絶対何かしらの進化あるからな。ぶっちゃけ最初にしても地味だし」
「ええ……弱いんですか私の能力」
「周囲がスローに見えるだけだろ? 自分は等速で動けるとかならともかく」
「でもいい感じに戦えてますよ?」
「お前にしか無理だっての……絶対に二つ目の能力出るからな。賭けてもいい」
まあ、龍子がそういうのならそうなのでしょう。
能力は強いに越したことありませんし、新しい能力が貰えるのなら貰っておきたいところです。
と、話している内に気づけば表に出ていました。
結構派手に戦ったので表に聞こえてるかと思いましたが、特に騒ぎになっているような様子もなく。
今気づいたんですけど、この辺り結構建物が密集してるので路地裏が至るところにあるんですよね。
犯罪発生率二位というのはその辺りも影響していそうです。
「……で、まだ生きてる人いますよね」
「ああ。屋根上にいた奴は生きてるだろうな」
龍子の能力で結構な数を倒せたように思えますが、しかしそれだけでどうにかなるとは到底思えず。
なんて話したのと同時に、シュタッと音を立てて何者かが路地の方から出てきました。
現れたのは、三人のプレイヤー。
私よりも背の低い少女と、黒髪長身の男と、見るからに筋肉質な男。
それぞれが黒地に赤い羽の刻まれた仮面を被っています。
「報告と全然違うじゃん! 普通に強いよあいつ」
「だから物量で押すのでは無く精鋭を送り込むべきだと提言したのに……」
「まァ、弱ェ奴らにも仕事渡さねェと離れて行っちまうからな」
そんな彼らの様子を見て、龍子が言いました。
「あれが【緋翼煉理】って同盟のプレイヤーだ」
「【緋翼煉理】……さっき貴女の刀霊が言っていたやつですね」
「ああ。アイツらはなんつーか、傭兵みたいな組織でさ。本業はPKの代行らしいぞ?」
「はぁ……ほんと面倒な奴らに狙われてますね」
一体何やらかしたんですかね、龍子は。
かなり恨まれてそうなんですけど……まあ龍子は後先考えずに行動することがあるので今回もそういう感じなんでしょうね。
それはともかく、黒仮面達の方に注意を向けます。
「ジャビ、貴女は本部に報告を。援軍を要請してください」
「私も戦いたいんだけど!?」
「前回は貴女が前線で戦っていたでしょう。順番は守るべきです」
ジャビと呼ばれた少女は抗議しようとジタバタしていましたが、「次は私の番だからな!?」と言ってから、脈導石で何処かに消えて行きました。
残ったのは二人。長身の男と筋肉質の男です。
試しに敵を注視して見ますが、名前は「???」となって表示されません。仮面の効果でしょうか?
ただ、名前はわからずともその色は完全な赤。
龍子の言っていた通り、PKerであるようです。
「さァ、どっちをやる? 俺ァどっちでもいいぜ」
「なら、私はターゲットをやりましょう。炎使い同士、直接戦ってみたかったんです」
「んじゃ俺ァそっちの女だな。せいぜい長く生き残ってくれよ」
そう言って、筋肉質な男は私に獰猛な笑みを向けてきました。
「龍子、これ勝てると思います?」
「まあ、このゲームはプレイヤースキルがかなり影響するからな。皆伝相手じゃどうしようもねーけど、そこまで強いわけじゃねーだろうし……半々ってところか」
「半々ですか……思ったより高いんですね」
「それだけ期待してるってことだぞ?」
「はいはい……」
何というか、昨日から巻き込まれっぱなしではあるんですけど……期待されるのは悪くないです。
「それなら応えてあげましょう、勝利という形で!」
戦いの火蓋が切られました。
ブクマや評価などいつもありがとうございます!




