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いざ、神織へ

VRゲーム日間3位……!?

(前話冒頭でひっどい誤字をやらかしてました。誤字報告本当にありがとうございます)


 いざ神織へ! と言ったものの、ふと気づけば結構な時間をゲーム内で過ごしていました。

 十五時から始めたのを考えると、恐らくもう日付が変わる頃でしょうか。


 ゲーム内と現実で時間が乖離しているとは言え、人魂を相手に何時間も回避を続けるなどしていたわけですから、まあそのくらいは経ってますよね。



「龍子は明日用事とかあります?」


「いいや、暇だな。別にバイトとかしてねーし」


「じゃあ明日の朝もう一度会いましょう。六時に待ち合わせって考えておいてください。それでもどうせ九時くらいに起きるんでしょうし……」


「いやいや、信用してくれていいんだぞ? ちゃんと六時に起きるからな!」



 そういって龍子が約束の時間に現れたことは一度もありません。

 本当に毎回遅れるので、どうしても遅れて欲しくないときは敢えて予定より早い時間を指定していたくらいです。



「そういえば、私がログアウトしている時ってシキはどうなっているんですか?」


『寝ている……という表現が正しいのかはわからないのだけど、少なくとも意識はないわね』



 刀に合わせて存在しているようなものでしょうし、私がログインしていない間は存在そのものが一旦消えているのかもしれません。

 というか、私がログインしなくなったらシキは存在できないんですよね。


 ……これ、今後愛着が湧くほどにゲームをやめられなくなっていく奴じゃないですか。

 上手いこと考えますね。

 まあ辞めるつもりもないのでいいんですけど。



「んじゃ、また明日な。起きたらチャット飛ばすから。六時に!」


「はいはい、期待しないで待ってますよ」



 自信満々でログアウトした龍子の後を追って、私もメニューからログアウトを選択したのでした。



——————



「ふぅ……」



 感覚が現実の肉体に戻ったのを意識して、ゆっくりと上体を起こします。

 それからヘッドギアを外し、モノクロの部屋を一通り眺めました。


 今でこそもう慣れてしまいましたけど、VRゲームにハマった当初はこの差に愕然としていたんですよね。

 私にとっては色を認識できないのが普通ではあるんですけれど、流石に一度VRで鮮やかな世界を認識してしまうと……という感じです。

 別に悲観的になったことはないんですけどね。


「……お腹が空きました」



 何かあったかなと台所に行こうとして、そういえば食料としてコンビニでパンを買っていたのを思い出しました。

 メロンパンをひとかじり。優しい甘さが染み渡ります。



 本当はこんな時間に食べるのも、食べた後すぐに寝てしまうのも良くないとは思うんですけれど……まあ、一日くらい良いですよね。



——————




「悪りぃ、寝坊した!」


「いやもう、本当に予想通りでありがとうございますって感じですよ」



 現在時刻は現実時間で午前九時半。

 龍子が目覚めたのは予想通り九時でした。

 念のために六時に起きた私を誰か褒めてください。



「別にいいんですけどね。もう慣れてるんで」


「諦められるのが一番傷つくな……」


「だったら改善してくださいよ……」


「頑張る」



 そう言って親指を立てる龍子を尻目に、私はシキに呼びかけます。



「シキ、いますか?」


『ふふっ、ちゃんといるわよ』



 刀の辺りからふっと現れたシキが、私の目の前で一回りして見せました。

 球体なのでよくわかりませんけど、とりあえず変わりないようで良かったです。



『大体一日くらいかしら。よく眠れたわ』


「それは何よりです」



 ログアウトしてから九時間くらいなので、ゲーム時間的には一日と三時間が経過していますね。

 時刻的にはちょうど昼頃で、移動するにはちょうど良い頃でしょう。



「ところで、ここから神織(かみおり)まではどうやって行くんです?」


「そうだな……徒歩で行くなり馬車拾うなりしても良いんだけど、面倒だし脈導石(みゃくどうせき)でも使うかな」



 そう言って彼女が取り出したのは、青く光る十センチ程の石でした。



「神峰島には四方八方を駆け巡る地脈ってのが存在してて、脈導石はその流れに出入りする為に使われる鉱石。これは使い捨てで、入るのにしか使えないやつだけど」


「それ、私も使えるんです?」


「本来は転移先の脈導石に触れてる必要があるんだけど、これはパーティーメンバーも一気に飛ばせるからな。アタシが行ったことある場所なら平気だ」



 中々便利なアイテムですね。

 私はこれが初めてのMMOなんですけれど、既にこの世界の広さに感動してますし、それは同時に移動にとんでもない時間がかかるというわけで。

 こういうワープ用のアイテムがないとやってられないんでしょうね。



「よし、じゃあ転移するぞ」



 そう言って、龍子は脈導石を放りました。

 脈導石はそのまま地面に落ちることなく、胸元あたりの高さで停止すると、青い光をいっそう強くしてくるくると回転し始めます。

 そして、その回転速度が最高潮に達した時——



 バシュッという効果音が鳴って、龍子だけが消えました。



「…………」


『…………』



 え、なんで?



『もしかして、パーティーを組んでなかったんじゃないかしら……』


「……言われてみれば、確かに組んだ覚え無いですね」



 一緒にいればパーティーになるとかそういう感じじゃないんですね。本当に対戦ゲームしかやったことがないので、そういうシステムには疎い私です。

 今回のは龍子のうっかりということにしておきましょう。



 数分後、顔を赤くして戻ってきた龍子とともに、今度はしっかりとパーティーを組んだ上で脈導石を使ったのでした。

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