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誰の為にも鎮魂の鐘がなる  作者: 蔵前
日曜日は神様こそお休み中
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ケルベロス

 バークは立ち止まっており、彼が案内した留置場の四つの牢の二つには、体中に切り刻まれた傷跡を残す中年男と、床にうずくまって始終震えている中年女性が留置されていた。


「現在留置されている者は、十四人の少年を強姦して殺したジョン・ダーレムと、不倫相手の子供と無関係の親子を殺したミランダ・ショーの二名だけだ。」


 私は自分でも知っている指名手配犯の名前を聞いたと驚いていた。

 ジョンもミランダも、未だにテレビで特集されている十数年前の連続殺人犯だ。


 特にミランダは、悪いことをしたらミランダが来るよ、という親が子供達を怖がせる怪物名ともなっている。

 不倫相手の子供を残虐に殺した罪で一度は刑務所に服役したが、模範囚で仮釈放した後すぐに、自分の目の前で幸せそうにしていたという理由で面識のない母子を惨殺して行方をくらませたからである。


 そんな人達が捕まっていたのに、どうして報道がされていなかったの?


「ふうん。オスの方は不治の性病持ちで、メスはジャンキーか。使えないな。」


 え?

 私はジュスランの使えないという言葉に驚いた。

 だが、その後すぐにバークの答えた言葉にさらに衝撃を受けた。


「全く。フラーテルもジャンキーや病気持ちの人間を喰う事で、疫病に感染したり、オーバードーズ状態になるなんてね。そんな事も知らされないで君達を追わされていた下っ端兵隊の俺達は、一体何なんだろうね。」


「人間は正義感や良心があってこそ、何じゃ無いの?人前で裁きたくない重罪人を、政府がパスクゥムやそれ以外のフラーテルの世界に引き渡して処分していたなんて事実、いくら君でも知りたくは無かったでしょう。僕達を殺したいという意識が消えてしまう。」


「な、何を言っているの。この二人は。」


「まだわからないの?人間とわたくしたちは持ちつ持たれつ、なのよ。人間界でいらない人間は私達の世界に送られる。私達の常軌を逸した仲間は、バーク保安官の様な人達に狩られる。そういう決まり事なの。」


「で、この者どもを余が狩っても良いという事か?捧げモノには汚れすぎているが、魔法の手の材料でしか無いのだから、これで良いか。」


 私とシャーロットの後ろにはアルファードがいた。

 彼は私達を押しのけて前に出ると、バークとジュスランの方へと歩いて行った。

 五歩で辿り着く先だが、その五歩を進む一歩ごとに彼は体を変化させていった。


 最終的に彼が変化しきった姿は、犬というには大きすぎるという、大きさは牛ぐらいの銀色の巨大な毛むくじゃらな生き物だった。

 石彫りの波の意匠を思わせる固い質感の巻き毛は銀細工のように輝き、バランス的に大き過ぎる頭は犬というよりも毛皮を纏った竜のようでもある。


「これがケルベロス。」

「まあ!首は三つでは無いのね。」


 それは大きく咆哮をあげた。

 ジュスランは自分の左横にいたバークを弾き、自分も反対の右横に飛び退った。

 その刹那、陽炎が出現したかのように牢の前の空気がぐらりと歪んだ。


 咆哮による世界の揺らぎは一瞬で終わったが、私の目の前にある二つの牢の中にた犯罪者達の姿も消えていた。

 生首と手足という人体の先以外は粉々の肉塊となっていたのである。


「ああ、汚れた血を浴びないように手首を切るのは面倒だなあ。」


 目の前には全裸となった少年の後ろ姿。

 これがケルベロスの力?

 ハハハ、無理よ?

 こんな人外、八歳のお子様が調教できるはず無いじゃ無いの!

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