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誰の為にも鎮魂の鐘がなる  作者: 蔵前
金曜日は魔女の夕べ
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獲物の横取りは禁止

 バークもイグニスもマンババランという単語を聞くや、全てを諦めた様にして私を見捨てて私のいる水槽のある部屋から出て行った。


 私を守る騎士二人が消えたならば、私はシャーロットに呪われるだけだ。


 でも、構わない。

 あの二人の男がマンババランという魔物に勝てないと言うのならば、私こそ、ウジ塗れの普通の人生よりもウジの無い不幸塗れの人生を選ぶだろう。


「助けてくれてありがとう。シャーロット。」


「構わないわ。あなたがわたくし以外の呪いが掛かっている事こそわたくしへの侮辱なの。だから、わたくしはあなたという媒体を仲介して、あなたを呪うマンババランにそいつの元の呪いごと呪いを放ったというだけ。そいつはどんなことになっているかしらね。」


 私は穴だらけの気味の悪い自分の姿を思い出した。


「そ、その人も私みたいな穴だらけ、に?」


「さあ。返ってくる呪いは二倍以上のものになるから、どうなるのかしらね。」


「ど、どどどうも、助けて下さってありがとうございました。」


 もう本気で腰の骨が折れる勢いで、怖い同級生に頭を下げた。

 シャーロットは黒い瞳をきらりと輝かせ、貴婦人の如く手の甲を口元に当ててわざとらしく笑うと、さらに私を追い詰めるであろう恐怖の言葉を吐いた。


「上位のフラーテルであるわたくしの獲物を横取りする相手にはそれ相応の仕置も必要なのよ。つまり、これこそわたくしの義務仕事でしかありませんの。」


 友人どころか獲物でしか無かったとは。

 呆気にとられた顔をした私を鼻で笑って見せると、シャーロットはさらに私の知らないことを言い始めた。


「ご存じ?デーモンはパスクゥム内で人間を狩ってはいけないし、人間の警察は呪術者が呪術を行ったからと逮捕など出来ないのよ。」


「ええ?」


「マンババランは魔女の呼び名だよ。虫使いのね。そして、魔女と言う者は呪術を使える人間でしかない。さあ、お洋服はこれでいいかな。大人服しかないからミスティに変化しておこうか。外見はバークが大好きなあっちでね。」


「どうして?いいの?イグニスがいるのよ。」


「呪われた外見を捨てたと言えばいい。そして、本来はそっちだとね。」


「だ、大丈夫、かしら?」


「君のパパ候補のレークスが、弟は何とかするって言って来たよ。君のシロイルカ姿をメールで送ってあげたんだ。彼もバブリングが見たいってさ。」


「ははは。れーくすぱぱが?わあ、さいこう。」


 私は着替えを手渡せられながら、本当に知りたい、デーモンがパスクゥム内で人間を狩ってはいけない、という所が知りたいとジュスランを見上げた。


「ドンだって人間を狩っているじゃない?」


「彼が外から連れて来た人間だけね。」


「え?」


 彼はフフッと笑った。


「デーモンは生き残るために姑息な取引をしたんだよ。」


「姑息な、取引?」

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