ショッピングは個性そのもの
「わあ!なんて可愛いの!」
私はピンクのミニドレスを掲げていたが、おかしい事に、バークは勿論イグニスもそのワンピースは受け付けられない、という顔をした。
これで五回目だ。
スパンコールの銀色ミニドレスも駄目。
黒いけれどヒョウ柄なミニドレスもダメ。
紫色で真っ黒なレースが縁どられたキャミワンピースも却下。
トルコ石のような綺麗な青の蛇柄タンクミニドレスなんて、取り上げる前に私こそその売り場から引っ張り出された。
どうやら私が選んだミニワンピースは、どれもこれも彼等の目に適わないらしいのである。
ここで私は凄くイライラしてきた。
「ねえ!好きなものを買ってくれるって約束だったでしょう?買ってくださるって事だから、互いに気持ちが良いものと思って、あなた方が嫌そうなのは諦めて選び直してきたわ!私は歩み寄ったの。それなのに、あなた方は私に歩み寄りどころか妥協一つしないおつもりね!」
バークはぎゅっと眉根を寄せ、自分を恥じる様な表情を見せた。
イグニスは、わあ!なんだか目を爛々と輝かせているではないか!
「なんて怒りんぼうで炎のようなんだ!素晴らしい!やはり君は俺の思った通りの女神だ!ああ、いいとも。そのドレスが欲しいんだね。買ってあげよう。ただし、俺の選んだドレスも君が着てくれる、というお願いを聞いてくれたら、だが。」
私はそうねと手を叩いた。
「そうね。ごめんあそばせ。あなた方の好みを先に聞いておけば良かったのよね。あなた方が好みのお洋服を持っていらして。気に入った服の方を買って頂くわ。そして、私が気に入らなかった服を持ってこられた方には、私が欲しいと思う服を嫌でも買ってもらう、いかがかしら?」
まあ、凄い。
イグニスとバークは一瞬で私の前から消え去った。
そして残された私は、ジュスランとオコナ―のカップルを見返した。
ジュスランは本気で楽しそうに目を煌かせ、オコナ―はなんだか考え込んでいるような顔つきを見せていた。
「アメリア、どうかなさって?」
「え、いいえ。」
アメリアは何でもないと、何でもある表情をして見せた。
「なんでもおっしゃって?」
「いいえ、何も。いいえ、言うわね。あなたは綺麗な言葉使いをするのに、どうして服を、ええと、街角に立つような、ええと。」
「まるでコールガールのような?」
オコナ―はグッと言葉に詰まり、真っ赤に顔を赤らめると、私にすまなそうにしてごめんなさいと謝った。
「自分が着ないからって、ええと、普通のお店で売っている服なのに、そんな偏見な目で見てしまって。」
「いいえ、いいの。私は夜の女だもの。夜に着れる服こそ欲しいのに、あの唐変木達は気が付かないの。」
そう。
私が大人の女性の姿に変身する時は、夜のクラブなどにふらふらと出掛ける時だけなのである。
まあ、ファッション人形が着る様なキラキラしたものが好き、という趣味もあるのだけれど。
「わお!その唐変木達が戻って来たよ!どんなお洋服か僕もジャッジしてあげよう。個人的には蛇柄のタンクドレスが君にはお似合いだと思うけれどね。あれは裾にオレンジ色のビーズがジャラジャラついていて面白かった。」
ジュスランはオコナ―に肘鉄を喰らっていた。
その普通の恋人のようなやり取りをジュスランがとても嬉しそうにしている事で、彼こそ魔物でいる事にウンザリしているのかしら、と急に考えてしまった。
だから子供達に戦隊を組ませたのかしら?
あれは悪者を倒すって目的があるのだし。
いやいや、ジュスランの家にあったDVDの魔法少女は、皆酷い目に遭っていたじゃ無いの。
見せかけに騙されては駄目よ、ローズ。
ジュスランは私が自分を窘めている事を知っているかのように、さらに恋に落ちている人間の間抜けな振る舞いをして見せた。
「ねえ、アメリア、僕はスパンコールドレスを着た君も見てみたい、けれどね。そんな妄想をしちゃ嫌、かな?」
アメリアは真っ赤になり、いいわよ、なんて答えた。
コールガールな服って、あなたは数十秒前まで思っていませんでした?
「わお!嬉しいな!僕の為にそれを着て踊ってくれる?もちろん、二人っきりの時に。」
アメリアは真っ赤になって、それも嬉しそうにして照れながら、いいわよ、を言おうとしたが、それは吸血鬼との約束になるぞと私は焦った。
ジュスランはちゃんと狩りをしている!
「ええと!私は真人間になってみようかしら!真っ当な女性が好みそうなドレスを、ええ、アメリア、あなたが選んでくれない?」
アメリアは嬉しそうに微笑み、ジュスランはもっと嬉しそうに微笑んだ。
嵌められた?
私はやっぱり馬鹿だったの、かしら?




