ダブルデートぷらす1
待ち合わせはやはりザンダーロックカフェだろう。
とにもかくにも、私はパスクゥムで気軽に入れる飲食店がここしか知らない、という中身は八歳の子供でしか無いのである。
さて、今日のお買い物ダブルデート、ジュスランとオコナ―、そして私とバークという組み合わせのはずが、お邪魔虫が私の目の前に座っている。
イグニス様である。
炎を意味するラテン語の名前を与えられたとおりに、彼は炎のように燃えやすく、そして炎のように障害物は全て焼き尽くして来たのであるという。
……レークスによると。
私は進退窮まった昨夜というか、今日の十二時という真夜中であったが、レークスにとうとう助け舟を要請していた。
ジュスランにお願いは、すでに状況を知っているのに私達を煽ってる点で彼が助けるどころか楽しんでいるだけとして相談相手にはなり得ないので却下だ。
そして、正直にイグニスに事情を話せば、怒ったイグニスによって私を殺すついでに確実にバークも一緒に殺される可能性が高い。
そうやって可能性を考えながら頼れる人を消去法でやったら、私には頼れるのがレークスしか残っていなかったのである。
私が死んだらミニポニーで遊べないと気が付けば守ってくれるかしら、その程度の最後の綱でもあったのだが、レークスはレークスでしかなかった。
「――ガキは寝ろ。」
「まあ!じゃあ、メール送る。それで私の話を聞くか決めて頂戴。」
私は黒髪のミスティとイグニスが惚れてしまった金髪ミスティの二つの自撮りをすると、その二つの画像をつけてレークスに送った。
奴は数秒しないで私に電話を掛け直して来た。
「紹介しろ。」
「どっちと?」
「両方だよ。俺は二人ぐらい同時に抱けるし簡単にいなせるぜ。」
「はっ、あなたねぇ、私が八歳の幼女だと忘れていませんか?」
「しっかり耳年魔だろうが。で、俺に相談したい事って?」
「それが私が変身できる女の子の姿なの。で、黒髪はバークが、金髪はイグニスに惚れられてしまったのよ。どうすればいいと思う?」
私の鼓膜がレークスの大笑いで破れなかったのは凄いと思う。
彼は呼吸困難になるほど笑い転げていたらしく、スピーカーから、大丈夫?とか、薬でもやったの?という周囲の人の言葉まで聞こえてきたほどだ。
なんて恥ずかしいデーモン。
ホテルのバーにいると言っていなかったか?
「もう!本気で相談しているのに!笑うのはもうやめてよ!」
「ハァ!ハハハハ。笑うしかないじゃねえか。飯にしか興味のない朴念仁の俺の弟と、フラーテルに対する人間の隠し刀のGOMDのバーグを、俺の可愛いポニーが手玉に取ったって話じゃねえか。いいぜ、そのまんま誑し込め。双方を燃え上がらせてだな、お前に先に危害を加えてきた奴を俺が喰ってやる。」
「――イグニスはあなたの弟じゃ無かったかしら?あなたの為に変なハリネズミ人形だって我慢している良い弟でしょう?」
「愛する弟であるからこそ旨いんだよ。ハニー。」
最後にはものすっごく甘い声を出した男は、そこで電話を一方的に切るという全く私には役に立たない電話で終わった。
ついでという風に、前述したイグニスの性質をメールで送ってきたことは、レークスの優しさなのかおふざけであるのか。
私は再びこれから一緒に買い物するメンバーの顔を見回し、大好きなバークと一緒のはずが不幸しか感じないのは、またシャーロットに呪いをかけられたに違いないと思い込むしか無かった。
私が馬鹿だから、じゃないわよね。




