魔女の秘密
自分の部屋に戻った私は、とりあえずどころか急いでレークスに電話をかけた。
バークの不幸はジュスランではなくレークスのせいかもしれないのだ。
「どうした?」
「レークス!あなたは酷い事をするのね!」
「――どのことを言っている?」
ああ!彼は人に酷い事をして当たり前のデーモンだった。
「バークの婚約者の魔女の事よ!」
「アハっ、やっぱりあの魔女何かしたか!いやあ、顔は可愛いのに中身が魔女そのものの陰険どろどろだろ。魔女のくせにバークの婚約者候補だろ、何をするかなあって期待はしていたね。」
「魔女のくせにって、酷い言い方ね。」
「魔女がどうしてパスクゥムから消えたと思ってんだ。あいつらは同性愛者でな、それでパスクゥムで固まって生活していたのよ。人間社会じゃ同性愛はご法度だったからなあ。そうしたら二十世紀末には人間社会でも同性婚解放だろ。そこであいつらは俺達に痩せた土地を売りつけてだな、その代金を握りしめて思い思いの土地に散って行ったんだよ。それがパスクゥムに魔女がいない理由だ。知らなかったのか?」
誰だ!デーモンが魔女を喰いつくしたと私に囁いた男は!
私の脳裏で蛍光カラーの青い瞳がチラチラと輝いていた。
あの嘘つき吸血鬼!
「――魔女だってわかっていただけで他は手を加えてはいない?あの魔女のせいでバークの隣に住んでいた元保安官が死んだわよ。あの人がまだこの町にいたことも知って驚きだけどね。」
金髪に青い目のダン・グレイは初老に差し掛かるぐらいの年齢だったが、精力的で若々しく、かなり人気のある保安官だったのだ。
昨年急に後任も無く引退したので、郷里に不幸があって戻ったのかと私は思っていたが、まだパスクゥムにいてバークの隣に住んでいたとは知らなかった。
「ああ、死んだのか。あいつはどんな死に方だ?」
「自宅にガソリンをまいての華々しい爆死。」
「おお!小心者のわりに華々しいな。そうすると賭けは誰が勝つのかな。」
「はい?」
「いやあ、賭けをしたんだよ。あいつの元女房はイグニスの孫でさ、血はうっすいが一応俺達の身内じゃねえか。そんな女を殴って虐待したんだ、それなりの始末はつけないとねって事で、飼い殺しにしていた。いつ死ぬかなあって俺達は賭けをしていたのさ。俺だったらあんな姿にされりゃあ翌日に死ぬがな。」
「あの、どんな姿にされたのですか?グレイ保安官だった人は?」
「イグニスに聞け。俺はグロいものには耐性が無いんだ。これからリリーとディナーだから、切っていいか?」
「……切る前に私の母親と代わってくれる?」
「おい、リリー。ちび助が君と話がしたいって。」
レークスの呼びかけを聞いて、物凄く距離が縮まったんだねと空しく思った。
「ああ、ローズ!寂しくなったの?今すぐに帰りましょうか?」
「ママ。ママの声が聞きたかっただけ。今ママを家に連れ戻したら私がレークスに物凄く振り回されてしまうわ。昨日は目がぐるぐるして大変だったのよ。」
「まあ、うふふ。いくらだって電話していいのよ。」
「あら、電話は取り上げられていなかったの?レークスはそれくらいやりそうじゃないの。」
「もうあなたったら。ねえ、本当に寂しくない?大丈夫?」
「寂しくてもまだ我慢できるから大丈夫。」
「まあ、うふふ。ありがとう。明日には帰りましょうか?」
「明日はママの大好きな俳優さんに会えるパーティがあるのでしょう。それは絶対に出てレークスを振り回して歯ぎしりさせてやってよ。私をぐるぐる回した仕返しを、ママ、お願いね。」
「まあ!あなたったら。ええ、そうする。あなたは本当に小さな魔女ね。魔女さんは明日から好きなお洋服を着なさいな。お互いに喪中は終わり。」
「わかった。ママ、お土産を楽しく待っているわ。」
電話が終わるころにはレークスへの気持ちが180度変わっていた。
リリーの意識改革ありがとう~ってくらいに。
明日から気兼ねなく私の趣味の黒ドレスが着れる!
女の子はおしゃれが出来てこそ幸せなのである。




