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誰の為にも鎮魂の鐘がなる  作者: 蔵前
日常は変わらず続き、私は再び月曜日を迎えられた
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召喚獣との契約

 私達は全裸男の後を追いかけた。

 自分達で煽っておいてだが、人が良さそうでも暗黒面に落ちたらしい館長が惨殺されるのも見たくは無いし、何よりも善意しか無いらしいオコナ―弟が殺されるのは尚の事見たくはないのだ。


 ちなみに、私が背負って移動させてやっているサラマンダー様によれば、全裸男の名前はディゴーで75歳の男盛りの美青年なのだそうだ。


 セルキーにおいては。


「セルキーのオスは五匹迄メスを妻にできるだがにゃ。あの男はその四匹をエージの口車に乗って人間が好きそうなタイプを選んだからにゃ。俺っちは人型の彼女達は見たこと無いが、ちっこくてめんこいアザラシだったぎゃあな。だけんど、セルキーの世界ではやせっぽちの不細工らしいにょ。そんで、ディゴーは物凄ーく妻たちを馬鹿にして虐げていたんじゃ。それが、満場一致での裏切りだにゃあ。全てが憎くて堪らないんじゃろうて。」


「だからって、私達を襲ってどうなるって言うの?」


「君達がオコナ―の臭いがしたから間違って追いかけて、しょんで、気晴らしに襲った、じゃないのきゃな?」


 私はオコナ―の臭いと聞いて自分の胸元を見下ろし、ウーパールーパーの顔の形をした王冠バッジが間抜けそうに私を見返した事にウンザリした。


「ああ、確かに。このバッジはオコナ―弟のプレゼントだったわ。そう言われてみればオコナ―弟の臭いもする。セルキーは鼻も良いのね。」


「ねえ、嬢ちゃん達や。なじぇに君達はアランをオコナ―弟としか呼んであげないのじゃ?」


「私達はジュスランファンクラブでもあるのよ。ジュスランの恋人らしいオコナ―の家族とは一線を引いて付き合いたいと思っているの。」


 私の背中のサラマンダーは私の適当な説明に対し、乙女心じゃなあ、と少し嬉しそうな声を出した。

 だが、私の隣には悪意の化身のシャーロットがいる。


「うふふ。あなたはファンクラブ会員では無いくせに!でも、ローズの言う通りよ。そして、嫌がらせするなら徹底的に、が、私のモットーでもあるわ。」


 シャーロットのせいで、私の背中のサラマンダーがガタガタ震えてさらに私の背中に貼り付いて来た。

 両生類のペタッとした感触は気持ちの良いものではない。


「シャーロット。サラ爺が脅えちゃっている。」

「じゃあ、そこらに放っておいて。私達の召喚獣になってくれないならいらないじゃない。」


 私は立ち止まり、シャーロットを見返した。

 私がシャーロットに向けた眼差しは尊敬を含んでいたものと言ってよい。


「ああ、本気であなたを尊敬するわ。じゃあ、サラ爺、私達はここでお別れね。」


 しかし背中の両生類は両生類の真価を発揮した。

 ガラスにぺたりと貼り付くアマガエルのごとく私の背に貼り付き、嫌じゃあああと騒いだのだ。


「嬢ちゃん達の言うことを聞くから、俺っちもこの地獄の家から連れ出してくりぇえええええ!」


 クジラの化身だった館長は別の怪物に喰われ、今や中身が怖い化け物に変わっているという事だ。

 つまり、今のサラマンダーは、館長や他の肉食フラーテルの餌として現在生かされているだけの立場なのである。


「おねぎゃいじゃ。ここから解放してくれたら、君達に炎の魔法を授けると約束するにゃ。」


「もっと早く言いなさいよ。交換条件、ええ、確かに承りました。」

 恐ろしきバンシーがサラマンダーに請け負った。


「わかった。助けてやるよ。」

 人助け大好きな人狼の娘はガッツポーズまでして見せた。


「もう心配は不要ですわ!」

 町長の曾孫は不幸な老人に安心させるように微笑んだ。


「こ、ここ以外の、しゅ、住む場所も欲しいだ、にゃ?」


「それはご心配なさらないで。」

「そうそう!」

「ローズの家には鯉が住んでいる池があるのよ!」


 何たるチームワーク。

 この不幸な老人の次の住処を勝手に私の家に決めたらしい三人の仲間に対して、私は舌を鳴らすというささやかな抵抗しかできなかった。

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