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誰の為にも鎮魂の鐘がなる  作者: 蔵前
日常は変わらず続き、私は再び月曜日を迎えられた
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水族館にいこう!④

 サラマンダー様が言うには、この水族館自体が水生フラーテルの職場であり集合住宅であったそうなのだ。


「ああ、納得した。それで館内で展示されている魚はアザラシの餌になりそうな近海の銀色の魚ばかりだったのね。でも、スーパーで売っている銀色の魚かアザラシばっかりじゃあ、集客は難しいんじゃないの?」


「いや、あの、企画ものぎゃ、ええと上手く行けば大金も手に入るだろうて……。」


 サラマンダーは入歯を無くした老人のようにもにょもにょと言葉を濁した。


「説明不足が一番困るのですけれどね。」


 シャーロットはサラマンダーのその様子に冷たい視線を浴びせると、館内案内用の小冊子をストッカーから勝手に引き出して読みだした。


 私達がいるのは土産物スペースだ。

 全裸男が私達を捜して暴れた場所に再び戻らないだろう、あるいは子供がそこに戻るわけは無いだろう、という灯台下暗しを狙ったのだ。

 陳列されていたぬいぐるみの棚を崩し、私達はぬいぐるみを身を隠す木の葉のようにしてぬいぐるみ群に紛れて隠れているのである。


「それで、暴力男はあのセルキーの雄なんだな。それで、奥さんと子供が暴漢に殺されたから絶望で暴れているのか。可哀想に。」


 サラマンダーはシルビアに違うと言いたそうだったが、純粋な子供の気持ちを壊したくはないのか私にチラリと目線を投げかけた。

 私はサラマンダーにとっては純粋では無いらしい事にむっとしたが、仕方がないのでシルビアの認識を変えてあげることにした。

 変な同情をしたばかりに、シルビアが全裸男から逃げ遅れたりしたら事である。


「違うわよ、シルビア。妻の方は私達にウーパーベビーを押し付けられると大喜びしていたオコナ―弟と逃げちゃったの。」


「あ、ああ!」


 両親が離婚して母親には恋人もいるらしいシルビアは、大人のどろどろした事情がセルキー達に起きたと思い当たったか、顔を真っ赤にして動揺の声を上げた。


「嬢ちゃんや。あにゃたはもう少し、ソフトにな。ほりゃ、ちっこい子もいるんじゃしな。」


 サラマンダー様は私に文句を言いつつリサに目線を動かしたが、キラキラ顔のリサはシルビアよりも「よくわかったわ!」という顔をしていた。


「では!子供を殺したのはあの全裸男ね!美しき恋人たちは道ならぬ恋に身を焦がし、許されざる子供を作ったのね。そして起きた大悲劇!まあ、まあ!お昼のソープオペラそのものね!」


 サラマンダー様は私を見返し、私にしゅまないと呟いた。


「女ゃの子は俺っちの知っている頃と変わってしまったんじゃなぁ。純粋な乙女が消えたから、ユニコーンも絶滅してしもうたのきゃ。」


「え、ええと。耳年増なだけで純粋な乙女だから。」


「そうきゃ?」

「そうよ!」


 サラマンダーはホッとした表情を浮かべたが、人の幸せを台無しにするのがシャーロットである。

 水族館のパンフレットを読んでいたシャーロットが、低い低い底意地の悪そうな笑い声をあげたのだ。


「うふふふ。水族館の集金方法が分かったわ。そして、エージが死んだことでここが立ち行かなくなっている理由も。」


「どういうことだい?シャーロット?」


「あら、シルビア。簡単な事よ。ここになぜかジュゴンルームという名の展示室があるの。レッドデータのジュゴンを飼育しているのは日本とオーストラリアの二か所だけなのにね。いないのに、目玉?パスクゥム近海にはジュゴンの生息地だってないわ。では、なぜでしょう。」


 リサとシルビアは当たり前だが小首を傾げ、私は自分のエージの生前の行動が恥ずかしいと両手で顔を覆った。


「よろしくて?ジュゴンは大昔は人魚の原型と言われてきたのよ。人魚よ、人魚。いやらしい大人の男の人には美しい人魚の鑑賞は特別なお金を払いたくなるものじゃない?それに、セルキーの雌は毛皮を脱いだら物凄い美女になるのは有名な話よ。エージさんはお金持ちの男性にその特別ルームのショーの仲介をしていたのよ。」


「この水族館の規模にしてはアザラシの頭数が多いのはそのためなのね。あのチンピラ。死んでもろくな事しか残さない!」


 私は怒りと共に立ち上がってた。

 シャーロットの推測が正しいならば、この水族館は人魚に裸踊りをさせて、雌のセルキーには売春行為までさせていたに違いないのだ。

 あの全裸男!

 妻にそんな行為をさせていたなんて!


「これは許せないことですわ!不幸なセルキーと人魚を助け出し、ここを真っ当な水族館にする事こそ少女戦隊の役目だと思うわ!そうでしょう!皆さん!」


 私とシャーロットの推測には、純粋なリサとシルビアは辿り着けないだろう。

 と、言うことで少女戦隊の言葉で鼓舞してみたが、彼女達には私の思惑通り以上の効果があったようだ。


「戦うよ!あの恥知らずな短小デブはぶち殺そう!」


「そうですわね!酷い目に遭った女の子の仕返しに、あの小汚いケツにあの棍棒を突き刺してあげましょう!」


「もう!リサもシルビアも少し下品よ!」


 私が彼女達を窘めることがあるなんて。


 でも、時すでに遅し。

 サラマンダー様は完全に失望した顔を私達に向けていて、私達の数メートル近くには全裸男が嬉しそうにこん棒を振り上げたところだった。

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