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誰の為にも鎮魂の鐘がなる  作者: 蔵前
日常は変わらず続き、私は再び月曜日を迎えられた
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水族館に行こう!②

 水族館内は竜巻にあったような有様だった。

 先週の出来事でもまだ全く片付けられていない状態なのだ。


 館長は美味しい鶏肉屋のマスコットそのままの大佐と呼ばれるべき人物で、大きなお腹でふうふう言いながら私達を出迎えた。私達の中にリサという貴賓客がいると知った彼は、水族館の被害の状況説明を加えながら館内を案内してくれた。

 大きな水槽の大体は大丈夫のようであったが、職員が暴行を受けていたり、水を巡回させるための大事なポンプ室が破壊行動を受けていたそうだ。そこで、まずは生きている魚の飼育が第一で、館内の片づけをする時間が無いという事らしい。


 開館するにはどれだけかかるか分からないと、館長は深い溜息を吐いた。


「ああ、魚たちも半数ぐらい死んでしまった。ただね、死んだはずの魚の死骸の引き取りにエージさんがすぐに動いてくださって、ああ、本当にありがたかったよ。彼を失った事は本当に遺憾な事です。」


 シャーロットが泣いた風にして鼻で笑い、私もシャーロットを真似て泣いた風を装った。


 一応私こそ遺族である。


「ああ、君はローズちゃんか。エージさんが君と水族館に来たら買ってあげたいと喜んだものがあるよ!」


 館長は叫ぶやどこぞへと走って行き、彼が戻って来た時には大きな紙袋を四つ腕にブラ下げていた。


「はい。ローズちゃんだけはなんだから、君達にも、どうぞ!」


 大きな紙袋にはゴマフアザラシの赤ちゃんのぬいぐるみが入っていて、私はこれは私にゴマフアザラシに化けて見せろと言う挑戦と受け取った。


 ジュスランからによる。


 レークスに死体ネックレスを手渡したのは、ドンの扮装をしたジュスランだったのだ。

 彼はドンとしてネックレスを手渡しながら、あの日にレークスが必ず宗教施設に来る暗示もレークスにかけていたのである。


 いや、暗示で自分がドンだと思い込ませたが正しいかもしれない。


 さて、レークスは私のせいであれがネックレスでは無いと知ってジュスランの暗示が消えたが、私との会話で宗教施設に向かい、結局はジュスランの計画は破綻しなかった。

 が、私がいたことでレークスとバークから感謝もされなかったとジュスランは怒ってもいるのだ。


 なんて最低な男だろう。

 そして、自分の為ならなんてマメに無駄に動く人なんだろう!


「まあ!可愛い。この子はここにいますの?私はこの子が見たいわ!」


 リサの喜びの声に対して、館長はしょんぼりと頭を垂れた。


「侵入した暴徒に殴られちゃって死んじゃったんだ。お披露目してそのぬいぐるみも売り出す予定だったのだけどね。」


「まああ!許せませんわ。こんな可愛い子を!」


 リサが憤慨し、シルビアがリサを宥める横で、シャーロットが私に囁いて来た。


「母アザラシも毛皮を脱いで消えたらしいわよ。殺された職員によると。」


 私はシャーロットの囁きに周囲をさっと見回し、赤ちゃんアザラシを抱いて走り回っている元職員の霊を見つけた。

 館長が先程行った土産物コーナー辺りをその霊はうろうろしており、そんな霊を見つけた上に話しも聞き出している事には素直に驚きだ。


「あなたは凄いわね。それで毛皮が残ってるって、まあ、セルキーだったのね。あら、じゃあ、死んだ魚はそのセルキーのご飯用?」


「たぶん。ご飯だと思う。そして、今まで子供ウーパーを保護して育てていた男が自宅で面倒が見れなくなったと騒ぐのはなぜかしら。家が少々壊れても、水もガスも電気も止まった家など一件も無いのよ。」


「普通にセルキーを自宅に監禁しているって事ね。で、全部知って協力までしている最低な人がジュスランなのね。」


「最低な男ほど魅力的って本当ね。あなた、毛皮を盗める?毛皮が手元に戻らない限り、セルキーは毛皮を奪った男からは自由になれないのよ。」


「オーケー。あなたは毛皮のありかが解るかしら?」


「もちろんよ。盗んだ男と話が出来ればね。」


「殺す気?ひどいわね。」


「あなたは短絡的ね。殺さなくとも心は読めるの。人間は肉体の中に霊を宿しているものでしょう。」


「あなたって本気で凄いのね。」


「――ありがとう。あなたは私に虐められている癖にどうしてそんなに素直なの?私には負けないって思っている?」


「普通に凄いって思っちゃいけないの?あなたが私を本気で倒しに来たら戦うけど、今はそんな気がないでしょう。だったら、普通にお友達だし、お友達だったら普通に凄いって思った時は言うものでしょう。」


「そうね。わたくしこそあなたが凄いと思うから、凄いって言っておく。」


「ありがとう。」

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