帰宅と再会
朝食の終わった私達はジェイクの車で保安官事務所に行き、そこで自分達の保護者に手渡された。
私をチラリとだけ見たバークは一瞬眉をひそめたが、すぐにジェイクに向き直ってジェイクのバッジを彼に握らせた。
「子供達の保護をありがとう。君が捜索に出なければこの子達は大変だった。これから宗教施設の現場検証だ。一緒に来てくれ。」
ジェイクはにこりと微笑むとバークに格好よく敬礼をし、そのまま二人は連れ立って事務所の奥に入っていった。
私達は彼等と別れたそこで事務所を出ていき、駐車場に出たところでシャーロットが私の耳に毒を吹き込んだ。
「新興宗教施設の集団自殺ですって、怖いわね。」
私は昨日の紫がかった灰色の雲が施設を取り巻く映像を思い出して心底脅えた。
バンシーか!これこそが本領発揮したバンシーの呪いなのか!
「きゃあ!」
シャーロットの母親がシャーロットの耳をひねり上げたのだ。
「この馬鹿娘!あとであなたが何をしたのかゆっくりお話しをしましょうか。」
「きゃあ!お母様!およしになって!わたくしは必死で一生懸命でしたのよ!」
騒ぐシャーロットを引っ張っていくシャーロットの母親は、シャーロットと同じ色の金髪で細身の美しい人であった。
濃い灰色のスーツ姿の彼女は19世紀の淑女を彷彿とさせるものであるが、娘の耳を掴んで引っ張っていく後ろ姿は、20世紀の鉄の女そのものだ。
私はシャーロットを叱れるシャーロットの母親にこそ脅えるべきだろう。
母親に真っ黒な大きなベンツに乗せられるシャーロットの姿を見送りながら、私は怖いとリリーの腕にぎゅっとしがみ付いた。
「うふふ。あなたこそ昨日は怖かったわね。でも、いい知らせがあるのよ。大雨の後には太陽が出るものなの。」
「いい知らせ?」
「ええ!パパが一緒に住みましょうって!そう!結婚しましょうってプロポーズしてくれたのよ!これから私達はパパのお家に帰るわよ!」
これはシャーロットが私に重ね泣きした呪いの効力か!
あるいは私はただ単に不幸の星の元に生まれて来ていたのか。
私の両目からはぽろぽろと涙が零れ、喜びの涙だと勘違いしたリリーは私を赤ん坊のようにして腕に抱きしめた。
「今日から沢山パパに甘えられるわね。」
「そうね。いつもパパはママも私も食べちゃいたいくらい愛しているって言ってるものね。」
ぐずぐずと泣きながらリリーの車に乗り込んだところで、私は助手席の窓を叩く音に顔を上げた。
窓には息を切らせている上に心配そうに顔を曇らせたバークがいて、彼は私に話があると言った。
「話?」
「すいません。保安官。この子をすぐに連れて帰りたいのですが。」
「ああ、すいません。すぐに終わります。」
「ママ、お話を聞いてみるわ。家に戻ってまたここに来るのも面倒でしょう。」
リリーはせっかくのエージの家から保安官事務所に戻ることを考えたのか、すぐに保安官にしていた数秒前の断りの言葉を訂正した。
「どうぞ。でもすぐにね。それからこの子も昨日は怖い思いをしたので。」
「ええ、勿論ですよ。じゃあ、来てくれるかな、ローズちゃん。」
私は車を降りると、バークが差し出した大きな手を握っていた。
とっても大きくて、私を愛していると言って撫でてくれた優しい手だ。




