迷子たちの冒険②
私達は古ぼけた家に入り込んだ。
腐った床にどろどろの絨毯、一歩踏み出せばノミが飛ぶどころか蠅に蛆やゴキブリがざわっと蠢く床の地獄絵図にぞわっとしながら、子供達は身をぎゅっと寄せあいながら進んでいったのである。
ところどころに白くぼやけた影が虫柱のようにして立ち昇っており、それらは全部が全部同じような言葉を唱えている。
許して!
殺さないで!
ああ、どうしてこんなことに!
ようやく私達が辿り着いて見つけた電話機は、古い建物にぴったりとくる壁に貼り付けられたタイプのものだった。
「納屋とトラックが生きているというのならば、使えるかもしれない。」
シャーロットの言葉に反応したのか、死霊の一人が再び叫んだ。
私が彼に電話をしたばかりに!
シャーロットは受話器を取り上げるや、自分の自宅の電話番号を回し始め、私は彼女の手の甲に鼻を押し付けてその手を止めた。
「何を!ローズ。」
馬のままでは人語は喋れないが、リサの前では扮装を解けない。
進退窮まってしまったが、私は死霊と話が出来て、目の前のバンシーこそ死霊使いだ。
そこで適当な死霊の一人の口を使ってみた。
聞こえるかな?
「ジュスランに掛けて。」
「え、どうして?」
あ、良かった。
さすが死霊使い。
「ここにはグールがいる。ジュスランは町の顔役の一人。」
「あら、そうね。それじゃあ。」
「どうしたの?シャーロット。はやく家に電話をかけて頂戴。」
私はリサの様子がおかしいと彼女を見れば、彼女の水色の目はトランス状態になっていた。
リサはまだ洗脳状態であったのか。
そして、教団はバンシーの自宅の電話番号を知りたがっている?
「ああ、先生ですか?ジュスラン先生をお願いします!急な宿題で困っていると伝えて戴けませんか?」
シャーロットは電話口の相手にジュスランの呼び出しを頼み、ジュスランが電話口に出るのをいらいらと待ち始めた。
そんなシャーロットの服をリサが引っ張った。
「ねえ、お家に掛けましょうよ。シャーロットのお家に掛けましょうよ。葬儀社の番号じゃない、エイボンの皆がいるお家に掛けましょうよ。」
シャーロットはリサを操る相手の迂闊さに顔をにやっと歪めると、受話器を電話機に戻してから再び私の背に乗り上げた。
もちろん、リサも私の背に乗せ上げたが、彼女はリサの首を締めた。
「洗脳された仲間程怖いものは無いわね。もうすぐ日が落ちる。日が落ちたら出発しましょう。」
私は死霊を使って「そうね。」と答えた。
夜空の星を見れば方角がわかり、方角さえわかれば私達は町に戻れる。
死霊を取り込んだ時に、私はここの住所も手に入れたのだ。
パスクゥムの西南のはじ。
大昔に魔女一族が住み着いていた場所だ。
魔女一族が消えても結界は消えず、ここは呪われた場所だとパスクゥムの人外さえも近づかない場所でもある。




