子供達のせいいっぱい
モーゼが海を割った時のように、子供達やこの新興宗教団体の信者の大人達の大勢が私達の逃げ場など無いようにして左右に立っていた。
私達はその間を歩かされ、おやつと誘っておきながら丸い屋根の礼拝施設のような場所の方へと誘導されている。
礼拝施設というには飾り気のない外見だったが、壁に嵌っている両開きの扉、それだけは手の込んだ装飾がしてあった。
だからか、その金色の扉だけが目立って浮いて見えた。
あの扉をくぐったら私達は生きて帰れない気がした。
「どうしたの?泣かないの?」
「地面を見なさい。フラーテル封じの紋章がそこかしこに描かれている。」
私はシャーロットの言ったように下を見て、それから周囲を見回した。
確かにある、が、私はシャーロットのように干渉は受けなかった。
「シャーロット。あなたは紋章に作用されるの?」
「当り前でしょう。あなたは作用されないの?」
「だって、信じていないもの。私は幽霊が見えるのよ。神様がいたら死んだ人間は全部天国か地獄に行っている筈でしょう。ここのミトラスなんてほんと―に知らない神様だし。」
シャーロットは痛みに負けた様にしてぎゅうっと両目を瞑り、するとシャーロットの身体からこきゅんと骨が再生した微かな音が聞こえた。
「ふふふ。信じる者が救われる。信じなければそこの神様の干渉を受けないって事ね。そうよ、バンシーこそ古代の人間にとっては神だった時代もあるのよ。」
シャーロットは足を止め、世界が引き裂かれるぐらいの悲鳴を上げた。
ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい。
バンシーの泣き声だ。
空には雲が立ち込め、風がびゅうびゅうと吹き出した。
洗脳されている子供も大人も棒立ちになり、シャーロットが叫び声をあげるたびに灰色の雲から紫がかった灰色の物体がひゅんひゅんと飛び出してきて、その物体は私達を閉じ込めようと待ち構える建物の周りをぐるぐると回り出した。
「素晴らしいわ。」
私は少し頑張って体を乗り物風な生き物に変えた。
テレビで見て可愛いと思った生き物だ。
しかし、化けて見て化ける前にシャーロットに声をかければ良かったと思ったが、彼女は私の背中に飛び乗り、私がリサを咥えたところで私の意図も理解してリサを私の背中に引っ張り上げてくれた。
私は仲間が背中に乗り上げたそこで、私達を閉じ込める人垣を払いのけて飛び出した。
「まあ!ミニチュアホースに変身できるなんて!わたくしはあなたを見直しましたわ!明日からポニーちゃんて呼んでさしあげます!」
ああ!シャーロットは落としてしまいたい!
私は私達を捕まえようと動き出した人間達を交わしながら、でも、背中の二人は落とさないように、いや、ぎゅうと毛皮を掴む手が痛いと泣きそうになりながら、とにかく必死に逃げまどった。
5/4 誤)シャーロッテ→修正)シャーロット




