第79話 イラムVSキノ『後編』
今回は俺がモヤモヤしちゃったので出しました!
ちゃんと水曜日にも出しますのでご安心ください!(間に合えば..........ガンバリマス)
私はゼブルとの戦いを終え、ボロボロの体を引きずりながら続いていた通路を進むと目の前に見えて来たものは通路ではなく他と変わりないレンガの壁だった。
「まさか行き止まり?!でも道はここ以外には...きゃっ!」
他に道がないか辺りを探そうとしたその瞬間、先ほども見た眩い光が視界を埋め尽くす。それは数瞬も続かずすぐに光は収まったが、見えた景色は見覚えのある別の物。
「まさか連戦なんてことは...」
この状況なら充分あり得そうな可能性を口にしつつ、なぜ一度かかった罠を警戒しなかったのか今更ながら後悔する。いくら戦闘後とはいえ気を抜きすぎだ。
だが、後悔しても仕方がない。もしこの先に【強欲】がいる場合が一番危険だが、反響して聞こえてくる声は女の声だ。
私の後ろには壁しかなく左右にも行ける道が無いことを確認して目の前の道を進む。しばらく進んでいるとまたも曲がり角がありそこを曲がるとその先には光が見えた。
「あそこに誰かいる!?」
その光の中には黒い影のようなものもあり、しかしそれは人の姿をしておらず、むしろ獣のような背丈だった。
まさか動物を扱う能力を持つ者がいるのか?
私はすぐに戦闘に移れるように背中から槍を引き抜き腰に溜める。そして慎重に進んでいくとなんと体中が真っ赤に染まり、反して顔からは血の気がひいて青を通り越して白くなっているキノが倒れ伏していた。
「キノさん?!どうしたんですか、その傷?!私が分かりますか?今すぐ治療しますね?!」
私はとりも直さずキノに向けてなけなしの魔力を使って“神聖魔法”による治療を行う。まずは見るからに傷が深い脇腹を止血する。
魔法だけでは大きく抉られた肉は完全に復活させられないので、とりあえず血の流れを緩めて引き裂いた私の服で傷を覆う。その際に服にも少し“神聖魔法”を使って軽く消毒するのも忘れない。
なんとか服で塞き止められるくらいの血量になったことを確認したら、次は背中だ。こちらも脇腹ほどではないが、それなりに深い裂傷を負っていた。
私は続けてこちらを治療しようとしたが、それを行うことは叶わなかった。
「誰だぁぁ!!そこにいるのはぁ!?クッソ!見えねぇ!けど略奪者以外にも増えたなぁ!声が聞こえたぞ!!」
「あなたがキノさんの相手をしていた人ですか...」
私に向けて正確に鎌を振るってきたその女性の体も血だらけでも、キノほどではなかった。だが、服は所々破けており隠せている部分の方が少ない。
それに顔上半分も血に染まっており目を開けておらず、額の縦に割れた線は閉じていたり開いたりしていた。しかし、振るう鎌は正確に私を捉えており、とても目が見えていないとは思えない。
「ちっ!“第3の目”が開きそうで開かねぇ!ァァァァ!うざってぇ!!せっかくもう少しで殺せそうだったのに!誰だよてめぇは!!」
「人に名前を聞く時はまず自分からと言われませんでしたか?まぁ今はあまり時間をかけられませんから名乗りますが」
私はちらとキノを見る。気を失ってはいるが、息はしているし一番酷かった脇腹も今は少し落ち着いている。だが、背中までは治療を行えていないのでまだ油断できる状況ではないのも確かだ。
問答を長くしてキノの治療に取り掛かるのが遅れるなど言語道断だし、彼女を相手にどれくらいで倒せるかも分からない。
「私はイゾット村のテミス・レギドです。申し訳ありませんが、キノさんが非常に危ないのであなたにあまり時間はかけられませんよ」
「はっ!誰とやりあったかは知らねぇが、自分より弱い雑魚を倒した程度で調子乗ってんじゃねぇよ!!なぜなら自分こそが【強欲】の魔王、シス・イントゥルフェ様に仕える第2戒王!イラム・スフィンクス様だからだ!!」
「なるほど、あなたが吸血鬼族の...」
キノと吸血鬼族との関係は少しカイトから聞いていた。詳しいことはまた当人から話すと言っていたので、本当に触りしか聞いていないが、それでも同じ女性として考えさせられるものはあった。
「長話は終わりです。それでは、行きますよ...!」
「上等だ!格の違いを見せてやるよ!」
私は腰に溜めた槍を彼女の体目掛けて放つ。同じ長物同士、敵の間合いの外から突く行動は愚の骨頂。ならば多少恐怖であろうとも、鎌の刃を潜り抜け、懐に潜るのが得策!
「はぁ!」
「見えてんだよ!けっ!随分と弱っちい魔力だなぁ!!」
イラムの額の目はすでに開いていた。未だ両目は閉じられているが、それでも額の目さえ開いていれば空間を把握することが可能なのだろう。
イラムの懐へと潜り込もうとする私の左側から鎌の巻き取るような刃が迫る。私はその刃へ直接相対することはせず無視して、ひたすらイラムの腰元へ飛び込むことを優先する。
「な、貴様!邪魔だぁ!!」
イラムは私が迫る鎌に対応させようとしていたのか、反対の手にはおそらく“極氷魔法”だと思われる魔法を展開させていた。
しかし、私がその対応をせずがむしゃらとも思える行動で突っ込んできたため魔法の発動準備が整っていなかった。
私は右手に持っていた槍を左手に短く持ち替え、取り回しの効くようにする。そして鎌を持つイラムの右手の肩を狙う。
咄嗟に私の狙いに気づいたイラムは力づくで鎌を振るスピードを跳ね上げ私を切り裂こうとする。
もう少しで私の体を上下に選り分けようとする瞬間、勝利を確信したのかイラムの顔が綻んだ。
私はそれを見て徐にイラムの顔の前に親指と中指を持って行き目を閉じる。そして次の瞬間、指を鳴らす要領で“神聖魔法”の中ではお馴染みの光を今できる最大光量で弾けさせる。
「グアァ!!」
昔、吸血鬼族の魔力を見る目は他者や生物の魔力を光として見ていると冒険家の父から聞いたことがあった。光が強ければ強いほど魔力が多く、光が弱ければ弱いほど魔力が少ないというように。
ぶっつけ本番ではあったが、走りながらゆっくりと指先サイズで魔力を圧縮していた。それを今イラムの目の前で光として爆発させたのだ。
「ずっ!...くぁぁあああ!!!」
イラムが突然の光に目を潰されて暴れたため、足に鎌が少し掠りよろめきそうになるが、足の痛みを無視して左手に持った槍をイラムの右肩に突き込む。
「ガァァァァ!!クソがぁ!!」
イラムは槍を刺された痛みで鎌を持っていられず、手から落とす。私はその隙を逃さず続け様に喉、左肩、鳩尾に続けて槍を突き込んだ。
「ガ!グ、グゾ!ガハッ!」
イラムはタタラを踏みながら血反吐を吐く。力が抜けたようで膝から崩れ落ちるが、最後の抵抗なのか倒れ込まずそこで堪えた。そして、ヒューヒューと喉から空気が抜ける音を発しながら必死に私への恨み言を叫ぼうとしていた。
「私にもやらなければいけないことがあるので、先へ進ませていただきます」
「ごろじで...やる」
私は腰の高さにあるイラムの眉間に向けて槍技“牙突”を放った。間も無くイラムの後頭部から膨大な血飛沫が脳漿と共に吹き飛び、そのままゴトッと体ごと倒れ込んだ。
私はしっかりとイラムが死亡したことを確認してキノの元へと戻る。
「キノさん?...よかった、まだ息はしてる。すぐに背中の傷を塞がないと」
私は“咒力特自動回復”で回復する端から使い傷を塞いでいく。あらかた塞がり脇腹の傷も最初ほどはひどい有様ではなくなった。
だが、次の問題点はキノの血量だ。“神聖魔法”は他の魔法よりも治癒に特化させられる魔法が多い方だが、それでも増血の魔法は無い。こればかりは本人の体に頑張って貰うしかないのだ。
それでも出来ることは、と私は自分の指先を少し切ってキノの口へ持っていく。多少なりとも足しになればいいのだが。
今は、“自然魔法”によって生成した熱を含み遮断する葉でキノの体を覆い、外に体温を逃がさないように温める。そして栄養のある樹液を生む木を造り削る端からキノに飲ませていく。
「しばらくはここで休息ですね。でも、キノさんでも苦戦することあるんですね...」
ここまでの道中でキノが苦戦しているところなど初めてみた。それはステータスだけで言えば私たちの中で一番だったからだ。その彼女が苦戦する相手。
私が勝てたのは一重にキノのそれまでの健闘があってこそだろう。ゼブルとの戦いも正直騙し討ちのようなものだ。私には正々堂々の戦いなど勝てる気がしない。
もしかしたらだからこそ普段の言動こそは、と敬語が体に染みついてしまったのかもしれない。
「卑怯で、醜いですね...。自分を正当化するためだなんて...」
「そんなこと...ないよ...」
「キノさん?!目を覚ましたんですか?!」
「うん。でも、まだちょっとしんどいかな...」
「そりゃそうですよ!こんな深い傷なんですから..。私が側にいますからゆっくり寝てください」
「うん、ありがと。あのね、テミスが来てくれてほんとに助かったよ。テミスが来てくれなかったらキノ死んじゃってたと思うから...。だから醜いなんて、卑怯だなんて言わないで」
「ありがとう..ございます....。でも今は傷に触りますから喋らないで」
「あはは、っつぅ...。テミスの敬語も好きだけど、砕けたテミスもかわいいよ?」
「うるさいです...、いえ、うるさいわよ。こんな感じですかね?」
「そうそう、そんな感じ...う、ごほっごほっ!」
「あぁ!キノさん!ごめんなさい、私が付いてますから休んで下さい」
「うん、ありがと。あとでいっぱい話そうね」
「はい...、うん。だから、今はおやすみ」
キノもやはり無理をしていたのだろう。私の声を聞くなりまたスースーと気持ち良さそうな寝息を立て始めた。
「ありがとう、キノさん」
死にかけの怪我人に慰められてどうするんだ、と思わなくもないが、それでも今のキノの言葉は他人の万の言葉よりも自分に染み込んだ。
本当の自分を見つけてくれた、そしてそれを受け入れてくれた。私はまだ本当の意味で心を開けていなかったのに、それを責めることもせず認めてくれたのだ。
今は何よりそれがとても心地よかった。
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名前:テミス・レギド
種族:姚魔族
Lv:716
スキル:颶眼Lv.- 看破Lv.10 神聖魔法Lv.8 自然魔法Lv.10 咒力特自動回復Lv.7 槍聖術Lv.6 突破Lv.8 紫電Lv.6 牙突Lv.1 New連突Lv.1
称号:限界突破者 超越者 飂之眼 観看者 然の寵愛




