第73話. 嵐の前の静けさ
2020年始まりました!
あけましておめでとうございます!皆様は年末年始いかがお過ごしでしょうか!初日の出とか見ましたか?おもち食べて喉に詰まらせないようにね!
さて、新しい年が始まりましたね!今年も小説、YouTube両方とも頑張っていきますので応援のほどよろしくお願いします!
「ボスー、あいつらここに着いたよー。さっさと消す?」
「ククク、ようやくか。いえ、彼らは我が歓待する。残念ながら城は使えぬからね。だが、我らにはもっとパーティ向きの場所があるではないか」
「えぇ、ボスもしかしてあいつらをここに呼ぶの?ボクあんまり野蛮人にここ荒らされたくないんだけど。それに略奪者もいるし!あ!あの略奪者はボクにやらせてね?」
蕩けるような淫靡な声で囁きながら『ボス』と呼ばれた男が腰掛ける椅子の肘掛けにもたれかかる女がいた。
その女は艶やかな亜麻色の髪を肩あたりで切りそろえ、獲物を狙う女豹のように舌舐めずりをする。体は小柄で、どことは言わないが平たくお世辞にもグラマラスとは言い難いにもかかわらず、その仕草は嫌味なほど様になっていた。
「おい、無遠慮に旦那を“魅了”すんな。まぁ貴様のチンケな体では旦那はおろかその辺のネズミでさえドン引きして萎えちまうだろうがな」
大人が10人入れば充分だろう。そんなそこまで広くない部屋の端、椅子に座る『ボス』の対面より少し左の壁に腕を組みつつもたれかかる男がアンバランスな妖艶さを持つ女に食ってかかる。
その男は白に近い灰色をした髪を何で固めているのか全てオールバックで、右耳にはピアスをつけている。さらに何かの魔物であろう薄い皮製のコートの下にはここぞとばかりに主張する鋼のような肉体があった。
「あぁ?ボスほどいい男を“魅了”しないでいられるわけねぇだろうが。それにこの体の良さを知らねぇとはとんだオコチャマだなぁ!肉体ばっかに目をやって本物のテクってやつを知らねぇチェリーは黙ってろ!」
「んだと?!何がテクだよ!てめぇこそそんなまな板じゃ挟めもしねぇだろうが!夢みがちなお嬢さんが出来もしねぇことで粋がってんじゃねぇよ!」
「はぁ...。ボス、そういえばいつも側におられるはずの彼がいませんが、何処へ?」
鋼の男と淫靡な女がぎゃあぎゃあと姦しく口喧嘩をしている隙に『ボス』へと歩み寄る男は、さらさらと流れる銀色の髪に銀色の瞳をしたセキアルだった。
「クク、彼にも休暇は必要だからね。街へ出ているよ。それについでに『客』の様子も見てきてくれと頼んであるんだ。さて、どんな土産話を持ってきてくれるかな」
彼の呟きは未だ姦しく騒ぐ声に掻き消された。だが、隣に立つセキアルにはっきりと聞こえた。あの日、自分の直感が告げたことは確かに現実になろうとしている。
果たしてこの結末はどこへと向かうのか。望む結末を迎えるためにはどうすれば良いか。抱える感情は皆それぞれ、だが、目的は一つ。ただ『ボス』の野望のため。
セキアルは彼らをその礎とすることを心の中で改めて強く誓った。
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結局、昨日は深夜まではしゃいでいたが、いい加減眠くなっていたテミスに半ば無理やりキノとミユは元の部屋へと連れ戻されていた。そして、テミスはそのままバタンキューしたらしく最終的に俺はサニアと寝ることになっていた。
「サニアー、朝だぞー。飯食いに行くぞー」
俺はサニアの頭を撫でながら揺すり起こす。するとまだ何か夢でもみているのか、器用に俺の指を掴んで咥えてしまった。
「..............はむ」
「おいおい、俺の指を食べるなよ、可愛いな。でも、それは食べ物じゃないからだからおねがいかまないでいたいちぎれる!」
「おし、そしたら飯行くか。何か食べたいのはあるか?」
俺はまだ若干ヒリヒリする指をさすりつつみんなを集めて、未だ眠たそうなキノとサニアを支える2人に朝何が食べたいかを聞いた。
「まだこの街の名産とかが分からないですから、目についた所にしましょう。おそらく知っているはずのキノさんがこの有様ですし」
「そうだな、さすがに店の飯はあのアメリカンフードじゃないことを祈るよ」
そう一人ゴチてみたが、これには2人も納得してくれた。流石に朝からあんな重たいものは食べられない。また、昨日食べられなかったポテトとナゲット、名前は『ポティトゥ』と『ネゲッ』なら量を調節して食べることも可能だろうが、懸念するところは地球と違って油が重たいところ。
日本で言うゴマ油のように木の実を挽いて油を抽出しているらしいのだが、俺たちが食べてきたものがこの世界にとっては高級品だからか、それともその油の品質が悪いのかはわからないがとにかく重たくて仕方がないのだ。
まぁ店にも行っていないうちからウンウン言っても仕方がない。まずは腹ごしらえからだ。
基本的には祭りの最中ということもあってか大通りには屋台が立ち並び、店は一律閉めてある。というのもその店が出店として自分の店の前に屋台を立てているのだ。
なので食べ歩きとしては充分なのだが、腰を落ち着けて食事をしたいとなると大通りはまず論外。そのため少し脇道を逸れて探しているととても目を引く看板があった。
それは俺たちの世界でいうところのサンドイッチ。
昨日売っていたヘンベルゲと違うところはどうやら挟んでいるパンがそもそも違うらしい。前にも言ったが、レツァーは腹持ちを考えて割と重め。
対してこのなんちゃってサンドイッチのパンは材料こそレツァーと同じものの、粉の量を少なくしてさらにこねる時に空気を多く含ませることで、軽い柔らかなパンが出来上がったらしい。
それをここの店の店員さんに聞いた俺とミユは迷うことなくサンドイッチを選択、その存在を知らなかった他の3人も流れに乗じてサンドイッチを頼んだ。
結果、味だけならとても良かったと言っておこう。
腹ごしらえを済ませた俺たちは昨日に引き続き、朝からはしゃいで踊りまくる街人たちに混ざる勇気が湧かず歩いていると目の前に大きな噴水が顔を出した。
どうやらこの噴水はこのアンバスの小さな観光名所のようで結構な人だかりができていた。ただ、ここは一番祭りの色が盛んな大通りに続いているため、そちらへどんどん人が流れる。
そのため特に暑苦しさを感じることもないので、俺たちはそばのベンチで休むことにした。
「最近、ここまで平和な日が無かったからなんか変な気分」
「確かにな。少なくともあいつに呼ばれた以上何かしらの出来事があってもおかしくないと思ったんだが、それも全く無いしなぁ」
「そうですね、何もなさすぎて不気味なくらいですよ。あの【強欲】が呼んだだけで何もしてこないはずないのに...」
そうだよな、だって見るからに腹に一物も二物も抱えてますって感じだったもんな。正直、違和感どころか恐怖心すら芽生えそうなほど平和なのだ。だが、こういうのは嵐の前の静けさとも言うわけで...。
「Excuse me.タノシンデマスカ?」
「は?」
「?Excuse me?Can you speak English or Japanese?」
いきなり聞き覚えのある言語が聞こえたので振り返るとそこには金髪の男がこちらを見て立っていた。髪は肩下まであり前髪はセンター分けにされている。
目も切れ長で見る者に鋭い印象を与えるが、口角の上がった口によってか決してキツくはなく、バランスの良い整った顔立ちをしていた。
背は俺より10センチほど高いだろうか、彼は服を一枚だけ着ていたが、そのためか隠しきれない胸筋が浮かび上がっていた。
「ぇ、待って、何で英語が聞こえるんだ?」
「You don’t speak English?huuu....!!アナタハスシデスカ?!」
「ま、待て待て待て。wait wait wait!」
「Oh!You speak English!@¥&(“)&:&/??¥-)-&;&(@))/;-)!!;)1);¥(¥;¥/?!(-(-;-(:&;”」
ちょっと待て、いきなり英語で話しかけられた時はびっくりしたが、まだギリギリなに喋ってるかは分かった。だけど今はもう完全に何喋ってるか分からん。
それに一回なんか変な日本語喋ったよな?
「Stop!Stop stop.Ok?なぁミユ、英語喋れるか?」
「いや、全然。一番嫌いな教科だった...」
「マジか...、俺もなんだよな...」
いきなりマシンガントークをぶっ放してきた外国人は、俺の思いの外大きかったStopの声に驚いて固まっている。だが、もっと固まってしまっている者がいる。後ろの3人だ。
「え、ねぇカイト。何、何喋ってるの?ちょっと怖いんだけど...」
「あー、えっとー。俺もあんまり状況飲み込めてないんだけど、まず今こいつが喋ってたのって俺たちの世界にあった言葉なんだよ。それも俺とミユがいたところとは別の国の」
「へ、へぇ...。そう、そうなんだ、すごいねぇ...」
おぉう、あのキノがドン引きしてるぞ。珍しい。そういや、こっちでは国が違うからと言っても言語が違うことはないからな。
まぁ地球でも日本は周りが海だったから近隣諸国は違う言語になっているだけで、ヨーロッパとかだと隣接する国ではほぼ似たような言語だと言うのは聞いたことがあるからな。そんな感じなんだろう。
というよりも先にこいつの名前からだ。自己紹介も何もしていないまま、よく分からない状況になってしまっている。それに不本意だが、一番最初にこいつの話したのは俺だから、なんか率先して俺が話さないといけないような流れになってるな...。
まぁやれるだけやってみるか。
「Sorry. What your name?」
「Oh!My name is jean. jean laths.Thank you.」
「オォ、センキュー!マイネームイズカイト!」
「Oh KAITO!-¥:&(@/!!¥/¥;&(&)(-;-(:€\*<\}[>?」
「ストップ!ソーリーアイドントノースピークイングリッシュ」
「Oh スシデスカ...」
だからなんだ。そのスシデスカって...。さっきも言ってたよな?
...あ!てかこいつもこっちの世界にいるんだったらこっちの言葉で喋ればいいんじゃないか?!
これは試す価値ありそうだな。
「ジーン・レイスって言ってたっけ?こっちの言葉は分かるか?」
「おお!ようやく話が通じたな!いやぁ一時はどうなるかと思ったよ!」
上手く行った!やはりこっちの言葉なら通じるらしい。自らをジーンと名乗った男はようやくまともに話が通じたことが嬉しかったのか俺と握手をして抱きしめてくる。
キノたちもやっと自分たちの分かる言葉で話し出したことで会話に混ざることができた上、ジーンのコミュ力の高さもあってかすぐに俺たちに馴染んでいた。
........待て、キノが見えているのか?
俺たちは一旦落ち着いた場所で話そうということになり、彼の行きつけの店に行くことになったのだが、俺の中でこの男に対する警戒レベルが上がった。
その店の名は[コロンブス]。
行きつけというだけあってか席にはすぐにつけた。というかもうここまでアメリカ推しなら大体の想像はつく。
「やっと落ち着いて話が出来るね!改めて、拙者の名前はジーンと申す!よろしくでござる!」
「日本好きはわかったから普通に喋ってくれ。俺の名前はカイト、狐の獣人がサニア、魔族の2人でこっちがキノ、こっちがテミス、そして人間のミユだ」
「おお!みんなよろしくね!でも、拙者これが普通でござる」
嘘つけや。さっきまで普通に喋ってただろうが。
とりあえず簡単な自己紹介をして雑談をした後、俺は気になっていたことを切り出した。
「それでジーン、何で俺たちに声をかけたんだ?」
「ん?たまたまだよ!近くに話しかけられそうな人がいたから話しかけたのさ!」
へぇ、この期に及んで誤魔化すか。俺はもう最初ほどこいつと仲良くなる気は無い。
「ほぅ。もし、そうだとしたら最初から英語で話すか?この店のといい、これだけの馴染み様だ。お前もこっちに来てからそう短くはないだろ。ならこの世界の人たちに英語が通じないことくらいわかるはずだ」
今思い返せばあのさまざまなもどきグルメは全て、俺たちが知っているその商品に似たような名前だった。おそらくこの世界の人たちが、彼からあの単語を聞き取った際にそう聞こえたということだろう。
「なのにお前は俺たちに最初から英語で話しかけてきた。さらにこの店の名前はコロンブス、アメリカに由緒ある人物の名前だ。ここまでわざとらしいアメリカ推しをしてまだたまたまなんて言うか?」
さらに言ってはいないが、キノが見えていることも疑う原因だったりする。まだこいつは視ていないが、これまでの街の住民たちは前のイントやナヤバとそう変わらず、超越なんてしているやつを見たことがない。
さらにその超越をしているやつでも特定のスキルを持ってなければ見つけることすら不可能なのだ。その彼女を何の苦もなく見つけるどころか会話まで出来ている。
「..........ふぅ。ようやく気づいたか!って言いたいけど最初から知ってたんだねー。言ってくれたら良かったのにー」
ジーンは手に持っていたカップをテーブルに置き両手を頭の後ろに持っていく。
「はは!降参だ!オッケー、ちゃんと話すからそんなに睨まないでよ。大きく言えば同じ故郷の人間同士だろ?」
それは広く取りすぎだ。と言ってやりたかったが、口が開かない。場はもう完全に彼に支配されていた。何が降参だ、だよ。めちゃくちゃ“威圧”してきやがって。
「まぁ時間はあるわけだし拙者の身の上話でも聞いてくれよ。あれは今から3年前のことだった...」
「そういうのいいから。俺たちに接触した理由を教えてくれ」
「えー、なんだよつまんないなぁ。分かったよー、シスが街の端にあるダンジョンに来いってさー。そこでパーティしようってさー。はい伝えたよー」
やはり【強欲】の臣下か!そうと分かればもう“鑑定”を渋る理由もない
名前:ジーン・レイス
種族:聖人族
Lv:鑑定できません
スキル:鑑定できません
称号:異世界人
「拙者の話聞いてくれなかったからまだ見せませんよー。聞いてくれてたら見せてあげたのに」
「ちっ。聞いてやるから、ほら話せ」
「そんな風に言われても話したくないですー」
完全にいじけてしまった。だが、“看破”出来なかったらのは痛いな。あの真っ白野郎以外に視えないやつがいるとは思わなかった。早とちりせず聞いておくべきだったか。
いや、最初から聞いていたとしても見せてはくれなかったかもしれないんだ。今考えても仕方がない。
「じゃあさっきの話を詳しく聞かせろ。街の端と言われてもどこか分からん、それにダンジョンだって?あれは自然発生のものだろ。俺たちに魔物と戦わせようってのか?」
「違うよ、今拙者たちがいるのは疑似ダンジョン。コアを作ったのさ。だから普通のダンジョンのように魔物は現れない。
ただ、外に棲む魔物が宿代わりに入ってることがあるから必ずしもいないとは限らないけどね。それとダンジョンの場所だけど、北門は分かるかい?
そこの近くに地下へと続く倉庫がある。そこから行けるよ。後は自分で探させろってさ」
北門か、俺たちが入ってきたのが東門だからそう遠くは無いはずだ。だが、入口は自分で探せと。呼んでおきながら最後まで案内しないとは、と思わなくもないが、これ以上はこいつも喋ってはくれまい。
「それじゃ伝えることは伝えたよ。せめてもの気持ちだ、ここは拙者が払っとくよ。それじゃまたね」
そう言って席を立ったジーンは店員と少し喋ったあと店を出て行ってしまった。
「ねぇ、カイトくん。絶対に罠だよ。ずっとそのダンジョンに行かなければ焦れて出てきたりしないかな?」
「どうだろうな、出てくる可能性もあるにはあるし、罠の可能性も高い。うーん...」
「カイトさん、彼の言うことには彼ら【強欲】一派はダンジョンの中にいるようですし、一度その倉庫を探してみるというのはどうでしょう?」
「なるほどな、入りはせずとも場所だけでもってわけか」
「はい、それならばもし焦れて出てきたとしても、その場所を警戒していれば不意打ちなどを受ける心配も無くなりますし、それにそもそも行くとしても見つけていきなりと言うわけには行きませんし」
「そうだな、そうするか。なら明日その倉庫探しをして、今日はアイテムとかを買いに行くか」
「そうね、備えあれば憂いなしとも言うしね」
今後の方針は決まった。ならあとは【強欲】をぶっ飛ばすだけだ。




