第72話. アンバスの街
プロットはあるけどついにストックが切れました...。
しばらくは食らいついて書いて行きますが、もし間に合わなければ罵ってください...。
「おーデカイ街だな!」
今俺の眼下には石畳で覆われ、整然と揃えられた建物が並ぶ街があった。『街』と言うだけあって眺めているだけにもかかわらず、結構な人口がいることが分かる。
“千里眼”を使って見ているが、広い大通りのようなところを所狭しと人が行き交っており、彼らを引きつけようと並べられた屋台は、今この街で大きな催しを行っていると言われても納得できるほどだった。
「ここからだったら今日中にはアンバスに着くよ!早くいこ!」
そう良いつつキノは子供のようにはしゃいで山道を走り降りていく。
今、俺たちは山を越えた後の中腹あたりで、木々の間に見晴らしがいい場所があったので覗いてみたら真正面にアンバスの街があったのだ。
景色もよく、日も少し前に真上を通り過ぎたので眩しすぎず、ちょうどよくアンバスを見つけられた。まぁその中に一際目立った城も目に入ったのだが。
「なぁキノ、そういやアンバスって中立じゃないのか?なんであんなにでかい城があるんだよ。てかどこでも城あるな。町に一個は城作らないとダメとかあるのか?」
町としてはセキアルやガイロのところよりも少し小規模だが、レドックも町という体ではあった。だが、あそこには城らしい城は無かったのだ。
「あぁ、アンバスは中立とは言ったけど、実質【強欲】が支配してるのも確かだからねぇ。名目は来賓用ってことらしいよ。あそこはこのあたりで一番大きい街だから色々物の流通とかも充実してるんだよね。だからいろんな人が来るし、いろんなことに使われるんだ〜」
「...そういや前にも似たようなこと聞いたな。まぁ今まで見た中で2番目に大きいしなー」
ちなみに一番はカイニスの城下だ。
あそこは本当に広かった。1年いて、割と頻繁に街には行っていたが、それでも回りきれなかった。
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「君たちはどういった目的でアンバスへ?」
「観光です」
「ふむ、では通行料1人銅貨10枚だ。払えるか?」
「了解」
日も沈みかけ、俺の目の前にある人間が10人で肩車してやっと届くくらい高い壁と扉は、まるで資格なきものは通さぬとでも言いそうなくらい威圧感に満ちている。
俺たちは全員分の通行料を払い、開けられた門の中へと入った。
その景色はまさに圧巻だった。ここまでの人間がいるところへ足を運んだのは、日本にいた時に修学旅行で大阪に行った時くらいだ。
実際にはそこまでの数はいないのだろうが、久しぶりにこんな数の人を見た。びっくりしたせいか内心ちょっとドキドキしている。
「わぁー!すごい人いっぱい!なんか東京行った時みたい!」
「トーキョー?何それミユ?!」
「あ、えっとね...」
すぐさま新しいものに飛びつくキノがミユに詰め寄る。それを微笑ましそうに眺めるテミスとさっそく屋台の物色をしているサニア。俺もミユと同じようなことを考えていたせいかとても驚いた。ミユの場合は東京だったけどな。
「サニア、なんか欲しいものあるか?」
「ん、...あれ食べたい......」
「おっけ、テミスたちも何か食べるか?」
「そうですね、流石に少し小腹が空きました。食べ歩けるものでも買って宿を探しましょう」
「キノあれ食べたい!レツァーになんか細長い肉の棒が挟まってるやつ!」
「おっけー、ミユとテミスは?」
「では、私はあの串に大きいのが刺さったものを下さい」
「え?!カイトくん!あれホットドッグとアメリカンドッグじゃない?!なんであるの?!」
そうなのだ。ちなみにサニアが食べたいと言ってたものはまんまハンバーガーだった。どれもこれも名前は違うが見た目は日本にいたこと頃に見たものそのもの。
ホットドッグもどきは『ヘッデグー』、アメリカンドッグは『エメリケーデグー』、ハンバーガーは『ヘンベルゲ』。
さらに見渡してみれば、あの大人気ファストフード店にもあるポテトやナゲットまで売っている。まぁもちろん素材は違うのだろうが、見た目はそのままだった。
「なんだ?日本人でもいるのか?それにしては日本ぽいものが全くない。でも流石にこれは偶然で済ませていいものか?」
疑問に思いながらも本場の味を知っている俺とミユも試しにハンバーガーもどきのヘンベルゲを食べてみる。
「うーん、バンズはレツァーだな。で、肉はまぁ美味しいけどレタス?とトマト?は微妙だなぁ」
「そうね、なんかあと一歩にも届かない感じ。我慢すれば食べられるけど、満足は出来ないわね」
日本出身の俺たちは綺麗に意見がまとまった。それに反して、こういったものをおそらく初めて食べるであろう3人はというと...。
「うまー!カイト!すごい美味しいよこれ!食べてみて!絶対ハマるから!」
「これはなかなかクセになりますね、ただ一個で充分かもしれないです...」
「ハムハムハムハムハム.......」
もれなく好評だった。なんならサニアにいたっては俺とミユの残した分も含めてこの短時間で4つも食べていた。
「こらこらサニア!それ以上食べると夜ご飯食べられなくなるから!おしまい!」
「主さま......?!?!?!?!」
なんと5個めに手をつけようとしていたサニアからヘンベルゲを取り上げて、“無限倉庫”に仕舞う。
この世の終わりみたいな顔をしていたが、ダメなものはダメ。その理由は...。
ーー太る。
そばでミユがテミス達に食べすぎてはダメな理由を挙げていくたびに3人の顔が恐怖に染まる。赤い顔からどんどん青を通り越して白になる姿は面白くもあったが、彼女たちも名誉のためにも言及は避けよう。
さて、彼女たちの機嫌も治ったことだし本格的に宿探しとなったわけだが、不運なことにどこも満室だった。確かに5人入る大部屋がなかなか無いのは分かっていたが、数人で分けて部屋を借りることも難しそうなのだ。
その理由もしばらく街を歩いているうちに聞こえてきた。
なんと、本当に今お祭りを行っているらしい。この年はアンバスの街が興ってから50年が経つそうで、ちょうど今の時期に正式に街として機能した日らしいのだ。
そういったこともあって街を上げてお祭り騒ぎ。さらにここまで大きな街だからか近隣からも観光客が増える。結果、最初の人混みに繋がるというわけだ。
あれから小一時間ほど宿を探し続け、裏路地のそのまた裏路地に入ってようやく見つけた宿の部屋に俺は寝転がっていた。
裏路地だったからかそんなに綺麗な宿ではなく、寂れた感じもギリギリ我慢できる程度。当然、大部屋はなく、2つの部屋を借りた。振り分けはジャンケンで決められ、キノとミユ、俺とサニアとテミスとなった。
さらにこの宿は食堂が付いておらず、逐一外に食べに行かないといけない。だが、運がいいのか悪いのか。俺とミユ以外は屋台でたらふく食べていたし、なんなら歩き回りながら俺たちもちょくちょく食べていたのでそこまでお腹が空いているわけでもなかった。
そして外ももう暗くなり、出歩く人の年齢層が高くなって昼には点かない灯りが点き始めたので、潔く部屋でのんびりしているというわけだ。
「カイトさん、【強欲】は何を企んでいるのでしょうか?」
「分からん。あいつがここに呼んだわけだけど、ここはお祭り騒ぎなことわかってたはずだ。こんな状態なら戦うにもやりにくいはずなんだが...」
「私もそう思います。この街には闘技場もありますが、祭りに際してそこで催しもあるとか。もしかすると...」
「だとしても、もうエントリー終わってるんだろ?」
「はい...」
そう、どうやら今回の祭りは街おこしの際に守り神として讃えた名も知らぬ神(名前は誰も教えてくれなかった)に祈りを捧げるためとして、闘技大会を開くらしい。
ただ、これのエントリーは終わっている。だからここで【強欲】と戦うみたいなことは無いだろうし、何よりあいつが衆人監視の前で自分の力をひけらかすとは思えない。
では、この街で俺たちに何をさせたいのか、あるいは何を狙っているのか。それが全く見えてこず、頭の中で堂々巡りをしていた。
「さて、どうするかねー」
誰に向けるでもなく呟いたその時勢いよく扉が開かれた。
「あっそびに来たよー!」
「止められなかったよ、カイトくん...」
まるで遠足気分のキノと疲れた顔をしつつも若干楽しそうなミユが部屋に入ってきた。
あぁ、また今日も眠れなさそうだ。
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