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黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
第1章
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第7話 初めての安全な夜

「えーっと……これ全部今日で狩って来たんですか?」


 俺はティサネさんに今日の成果を渡して換金してもらおうと思って、ギルドに来ていた。


「あぁ、追加報酬が貰えると言っていたから頑張って狩って来たんだが、なにか不味かっただろうか?」

「いえ!そういう訳では無いんです。無いんですが……ただあまりにも量が多かったもので」


 俺が今日狩ってきたゴブリンとコボルトはそれぞれ約100匹程だ。あの程度の魔物であればもっと数を狩って来ることも出来たのだが……。


「そうか。まぁとりあえずいくらになるだろうか?」

「あ、はい!基本報酬の銅貨10枚と追加報酬の1匹につき銅貨1枚なので、合計銀貨2枚と銅貨23枚になります!」


 おっとそうだ、ここでこの世界のお金の基準のことだが、まず、銅貨が1番安くこれが100枚集まると銀貨1枚と同じ値段になる。


 そして銀貨が100枚集まると金貨が1枚、金貨が100枚で白金貨1枚となっている。まぁよくある分かりやすいやつだ。


 また、冒険者1人が1日過ごすには、銅貨1枚あれば何とか最低限の生活は営めるという事だ。そのため、このゴブリンとコボルトを5匹倒すと、最低限の暮らしはすることが出来る。


 だが、それだけしていても宿に泊まるにはまた別に金が必要だし、武器の手入れやアイテムなども必要となるため、最低1日に銀貨1枚は稼いでおきたいところである。


 なので今回の稼ぎは初期投資にしてはまだ足りないが、ある程度余裕のある生活ができるという事だな。


「ありがとう。また明日来るよ」

「はい!お待ちしてますね!」


 金を貰い、ギルドを出ると外はもう真っ暗だった。ここからは夜の住人達の時間だ。飲みに行く冒険者たちやご飯を食べに行くカップル、娼館にいく男どもやそいつらを誘う娼婦達など昼とは真逆の世界になっていた。


 俺はごった返す人の群れをかき分け、今日泊まる宿を探す。すると、一つ俺の目を引く宿を見つけた。[羊の沼亭]というようだ。気になった俺はその宿に泊まることに決めた。


 その宿に入るといかにも女将さんという雰囲気を持った女性がカウンターにいた。


「すいません。部屋空いてますか?」

「いらっしゃい!空いてるよ!おひとりさんかい?」

「はい、1人です」

「飯はどうする?素泊まりだと銅貨5枚、飯付きは銅貨7枚、体拭いたりするんなら銅貨10枚だね」

「全部つけてください」


 さすがに風呂などはないか。もともと予想はしていたから大丈夫だが、ちょっと期待はしていたんだけどな。それでもいい加減、体が気持ち悪いので、遠慮なく使わせてもらう。


「全部ね、了解。飯は隣の食堂で食べとくれ。10の時間までしか出てないからそれを過ぎたら出せないよ」


 それを聞いて俺はどんな料理が出てくるのか期待を膨らませる。


 俺はずっと、自分で狩った魔物の肉を焼いて食っていただけなので、この世界の料理がどんなものなのかをまだ知らない。ちなみにこの世界にも時計の概念は存在している。


 町の中心にある時計台から、12の時に鐘がなるようになっている。ほかの人々はだいたいこの鐘で時間を把握しているようだ。だが、彼らは時間がそれほど身近では無い上に、時計自体もあまり普及していないため、時間に正確という訳では無いらしい。


「わかりました」

「それじゃこれが部屋の鍵、そこの階段を上がって1番奥の部屋だね」

「ありがとうございます。お世話になります」


 そう言って俺は、カウンターの左側にある階段を上り部屋に入る。そして、そのままベッドに飛び込んだ。しかし、ホテルのようにスプリングでは無かったため、顔面を強打してしまった。


「痛い、木じゃんか。とりあえず飯食いに行くか、腹が減った」


 俺は特に荷物を持っていた訳でもないため、部屋の様子を確認した後、すぐに階段を降り、食堂に入った。


「あ、いらっしゃいませ!どこでも好きな席にどーぞ!」


 食堂には、あの女将さんの娘なのかとてもかわいい娘が給仕をしていた。


「こちらメニューです!おすすめはオーク肉のシチューですよ!」

「じゃあおすすめをもらおうかな」

「ご注文ありがとうございます!お父さーん!シチュー1つ追加でー!」


 そう呼び掛けながら、奥の厨房へと彼女は駆けて言った。おそらく家族ぐるみで宿を経営しているのだろう。周りを見回すと見事に男しかいない。しかも、その全員の視線は給仕の彼女に向いている。


「確かにかわいいもんな。しかも気も良さそうだし」


 周りの男と同じくぼーっと彼女を眺めていると俺のところにもシチューが届いた。


「お待たせしました!オーク肉のシチューです!」


 おお!とても美味そうだ。早速頂こう。


 ——美味い……これが家庭の味と言うやつなのか。体が解けていきそうだ。


「美味しいな、たくさん客がいるのがよく分かるよ」

「ありがとうございます!うちのシチューは世界一美味しいですから!それではゆっくりしていってくださいね!」


 そうして彼女はまた給仕に戻って行った。俺も早く次のひとくちを食べたくて仕方がない。今度はオーク肉を食べてみよう。


 煮込まれた肉はここまで柔らかくなるものなのか。焼いただけのオーク肉を食べたことがないから、元から柔らかい可能性があるが、スープの旨みを吸っているのに、肉の旨みが逃げていない。


 なのに、肉は舌で潰せるほど柔らかい。そして、野菜もとても柔らかく煮込まれていて、野菜の甘みがスープに滲み出ている。ここまで美味しいシチューは初めてだった。


 ここの宿にして良かった。飯が美味いだけで、とても人生得している気分になれる。


 気づいたらシチューは全てなくなってしまっていた。



「あぁ、幸せな時間は過ぎるのが早い……」


 俺は席を立ち、彼女にごちそうさまと一言言って、部屋に戻った。




 さて、じゃあ早速今日の振り返りをしよう。今日得たスキルで新しいものは2つだけだ。


 それにいい宿を見つけたことだし、金にも余裕が出てきたので、明日はギルドカードを貰ってゴブリン達がいた所よりももう少し奥に行ってみよう。もしかしたら有用なスキルを持っているものがいるかもしれない。



 スキル:繁殖 自分の種族の種を他種族の異性に植え付けやすくなる。


 スキル:繁栄 自分の種族の種を他種族の異性に確実に植え付けることが出来、同種族の場合種の数を飛躍的に伸ばすことができる。



 いかにもゴブリンらしいスキルだな。“繁殖”はそのままだが、“繁栄”は、このスキルを持っている者がいる限り、自分は他種族の女性を確実に孕ませることが出来、同種族だと、普通よりも強い個体が生まれやすいようだ。


 やはりスキルは進化すると、あまり実用性のなさそうなスキルも、飛躍的に強くなる傾向がある。


 これはどのスキルも進化させていくのが楽しみになるな。でも、まず目下の目標は武術系スキルと魔術系スキルを全て集めることだな。


 あとはアイテムボックス系のスキルが欲しい。今はまだ刀しか持っていないし、回復系のスキルがあると言っても、万が一の時のためにポーションなどを持っておきたい。


 だが、リュックなどだと戦闘の時に邪魔なので、もしそういったスキルがあるのなら早めに取っておきたいな。


 あとは鎧。きっと装備した方がいいのだろうが、今はまだいいかな。俺の戦闘スタイルは“偽装”で隠れて背後から襲うタイプなので、体が重いと動きづらくなる恐れがあるのだ。


 そのため魔法師とは少し違うかもしれないが、ローブ系ならいいかもしれない。うん、鎧系はおいおい考えよう。それに森にいる間に割と慣れたが、宿ということもあって気を張らずに眠れるというのは魅力的だ。そろそろ瞼も重くなってきたし、これに逆らわず眠るとするか。

名前:日向 海斗

種族:人間

年齢:18

Lv:61

ステータス:体力903

魔力976

攻撃597

防御603

敏捷624

知力651

スキル:簒奪Lv.- 鑑定Lv.4 超嗅覚Lv.2 偽装Lv.1 暗黒魔法Lv.1 噛み砕くLv.3 気配感知Lv.7 身代わりLv.3 統率Lv.4 器用Lv.6 集団行動Lv.5 槍術Lv.4 剣術Lv.6 体臭遮断Lv.9 火魔法Lv.3 水魔法Lv.5 風魔法Lv.8 土魔法Lv.3 樹魔法Lv.4 弓術Lv.4 幻惑Lv.4 融体Lv.3 遠視Lv.4 鋼化Lv.5 俊敏Lv.3火耐性Lv.2 水耐性Lv.2 風耐性Lv.1 土耐性Lv.3 樹耐性Lv.3 光耐性Lv.2 闇耐性Lv.2 毒耐性Lv.3 麻痺耐性Lv.5 夜目Lv.3 体力自動回復Lv.7 自己再生Lv.6 斧術Lv.2 魔力自動回復Lv.5 物理透過Lv.6 死霊作製Lv.8 闘術Lv.1 繁栄Lv.1

称号:簒奪者 強者食い

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