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黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
第5章

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幕間〜あれから日本では〜

今日もう一本上げます!ぜひどうぞー!

 ーー昨日未明、◯◯県◯◯市にて交通事故が発生致しました。しかし、現場には半壊したトラックの他に、被害者の物と思われる大量の血痕と数冊の教本や筆記具が入ったカバンが残っていましたが、遺体だけが消えていたとのことです。


 これを受けて、警察は被害者をK大学の生徒と見て取り調べを行なっています。そしてこの不可解な事件の解明のため、目下被害者の方を捜索中とのことでーー。


「1限終わったぁー!あ!ねぇねぇ!ショウ!今日のニュース見た?!昨日この辺で交通事故あったんだって!」

「あぁノゾミおはよ、見たよー見た見た。こんな近くで事故って起こるもんなんだな。しかもそこら中に血が飛び散ってんのに被害者の体ねぇんだろ?キモいよなぁ」

「これは事件の匂いがプンプンするわね...」

「当たり前だろ、カナ。トラックと衝突して血が飛び散ってんのに運転手軽傷なんだぜ?案外被害者も生きててどっか行ったんじゃね?」

「ショウは夢無いなぁ...。そんなんじゃモテないぞー」

「良いんだよ、もう俺にはハナコっつう可愛い彼女いるからー」

「うわぁ...、出たよ出た出た彼女自慢。その癖全然写真見せてくんないしー」

「てかさカナー。カイトはまだ来てないの?」

「うーん、さっきからLONEはしてるんだけど全然既読付かないんだよねー。てか昨日からずっと」

「俺にも付かないんだよなぁ。あの事故あったのあいつの家の近くだからさ、ちょい心配なんだけど」

「まじか!ねぇ、今日大学終わったらちょっと家見にいく?もしかしたら携帯見れないくらい風邪引いてるかも」

「かもなー、行ってみるか。今日カナバイトは?」

「今日は無いよ!だからうちもいける!なんだったらなんか差し入れ持ってく?」

「そだなー、なんか消化に良いもんって言ったらやっぱお粥か?」

「いや、普通にりんごでいいと思うよ。あいつお粥とかの柔らかいご飯嫌いだし」

「あーそういやそうだったな。んじゃあそうするか。今日みんな何限まで?」

「あたしあと2限で終わりー」

「うちは3限まである...」

「俺も3限まであるから、じゃあその後だな。そしたらノゾミは学校で待ってろ」

「あいあいー」

「そんじゃ、教室行くかー」

「そだねー」

「行ってらっしゃーい」

「カナは2限は無いのか?」

「うん、1限と3限なんだよねー...。なんでこんな変な授業の取り方したんだろ...」

「それはもうドンマイだわ、んじゃ」

「はーい」


 それから1人になったカナはスマホで何気なく昨日のニュースの記事をスライドさせて読んでいく。


「ほんとに大丈夫だよね、カイト...」





「終わったーー!!おっしゃ自由だー!!」

「明日も学校あんのに何はしゃいでんだよノゾミ」

「だって今日バイトも無いんだよ?!これではしゃがなくていつはしゃぐのさ!」

「そーだ!差し入れついでにお酒も買っていこうよ!」

「おー!それはいい考えだな、カナ!酒飲めば風邪なんか治るだろ」

「うわぁ出た出た。ザル野郎どもの酒頭」

「ノゾミが弱すぎんだよ」

「うち野郎じゃないんですけどー」


 そんな風に駄弁りながら歩いていると徐々にテレビの中でしかあまり見ない黄色いテープが見えてきた。


 この場所は大学の近くの住宅街の上、大通りから外れているということもあってか、道が少し狭い。だから曲がり角の近くまで来ないと車が来ているか分かりにくいのだ。


 それもあって昨日事故が発生したのだろう。警察は聞き取り調査の結果、事故が発生した時刻にトラックと被害者以外の目撃者がいなかったため、この事故の重要参考人として一旦、トラックの運転手を連行したらしい。


「ここだね、昨日事故あったの」

「やっぱ人めっちゃいるな。しかもうちの学生ばっかじゃねぇか」

「まぁ近くでこんなことになったらやっぱり気になるよねー。...うわぁ、本物の血がまだある...。おぇ...、あたし無理...」

「じゃあ見るなよ。カナは案外大丈夫そうだな」

「...いや、正直、あんまり大丈夫じゃないよ。行こ、見てて気持ちいいものじゃないし」

「そだな。こっちから回っていくか」

「おぇぇ...。吐きそう...」

「お前ここで吐くなよ?!吐くならカイトの家で吐け!!」

「それはカイトが可愛そうじゃない?!」


 うちらは出来るだけ事件現場を見ないようにしつつその側を通り抜け、カイトの家へと向かった。


「やっと着いたー。吐きそうなのになんで階段登らせるかなぁ...うぇ」

「あと少しだからまじで吐くなよ?!」

「だからそれはカイトが可愛そうだって!」


 そんな風にいつもカイトの家で集まる時のようにはしゃぎながら階段を登る。


「入るよー」

「ういっすー」

「ねぇ、吐いていい?」


 もう気心の知れた仲だ。わざわざインターホンを鳴らさずとも家に入る許可は貰っている。


「あれ、カイトー?」

「何してんだよ、早く入れって入り口狭いんだから」

「え、うん。でもカイトいないっぽい...」

「うぇ...、トイレ行きたい」

「おら!さっさと行ってこい!」

「ちょ!押すな..うぷっ」


 ノゾミはトイレへ駆け込む。その横でうちは人気の全くしないこの部屋を見て急に不安が押し寄せてくる。


「ねぇ!カイト?!いないの?!入るよ?!」


 そうは言うものの、なぜかうちは入り慣れたはずのカイトの部屋へ足を踏み出すことができない。


「...おい、カナ。何してんだよ、早く入れよ」

「わかってるよ!でもなんか足が動かないの!」

「なんだよそれ。なら俺が入るぞ」


 ねぇカイト、嘘だよね?


「おーい!カイト!...マジでいねぇ。でも、ベッドに隠れてたって...って、いねぇ...。どういうことだよ...」


 ねぇ、嘘って言って出てきてよ。


「カイト!どこに隠れてんだよ〜!お前どうせ風邪で休んでたんだろ!バカだもんな!」


 早くっ...。お願いだからっ...。


「ちっ!風呂場にもいねぇ。コンビニにでも行ってんのか?でも鍵開けっぱだったしな...」


 やだ、やだよ!


「コンビニなら入れ違いになるかも知れねぇし、待ってるか。おい、早く入れよ...ってカナ?」

「やだよ!カイト!!」

「あ、おいっ!!カナ!」


 うちはそれ以上カイトの部屋に居られなかった。うちの中で最悪の想像ばかりが膨れ上がっていく。


 そんな心とは裏腹に駆ける足はなぜか事件現場に向かっていた。


「はぁ...はぁ...はぁ...」


 あまり運動をしていなかったからかすぐに息が切れてしまった。うちは立ち止まって切れた息を整えるため、自然と下を向く。


「...え、これって」


 そこでたまたま目に入った溝の中。うちは見つけた物を取りも直さず拾い上げる。


 ソレは白と黄色の糸で編まれたはずの1つのストラップ。しかし今、うちの手の中にあるソレは赤黒く染まり固まったストラップ。


 うちは考えうる限り最悪の形で現実を突きつけられたことに耐えきれず、ストラップを胸に抱きしめながら膝から崩折れてしまった。


 色は違えど見間違えようはずもない。


 なぜなら、ソレはうちが密かにお揃いにして、カイトの誕生日のあげたストラップだったのだから。


「い、いや....いやぁぁぁぁぁぁ!!!」

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