第67話 人魔終星戦争
今回はだいぶ説明回です!
ちょっとした伏線回収も出来たかな?出来たと思いたい!
「セキアル様!カイト・ヒュウガ殿御一行様をお連れしました!」
「入れ」
「はっ!」
扉を開けるとそこには十数人もの人が一斉に食事が出来るほど広いテーブルとその上に所狭しと並べられた豪勢な料理があった。
「よく来てくれました。心から歓迎します。それと私の部下が迷惑をかけました。気分を害されたと思われる中、来ていただき誠に感謝いたします」
セキアルの第一声を聞いた俺たちは過去最高に腑抜けた顔をしていただろう。
なんかみんなから俺に『あいつになんか言ったの?』みたいな空気が流れているが、そんなわけないだろう。
ということはこいつが失礼な態度を取ることは把握済みだったってわけだ...。じゃあなんで別のやつに行かせなかったんだよ...。
「セキアル様?!私は何も彼らの気分を害すことなどしておりませんよ?!」
「と私の部下はそう言っていますが、実際はどうでしたか?」
「はーい!キノすっごくムカついた!あいつ嫌い!!」
いや、キノの声は聞こえてないだろ...。ただ想いは一緒だからちゃんと言わせてもらおう。
「正直、気分は良くなかったな。最初から上から目線での態度が端端で感じられたほどだったしな」
「と私の客人は申しているがそれについて君はどう思う?」
「わ、私はそんな...」
「...はぁ。いつも言っていますよね?君は私以外の者を常に見下してしまっていると。君に悪気がないことはわかっていますが、それと相手の感じることは別物です。それにーー」
あれ、これ長くなるやつ?と思っていたら意外にもすぐに終わった。
「と、まだまだ言いたいことはありますが、今日は客人もいらっしゃいますのでこのくらいにしておきましょう」
ちなみにセキアルが俺たちの下へアミカジを行かせた理由とやらは端的に言うと誠意を見せるためらしい。
下っ端が行くより上から2番目の者が行く方が俺たちを軽んじているわけではないと伝えたかったらしい。
その上で了承を貰えても断られても最大限の謝罪と感謝はするつもりだったようだ。
と言ってもセキアルとの間で何かあったと言えば昨日のことだろうが、そんなに感謝されるようなことをした覚えはない。それに謝罪を受けるようなこともないはずだ。
今回はセキアルのことを少しでも知るために会うことを了承したが、実際俺たちが呼ばれた理由はよく分かっていない。
「それでは席についていただけたようですし、食事を取りつつ、早速本題に入りましょう。本題というのは他でもありません。私たちとカイト様との関係性についてです」
「関係性?俺はお前のこともその部下たちのことも知らないぞ?」
何を探られているか皆目見当も付かないのでここは一旦、キノから教えてもらった【強欲】の臣下であることを知っているそぶりは出さない。
「えぇ、この町の領長としての私とその部下は知らないでしょう。しかし、本当の私とその同僚、そして私たちのボス、【強欲】の魔王との間には関係性があるのですよ」
思ったよりあっさり自分の正体を明かしたな。
それに...はて?過去に俺は【強欲】と関わったことがあるというのか?
いやそれはない。俺は最初から“鑑定”のスキルを持っていた。森に取り残された時に出会っていたとしたら分からないかもしれないが、あの時出会ったゴリラはすでに【怠惰】の臣下であることを知っている。
それにもし、向こうが一方的に俺を知っているのだとしたら、『関係性』という言葉は使わないはずだ。
なら一体どこで?
その答えはすぐにセキアルによってもたらされた。
「キュケの森、進化した魔物の大群」
その言葉を聞いた瞬間、俺とサニアの体が強張る。
「...お前、それをどこで...」
「なるほど、これでその反応ということは本当に奴はあなたたちの前に姿を現していないのですね...。失礼いたしました。てっきりシラを切っているものかと...」
「何が言いたい?ちゃんと説明してくれ」
俺とサニアの雰囲気が変わったことで先程までのどこか浮ついた空気は完全に凍りついた。
「ええ、きちんと説明させていただきます。そもそものことの始まりは魔王と人間との戦争からですーー」
そうして語られ始めたのは、随分と昔の話からだった。
今から約100年前、人族と魔族を決定的に別つある戦争が起きた。
そもそもそれよりもずっと前から人族と魔族は仲が悪く、小競り合いは続いていた。
しかし、彼らの領地の間には潤沢かつ広大な森、キュケの森が広がっており、その西側にはどんな生物をも凍てつかせる極寒の氷山が。
そして反対に東にはその方角に向けてV字型に断崖絶壁があり、その先には広大な大海原が広がっている。
そのため今まではそこまで大きな戦いへと発展することはなかった。
しかし、これらにどちらも鬼才と呼べるほどの指導者が現れてはどうか。
当然、小競り合いは争いとなり、やがて戦争へと発展するのは自明の理だった。
その人族を率いた者の名はハバネス・イングラス。のちのイングラス王国の王、ハバネス・オン・イングラスその人である。
かたや魔族を率いた者の名はカイニス。のちの【怠惰】の魔王で、俺たちも少しお世話になったあのカイニス・レルナントだそうだ。
彼らの戦争は昼夜問わず一年中続いた。反して戦地は転々とし時に森を、時に空を燃やす勢いだったそうだ。
だが、あまりにも強大すぎた彼らの力はいずれ無関係の者たちも巻き込み始めた。
最初は知らぬ存ぜぬを貫いていた両族だが、このままでは内乱さえもが起きるところまで来ていたらしい。
そうして観念した(?)両族の長は停戦協定を結んだ。それは停戦とは言うものの事実上の終戦でもあった。
なぜなら暴れ足りないと停戦を是としなかった当時の両族の民たちは、何かしら互いに敵へと自分たちの納得のいく方法でけじめをつけろとのたまい始めたのだ。
それは明言こそしなかったものの両族の長の処刑。
当然そんなことは許されるはずもなく、かといって彼らを排せば、彼らを静観し今は中立を保っているものさえも敵になりかねない。
考えた両長は自分ではなく一部の権力者の首を晒し上げることにした。
当時は彼らも今ほど実力も高くなかったため、スキルによる実力主義の強制的な統治も出来なかったのだ。
それによって人族側はのちのイングラス王国に併呑される前の中級国であり、金銭と武器の支援量もバカにならないほど行ってくれていた『ミドハイリル』という国の貴族数名、そしてイングラス王国が成立する前のハバネスの実弟などを処刑台に立たせた。
また魔族側は当時、すでに発現が確認されていた魔王数名を処刑台へと送った。その中には当時【嫉妬】の名を冠していたリトレアの母もいたらしい。
「当然、全ての魔王を処刑台へと送ったわけではありません。現に、私たちのボスである【強欲】の魔王は当時、すでに【強欲】として魔王になっておりましたが、処刑台へと送られることはありませんでした。
理由としては当時ですでに今の魔王に勝るとも劣らない力を有していたため。ですが、なにぶん力において【怠惰】は他と隔絶しておりました。そのためボスだけでなく他の魔王も【怠惰】の魔王が率いていた軍の1つに所属していたんです。
この戦い含め、両族の権威者をも巻き込み広がった戦争は星を終わらせる可能性もあったとまで言われ、今では『人魔終星戦争』と呼ばれています。そんな戦争を間近で経験しているためでしょうか、人族に対するボスの考え方は今の他の魔王よりもいささか苛烈です。あぁ当然、ボスの元へと集った私たちはその想いを同じくしております」
ここでセキアルは一度呼吸を整えた。
「正直、両族ともそれで統治がうまく行ったかといえばそうでもありません。より反発は大きくなる場所もありました。それでも、大半は本当に権威ある者を処刑した両族に対する畏怖が占めておりました。
しかし、それも数年経てば薄れるもの。次第に魔族領では新たに生まれた魔王を立て【怠惰】に反乱を起こすものが現れ始めました。
ですが、この世は基本的に長く生きる者が勝る世界。当然、魔王として長い間君臨し続けていた【怠惰】には痛痒も感じません。
しかし、状況を憂いた【怠惰】は魔王同士の戦闘行為、結託など戦時行動に繋がると見られるものの一切を禁じたのです。それを行えるだけの力をすでに当時の彼は備えていた。それでも、彼らもただ黙って【怠惰】の言う通りにするはずがありません。
各々、今度は水面下で争い始めました。裏組織、賄賂、政治の乗っ取り。様々なことが起きました。ただ、これもいつしか【怠惰】とその臣下の手によって誅伐が下され始めました。
そして、まともに魔王同士で覇を競うことが不可能になり戦意のぶつけどころを失ったかに見えた魔族ですが、【怠惰】は1つの道を示しました。...それが人族への攻撃です。
ですが、人族とは事実上の終戦をしています。そのため表立って行う事は禁じていました。ただ、【怠惰】の目につかないところでは【怠惰】は口を出さない。そんな実しやかな噂が流れてからは、箍が外れたかのように彼らは人族へ攻撃を仕掛け出しました。
結局、私たちの関係性というのは私の同僚であるガイロというものが行った、間接的ではあるものの人族に対しての侵略行為によるものです」
そういうとセキアルは徐に懐から1つの宝玉と首飾りを取り出し、机の上に置いた。
というかカイニスさん...いやカイニスはやっぱり何か隠してやがったか。カイニスの話す内容全てを鵜呑みにしてはいけないと、なんとなく感じてはいたが、蓋を開けてみれば真っ黒じゃねぇか。
「では、次はカイト様方が遭遇された進化した魔物の大群の全容について説明致します。まず最初に、これは私たち5人の戒王全員に配られているアイテムでこちらを『進化の宝玉』、そしてこちらを『蓄魔の首飾り』と呼んでいます」
へぇ。首飾りは初めて見たが、もう1つの宝玉の方が同じようなものをどこかで見たことある気がする。
「カイト!あれテミスが閉じ込められてた洞窟にあったやつと同じかも!」
「なるほどな、だから見たことがあったのか...」
確かに見た目は同じだが、宝玉だからな...。
あの時見たものも同じ丸型だったし、何より色が違う。あの時俺たちが【怠惰】の魔王に献上したものは赤黒かったが、今セキアルが取り出した宝玉は青白い。
「もっと詳しく説明致しますと、『進化の宝玉』はその名の通り対象を強制的に進化させる代物です。ただ一度限りではありますが、自分の認識内の生物全てを進化させることが出来ます。また、こちらの『蓄魔の首飾り』はこの首飾りがある半径10mに漂う魔力を自動的に回収致します」
「なんだよ、そのとんでもない代物は...。って待てよっ!まさかあの不自然なほど大量に湧いていたホブゴブリンとホブコボルトはっ?!」
「カイト様の想像通りです。あれはガイロが人族へと攻め入るために行ったことです」
「なっ...!お前ら、もしあのまま俺が止めてなければ...!」
「はい、今頃あの町は更地になっていたでしょう」
「ふざけんなよっ!」
俺の怒鳴り声にセキアルの側にいたアミカジの手が背中に背負っている槍に触れる。
「アミカジ」
セキアルが一言アミカジを止める。
だが、そんなこと気にしていられなかった。俺がいたから未遂に終わったとはいえ、もし防げていなければ大惨事だった。
それに俺は...、あの出来事のせいでサテュラの人々に嫌われた...。いや、嫌われたなんて生易しい言葉では済まない。
あの出来事の主犯にさえされたのだから。
「お前らがくだらないことしたせいでサテュラの人々が死にそうになったんだぞ?!それに俺は!俺..は...っ!」
唯一事情を知っているサニアが優しく俺の背中に触れる。
昨夜の俺の過去で詳しくこの話はしていなかった。
王国から指名手配を受けたことは話したが、なぜそうなったかが未だに俺自身理解していなかったからだ。
「それについて、我々は謝罪致しません。先程も話したように私も人族を好いているわけではない。何なら町一つを潰せないで何をやっていると思ったくらいですから」
俺はセキアルのその丁寧な口調も今は怒りを掻き立てる要因にしかならない。
だが、確かにさっき戦争の話で人族に対して良い印象を持っていないことも人族に対して苛烈な考え方をする【強欲】にそれとわかって付き従っているとも話していた。
「くそっ!」
俺はぶつけどころを失った感情を飲み込むことも出来ず、啖呵を吐く。
「カイト様の心中に付いては触れません。察すると申しても感情を逆なでするだけでしょうから。では、話を戻します。
私たちの関係性というものは理解していただけましたでしょうか?今回、私はカイト様方に昨日の騒動についての感謝のためにお呼びさせていただきました。
しかし、今後の私たちとは別の問題。私はカイト様方が今後どうされるかには一切口を挟みません。
ただ、今日こうして私の持っている情報や因果関係を明かすことが、この町の秩序を守る一助となったことへの感謝に繋がると思い、この場を設けております」
セキアルはそこで言葉を止め、口を閉じる。
後は自分たちで決めろということか。そしてその結果敵になろうが、不干渉を取るかは関わらないが敵対するなら容赦はしないってことだろうな。
「最後に1つだけ聞かせてくれ。お前らはその『進化の宝玉』と『蓄魔の首飾り』を使って何をしようとしてる?ただ進化させて攻めさせるためだけなら一緒にその首飾りを出す必要は無いからな」
「分かりました。その質問を最後に致しましょう。私たちの目的は、ただボスをより高次元へ導くことです。高次元といっても方法は単純。
『進化の宝玉』で進化させた魔物と人族、彼らを戦わせれば必ず死体は出ます。そして死体は時間が経てば『魔』へと帰ります。これは単純な魔力よりもずっと純度が高い。また、魔物の『魔』は進化した個体の方が質が良い。
つまり人族を滅ぼすというよりは死体の方が重要なのです。そのため進化させた魔物が死のうと生きようとどちらでも良い、むしろ死んだ方が都合が良い。私たちの手を汚す必要が無いのですから。
そして集めた高純度の魔力をボスに捧げ強化することで今よりさらに高次元へ至っていただき、いずれはこの世界の王とする。それが私たちの最終的な目標です」
なんだその途方も無いものは。というか、この口ぶりだと今俺たちが成っている『超越者』よりも高次元の存在になるということか?
ここまでの話やこれまでのことを察するに魔王は全て超越しているはずだ。てことはその上があるのか?
...いや、俺はその『高次元の存在』に会ったことがあるじゃないか。
ーー神だ。
ということは【強欲】はいずれ神になろうとしているってことか。
「それより、聞いた俺が言うのもなんだが、敵になるかもしれない相手にそこまで話して良いのか?」
「構いませんよ。敵になるのであればボスへとたどり着く前に私が消しますので」
なので申し訳ありませんが、私の力を教えて差し上げられませんよ、と口の片端を吊り上げながら一言だけ付け足した。
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