第64話 新たな旅路
今日は二話投稿してます!まだ前話を読んでない方はそちらもぜひどうぞー!
キュケの森と魔族領との境目でアサヒたちと別れた俺たちは、魔族領に詳しいテミスとキノの提案で『アンバスの街』へと向かうことにした。
そこはどうやら、限りなく人族の街の造りに似ているようで、俺たちの過ごしやすさを優先してくれたらしい。
気にしなくていいとは言ったのだが、人族のための街ではないからか魔族にとってもそれなりに居心地はいいようだ。
それに隠そうとはしているようだが、俺の心情を慮ってくれていることは丸わかりだ。
野暮なので言わないし、今はその心遣いが有難い。どれだけ時間が経ってもこの傷が癒えることはないが、それでも乗り越えることはできるかもしれないしな。
キュケの森では草が生い茂り、道も獣道のような踏み固められた道しかなかったのだが、木々を抜け少し離れてみると意外としっかり舗装されている。
「商人とかがよく使うからねぇ。舗装しとかないと商品ダメになっちゃうから」
「まぁ考えてみればそうだよな。魔族の人たちも普通に生活してるんだしな」
俺たちは魔族領についてはほとんど知らない。キュケの森でミキスに連れ去られた時は一瞬で城に着いたからな。
この際、ゆっくり満喫しながらその街を目指すのもいいだろう。
今俺たちは馬車を使わず、歩いて旅をしている。その際いろんな人とすれ違うのだが、思っていたよりも差別が少ない。というよりほぼない。
やはり見た目や肌の色で人族と分かるから視線は感じるが、それでもその視線はほとんどが奇異や敵意の類ではなく、興味だった。
「ほとんどの魔族は人族を見ることなんてないんですよ。そもそも人族領に行くこと自体禁止している国もあるくらいです」
だから俺たちが珍しいのだ、とテミスは言う。
確かに人族だけでなく獣人、魔族までいればそりゃ誰でも気になるだろう。
そんな風に時折、むず痒くなるほどの視線を浴びながらアンバスへの道すがらを歩いていると、ローブの下からテロルがのっそりと出てきた。
「どうした?何か見つけたか?」
テロルはふにふにと体を弛ませ否定の意を告げる。
どうやら自分も外の様子が気になって出てきただけのようだ。
しばらく俺の肩に乗りぐるぐると回りを見渡たら、満足したのかまたローブの下へと潜ってしまった。
「何がしたいのかしら?それにしても懐いてるわね」
「“眷属創絆”のスキルがあるからだろう」
「ほんとにそれだけかなぁ?それにしてはカイトくんから離れたがらないけど」
まぁミユの言いたいことも分かる。テロルと出会った時にいたサニアはまだしも、割と一緒にいるキノやテミスには触らせてもやらないのだ。
キノだけならテロルが見えていない可能性もあるが、テミスもとなると単純に触られたくないだけなのだろう。
それにサニアでも触らせるのは、俺が頼んでイヤイヤながらなのだから変な話だ。
基本的にテロルは俺の背中あたりにくっついている。テロルの体が冷たいからかくっついていても暑苦しくはない。
それにテロルの体は自動迎撃なので、攻撃を受けても勝手に反撃してくれる頼もしい番人なのだ。
ただ、テロル自身があまり強くはないのでカウンターにさらに反撃されてしまうと下手すれば死んでしまう。それは嫌だ。
そういったこともあって、先の【憤怒】戦などでは手を出さないように隠れてもらっていた。
そうして道中、数夜かけてミユも馴染めるように野宿をしながら道なりに進んでいくと小さな町が見えてきた。
「...あれがアンバスの街か?聞いていたより小さい気がするが...」
「違うわよ、あそこはイントの町って言って旅人の休みの地なの。あんまり娯楽とかは無いけど、宿とか食事処は揃ってるから案外良いところよ」
「なるほどな、この辺りは結構俺たちみたいな旅人が多いのか?」
「...う〜ん、少なくないわけじゃないしさっきの言葉を飲み込むようで申し訳ないけれど、活用するのは商人が多いのよね。あとそれに同行する護衛とか。だから客もそういうのが多いのよ」
「なるほどな、商人なら長距離を移動することもあるだろうしな」
魔族領のいろいろなところを旅してきたキノに、イントのお店のどこが美味しいやら宿が綺麗なんかを教えてもらいながら歩いていると遠くにイントに入るための検問所が見えてきた。
「検問所があるのは人族も魔族も一緒なんだな」
「危ない人たちを入れないために効率いいですからね。それにお金を取ることで浮浪者の侵入もある程度防げますし」
「どこも最終的には考えること同じなのな」
そんな平和な会話をしながら、検問所のすぐ近くまで来てみると何やら怒鳴り声が聞こえる。
耳を傾けてみると、その声の主は大きな荷物を荷台に乗せ、馬二頭で引っ張ってきた商人と思しき太っちょ。それとその荷物を護衛する十数人の兵士がいた。
「ふざけるな!いい加減にしろと言っている!このワシに金を払えなど戯言も大概にしろ!すぐに領長を呼んでこい!このウスノロがっ!」
おおぅ...。
絵に描いたような自意識過剰じじいだな...。
あんまり関わりたくないのだが、列は一つしかない。それにこいつのせいで順番も止まってしまっている。
と、そんな時にしびれを切らしたのか後ろに並んでいた1人の男性がその商人の元へと向かっていった。
「おいっ!お前が何者かなんて知らないが、ここでは誰であろうと払うルールになっている!列もあんたのせいで詰まってるんだよ!だから早くーー」
なんと男性が商人に対して正論を言い終わる間も無く、周りにいた護衛に心臓を一突きにされ、あっさりとその命を引き取った。
「ふん。畜生ごときがワシに話しかけるな。お前ら、このゴミを片付けておけ。...そして、貴様ら分かったな!このワシに逆らうということの意味を!であればさっさとこの頭の固い門兵を説得しろっ!」
その言葉を聞いた人々は一瞬唖然としていたものの、1人の女性が何かに追い立てられるかのように門兵に詰め寄ったのを皮切りに、そこに並んでいた全員が門兵へと駆け寄る。
「ほ、ほら!何してるの、あんたたち!?早くそこどきなさいよ!」
「通して差し上げろっ!べ、別に数人くらいいいんじゃないかっ?!」
「そうよ!あ、あなた達も死にたくないでしょう?!」
彼らの姿は哀れを通り越して、いっそ清々しかった。
だが、力を持たない者が持つ者に圧倒され折れてしまうのも、ある意味仕方ないことなのかもしれない。
それよりも...
「魔族はなんとなく全員が戦闘できるものだと思っていたが、そうでもないんだな」
「カイトさん、偏見がすごいですね...。人族と一緒ですよ、魔族も魔物の脅威と抗い、無い力の代わりに知恵を使って退けている人がほとんどです。そして、それが寄り集まったのが国です。ただ、人族と違うのはそれらの国は人族と比べて数国しか無く、その王はいずれも魔王と呼ばれる強力な力と軍を持った者達ばかりです」
「ま、あたしみたいに国を持ってない奴もいるけどね〜。実際、【憤怒】も部下はいたけど国らしい国を持ってたわけじゃ無いし。まぁそれでも、人間みたいにたくさん国は作んないかなぁ」
そんな風にさもいつも通り雑談をしているとミユが慌てた声で俺の肩を叩く。
「え?!ちょっと?!何呑気に話してんの?!助けに入らないの?!」
流石に可哀想になってきたので、ミユの言う通り助けに入ることにした。
「それじゃあ、これ以上犠牲者が出る前に首を突っ込みに行くか」
本当に脳みそまで固い門兵なのか正義感に溢れているのか、俺たちは未だ揉めている集団の元へと向かった。
「おーい、その辺にーー」
「何の騒ぎですか?」
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