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黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
第4章

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第48話 模擬戦開幕

おかげさまでブクマ件数50件を超えました!!


本当にいつも皆さん読んでくださりありがとうございます!!


...........youtube見に来ても良いんだよ...?

「では、こうしてお互い手の内を晒したことだし、早速君たちの実力を見ておこう。先程ガンドが言ったように、サニア君にはイドニスを、カイト君にはメニア、ミキス、ガンドを訓練相手に添えるつもりだ。サニア君は“闘術”が得意なようだし、イドニスも“闘術”を持っているからちょうどいい。またカイト君の場合はさまざまな状況に対応し、そして自分のスキルを高めるために多種の相手と組んでもらう」

「わかりました。ミキスさん、メニアさん、ガンドさんよろしくお願いします」

「うむ。地下に闘技場がある。そこで模擬戦をしようぞ」


 そうカイニスが言うや否や、大広間の中央に昇降板が現れた。今ならわかるが、これは昨日床から机が生えたのと同じ原理で、カイニスの“夢実虚創”で行っているようだ。


 それはちょうど全員が乗れるほどの大きさだったので、全員で地下へ降りていく。


 しばらくすると光が下に見えてきた。そして、光まで到達すると、目の前には一面茶色で大広間に負けず劣らずの広さの舞台があった。


「着いたぞ。ここで模擬戦を行ってもらう。では各自準備運動の後、最初はサニア君から行ってくれ」

「わかりました...」


 カイニスに言われるがままにサニアとイドニスがしばらく体を動かした後、舞台へ上がる。


 そして俺たちはカイニスに連れられVIP席のような場所に座る。


 当然だが、客は1人もいない。ただ、催し物を行う場所としても使う場所であるためとても広い観客席がある。



 そうしているうちにサニアとイドニスは互いに向かい合い、睨み合っていた。審判はミキスが行うようで、旗を持って舞台袖にいる。


 ここからでは彼らの会話は聞こえないが、険悪なムードになっている様子ではないようだ。







「全力で行く...」

「オウ!かかってこい!全力でないと面白くねぇからな!大丈夫だ、ちゃんと手加減してやる」

「...」


 わたしはいつものように体が覚えた構えを取る。爪を覆う冷気が熱くなったわたしの体を冷まして冷静にさせた。


 わたしはもっと強くならなくちゃいけない。主さまを守れるように、主さまを悲しませないように。


 ミアの分まで生きる、そのためには主さまと同じところへ行かないと。


 あのいけ好かない魔王の時、わたしは足手まといでしかなかった。もう少しでもわたしが戦えていればミアは...。


「...何か余計なこと考えてるな。オレの前で随分と余裕じゃねぇか!!」


 イドニスは牙狼族というだけあってとてつもないスピードで突っ込んでくるのが見えた。わたしは急に現実に引き戻され、咄嗟に左へ回避する。


 イドニスはわたしが左に避けたのを見てから急停止をする。


 しかし、イドニスはわたしの真横で止まったのにもかかわらず、突っ込んできた運動エネルギーを左腕に集め、わたしに向かって振り抜いてきた。


 わたしはそのパンチを回避できないと判断し、咄嗟に両腕を交差することで受け止める。


「ぐっ!!」


 だが、そもそも圧倒的にステータスが違う上に、とんでもないスピードのエネルギーを乗せたパンチを受けた両腕はそれだけで悲鳴をあげた。


 幸い折れた感じはしないものの、痺れたように力が入らない。


 だが、止まっていればまたイドニスにペースを持っていかれてしまう。


 今度はわたしがイドニスに向かって走って行き、左足で蹴りを浴びせる。イドニスはそれを回避をしようともせず、右腕で受け止めた。


「硬い...っ!」


 まるで金属を蹴っているかのような硬さに驚いたもののそんなことで追撃を止めるわけにはいかない。そのまま回し蹴りをする。


 それも右腕で防がれるが、ガラ空きになった腹をめがけてヤクザキックを放ってイドニスを飛ばし距離を作る。


 本来ならここで魔法の1つでも撃つのだが、今回は“闘術”の実力を見るということなので魔法は無しだ。


 だが、ハンデとしてわたしはいつもの棘がついたすね当てをしている。逆にイドニスは防具らしきものを何1つつけていない。


 にもかかわらずイドニスの体は金属でできているかのような感触だった。


「ハハッ!!良いな!超越してないのにそんだけ力がありゃ十分だ!きっかけさえありゃ超越はできるさ!だからさぁ!ほら!もっとオレにお前の力を見せてみろよ!!」

「言われなくてもっ...!」



 わたしはジグザグに地面を這うように走りイドニスの視線を下に集めた後、強く地面を蹴って飛び上がり、新たに獲得したスキル“破落”を使う。


 わたしを見失わせるためにそんな移動の仕方をしたが、やはりスピードではわたしの上を行くようで、バッチリ目を合わせられている。


 だが、空中からの慣性をも利用したかかと落としは、流石のイドニスも片手では受けきれないと判断したのか両手を交差させて受け止める。


 そして追撃を加えようと左足で横蹴りを放とうとした時、イドニスに右足を掴まれた。


 それを振り払うため、空中で体に回転をかけて掴まれた手から抜け出そうとするが、その前にイドニスに足を引き寄せられ、腹にパンチを受けてしまった。


「クハッッ!!」


 そして、その勢いのまま後ろに飛ばされて壁に激突した。


「グッ、くっ」

「終了ねぇ〜。勝者イドニス〜」


 わたしは壁に激突してから体が動かせず、無情にもミキスによって終了のゴングが鳴らされてしまった。






「流石に勝てはしなかったか...。でも、よく頑張ったよ、サニア」


 俺は超越者相手に奮闘したサニアを客席から小さく賞賛した。


「うむ。やはり君の臣下というだけあって、素質も技量も十分だな。あれなら近いうち壁を越えることができるだろう」

「そうですか、それならサニアも喜びます」

「では次は君の番だ。君は“剣術”を主軸にして戦うのだろう?ならば訓練は我の部下に任せるつもりであったが、模擬戦では我自らが相手しよう」

「...よいのですか?確か、“怠惰”は動けば力が失われていくのでは...」

「なに、1日程度なら大丈夫だ。それに一時もかからんよ」


 それは安い挑発なのか、それとも純然たる事実として言っているのか判断はつかなかったが、それでも俺に対して絶対的な自信を持っていることは窺えた。


 確かに力量的に勝利は難しいかもしれない。だが、善戦は出来るはずだ。


 カイニスは俺の顔を見ることなく、VIP部屋を出て、舞台へ向かう。俺はその後ろをついて行った。





「ではミキス、頼んだぞ」

「わっかりました〜。それでは我らが主、カイニス様とカイトくんによる模擬戦を行いまーす。魔法やその他スキルの使用は禁止、剣術スキルとその派生技のみ使用可能でーす。それじゃあ頑張って〜」


 ルールは先ほどのサニアと一緒だ。


 俺は愛用している刀と同じくらいのリーチの物を選び剣先を下げて、半身で隠す。対するカイニスが選んだ剣はとてつもなくリーチの長い剣だった。


 大太刀のように一メートル以上ある剣身だが、俺の持つ刀のようにしなってはいない。その分大剣のように幅広な形をしている。


 そんなとても重そうな見た目をした剣を、カイニスは軽々と片手で持っていた。


「来ないのか?では、こちらから行くぞ?」


 そんな聞こえるか聞こえないかわからないような声でつぶやくと、見た目からは想像もできないような俊敏さで、カイニスは突進してきた。


 カイニスはその勢いのまま大剣を横薙ぎに振るう。。


 俺は受けるのは危険だと判断し、ジャンプで躱す。そして振り切った反動の隙を突いて斬り返そうとしたが、“予知”で俺が斬るよりも早くカイニスの大剣が迫るのが見えた。


 俺は避けきれないと判断し、仕方なく刀身で大剣を受け止める、いや、受け止めようとした。


(ッッ!!な、なんだこの重さはっ!!)


 俺はその剣身を受け止めきれず、まともに衝撃を食らってしまった。


 なんとか刀で力を逸らしながら受けたこともあってそこまで吹き飛びはしなかったが、俺の体勢が完全に崩れてしまった。


 だが、カイニスは追撃を仕掛けるために、そのとんでもない重さの大剣でとんでもない速度でもって連撃を放ってくる。


 俺は勝手に発動する“予知”と“心眼”で致命的な一撃だけはなんとか防ぐが、細かい攻撃を受けてしまう上、完全に防戦一方となってしまった。


 ただ、細かいと言っても大剣なため、擦り傷のような小さな傷ではなく、もらい過ぎれば致命的になるような攻撃ばかりだった。


「本当なら剣術スキル以外を使ってるから失格なんだけど〜、力量見るためだし自動発動みたいだしいっか」



「ほらほら、どうしたんだ?カイト君、全然攻撃できていないぞ?」

「くっ!こんのっっ!!」


 俺はカイニスの大振りな攻撃を大きく弾き、反撃に転じようとしたが、弾いたところで気がついた。これは誘われた一撃だったのだと。


 だが、カイニスにとっては軽く放った一撃でも、俺にとっては全力で対応しなければならない攻撃だ。


 その単純な力量の差でカイニスの連撃を防ぎきることが出来ず刀を飛ばされ、首筋に刃を当てられて決着がついた。


「くっそ...。ここまで差があるなんて...」

「よく耐えた方ではあったが、なんせ年季が違う。まだまだ負けんよ。それにしてもスキルの恩恵があるとはいえ、君は目がいい。さらにきちんと重要な攻撃のみに注視し、雑多なフェンイトなどは無視する勇気もある。その年でそれだけ戦うことができれば、確かに【傲慢】とも戦えたのだろうな」

「そうですか、ありがとうございます」


 俺はカイニスの賞賛は受け入れたが、やはり悔しいものは悔しい。少し、親に反抗する思春期の中学生のような声音になってしまった。


「ふふっ、向上心があることは良いことだ。だが、もう少し冷静になるべきだな。まぁ、今日はもう疲れたろう?明日から訓練を行っていこうか。それにたまにはこうして相手をしてあげよう」

「是非、お願いします」


 いつのまにか側にきていたメイコからタオルをもらい汗を拭く。そして、水分補給をしていると観覧席から降りてきたサニアが来た。


「お疲れ様、主さま...」

「ありがとう、サニア。もう少し戦えると思ってたんだけどね...。【傲慢】を倒せたことで天狗になってた...」

「ううん、ちゃんと戦えていたわ...。それにこれから強くなれるんだから大丈夫よ...」

「そうだね、ありがとう。戻ろうか」


 カイニスたちを昇降版で待たせているので急いで行き、サニアとメイコを連れてまずは大広間に戻ることにした。

 

「ではカイト君、サニア君。あとは自由にしてもらって構わない。メイドに言えば、外にも出られる。外にはまだ君も見たことのない魔物がいるだろう。是非行ってみるといい」

「ありがとうございます。でも今日は休むことにします...」

「ははは、そうか。ではな」





「メイコ、少し早いけどご飯とお風呂の準備してもらえる?」

「かしこまりました。すぐにでも」


 俺はメイコに頼みサニアと部屋に入ると、俺は誰かが部屋にいることに気がついた。


 だが、そいつはいることがわかっているのにもかかわらず存在をいまいち認識できないような、そこにいることを証明しろと言われるとできないような、そんな不思議な雰囲気を持つ者だった。


「誰だ、ここで何をしている?」

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