第43話 帰郷の行方は
今日は二話挙げております!まだ読んでない方はこの1つ前の話からどうぞ!!
リトレアとの戦いから数日、俺たちはトイトニスをちょうど出るところだった。
「カイト、これからどうするの?」
「俺はもっと修行しなくちゃならない。本当に俺たちは弱い。今回のことでそれはもう決定的だった。今までも強くなろうとは思っていた。ミアが拐われたときも強くなろうと必死だった。でも心のどこかで俺なら出来るんじゃないかっていう根拠のない自信があった。...それのせいでミアを失った。だからもっと強くならなくちゃダメなんだ。だから人外魔鏡の住処と言われている魔族領に行ってみようと思う」
「そう...。本当はあたしも付いていきたいけれど...。わかったわ、応援してる。だから途中までは一緒に行きましょ?王国のキュケの森を抜けるんでしょ?」
「あぁ、そのつもりだよ。ついでにサテュラのみんなに久しぶりに挨拶しようと思う。みんなにはお世話になったしね」
「ミリーにも会いたい...」
「そうだね。それじゃあ行こうか」
それから俺たちは約2週間ほどかけてゆっくりラミーたちとの最後の日々を過ごした。
ライドは俺たちの雰囲気の変化に気づいていたものの、ラミーの気持ちや俺の戦いの結末を知っていたためか、特に何も言ってこなかった。
「ねぇカイト、ほんとに来ない?私の夫になればもう安心して暮らせるわよ?」
「何度も言ってるだろ、答えは一緒だよ。俺もラミーともっといたいのは確かだけど、俺はもっと強くなりたいんだ。だから一緒には行けないって。でも、もしラミーが危険な目に遭いそうになったらすぐにかけつけるから」
「そう言ってもらえるだけで満足しないとダメなんでしょうけどね。...わかった!そしたらあなたにこれを託すわ」
ここまで何度も行ってきた会話を終えたラミーはこれまでと違い、俺に何かを渡してきた。
「これは離れたところでも互いに魔力を登録した者が持っていればすぐに連絡が取れる魔法具よ。お父様が万が一カイトたちと離れた時のために使えと渡されていたわ。でもなかなか離れる機会なんて無かったから」
渡された物の見た目は地球にいた頃のタブレットのような物だった。
だが、機能は本当に遠方から話すことに特化しているらしくそれ以外はできない。だが、連絡手段が乏しいこの世界で、この魔法具はとても有用な物だろう。
「ありがとう、ラミー。大切にするよ。何かあったらすぐに呼んで。皇やライドさんたちがいたらそうそう俺の出番なんてないかもしれないけど、それでも呼んでくれたら飛んでいくからさ」
「うん、待ってるわ。だから今よりももっと強くなってね?」
「当たり前だよ。もう誰も失いたくないんだ。きっとみんなを守れるくらいに強くなるから」
そんな話をしているうちに俺たちの目的地であるサテュラの町に着いた。
相変わらず門番は最初にこの町でお世話になったバルスだった。
声をかけて挨拶したかったが、ラミーの素性がバレるのを防ぐため安易に顔は出せない。だが、バルスの元気そうな顔を見られて良かった。
「着いたわよ!ほら、あなたが言ってた[羊の沼亭]ってどこにあるの?」
「そこの道を曲がってしばらくしたら見えてくるよ」
「あ!あそこね!」
そうして俺たちは宿の前に馬車を止め馬車を降り、久しぶりのサテュラを満喫するために、まずはこの宿の女将さんたちに顔を出しに来た。
「こんにちわ〜、女将さんいます?」
「いらっしゃ......。本当にまだこの国に居たんだね、【黒隻】。ずっとあたし達を騙してたってわけだ。やっぱりお前はあたし達この国の人間の敵だ!厄病神だ!!とっとと出て行け!!」
俺は何が起きているのかわからなかった。ふと、最近はわからないことだらけだな、と自分でもよくわからないことを考えてしまう。
「ど、どうしたんだ?女将さん」
「何事?!どうしたの、お母さんっ?!...って、え?カイトくん?...ううん、【黒隻】...。なんでここにいるの?追い出されたんじゃ無かったの?...そっか、逃げてきたんだね。...この犯罪者!人殺し!私たちの前に顔を出すな!」
遅れて入り口に出てきたミリーに事情を聞く暇もなく罵倒され、ミリーの手の近くにあったコップの水を叩きつけられる。
それから俺は女将さんやミリー、それから騒ぎを聞きつけてやってきたお客さんや近くの住人などがやってきた。
そして誰一人例外なく俺の顔を見るや否や、手に持っているものやそこらに落ちている石を拾って俺たちに投げつけてくる。
「な、何してんの、あんた達!?カイトとあんた達は知り合いなんじゃ無かったの?!」
「こんな犯罪者と知り合いなんて死んでもごめんだね!お前はこの国から国外追放を受けてることぐらい知ってるだろ!とっとと出て行きな!」
さらにどんどん騒ぎが大きくなっていき、警備隊や冒険者もやってきた。
「なんなのよ!あんたら!いいわ、カイト!早く馬車に乗って!こんな非常識な人たちに構う必要なんてないわ!出るわよ!」
そうして馬車に乗り込もうと後ろを振り返るが、馬車はすでに周りの人々や冒険者たちにひどく傷つけられ、タイヤなども破損している。
不運なことにずっと俺たちについていた御者も車内から引き摺り下ろされタコ殴りにされており、とてもではないが乗れる状態では無かった。
「な、何をしてる!彼らは関係ないだろう!」
「うるせぇ!お前と一緒にいる時点で同罪なんだよ!」
俺は慌てて御者を助ける。
ラミーはライドが守ってくれているし、サニアは自力で戦える。しかし、御者には戦闘能力はなく、非力だったため、体を丸めて暴力に耐えるしか無かった。
「やめんか!一般人にまで手を出すでない!」
そんな声が聞こえたのはその時だった。
その声によってようやく彼らは手を止める。俺は御者を抱き起こしつつ、声のした方へ向くとそこには俺がお世話になった人たちである、ギルドマスターやキュレイパーティ、そしてティサネさんがいた。
「久しぶりじゃのう、カイトくん。立派になりおって」
「ギルド、マスター、それにキュレイ、ティサネさん。よかった!普通の人がいて!彼女たちがなんだか変なんです!」
「いや、何も変ではないのじゃよ。カイトくん。...わしらはキュレイくんにずっと諭されておった。君が人を殺すことを厭わない人間じゃと。しかし、カイトくんはそんなことをする人ではないとなぜか信じていた」
「な、なにを...」
「じゃが、彼が正しかった。ようやく目を覚ました。全て君の掌の上で踊らされておったのじゃな。今やこの町に君を擁護するような馬鹿者はおらん。悪いことは言わん、疾くこの町から出て行ってくれ」
「ずっと私達を騙していたんだね。今考えると最初から異常だったものね、あなた。2度とこの地に来ないで、人殺し!」
「あぁ、今日はとても気分が良い!やっとみんなが目を覚ましてくれたよ。僕は君と盗賊退治をした時からずっと疑ってきた。それにこの町は元々魔物の被害はあっても、あそこまでの大規模な騒動は起きたことがなかった。そう!君が来るまでは!!それなら君を疑うのは当然だろう?!これまで皆に訴えかけてきたが、君の立ち回りがうますぎてなかなか信用してもらえなかった。でもようやくこの日が来た!!さぁ!君の本性を暴いた!晒すがいい!その醜い本性を!!」
俺はもう彼らに、この町の住人たちに本当の意味で声が届かないことを悟った。
何度も違うと言いたかった。けれどここで言い返しても意味がないことはすぐにわかった。
「分かった、ここを出て行く。だから彼女達にはもう手を出さないでほしい」
俺の心からの嘆願だった。俺はギルドマスターに向かって深々と礼をする。そして顔をうつむかせたままサニアやラミー達とこの町を後にする。
門の近くまで来るとこちらを軽蔑した目で見てくるバルスがいた。
「ショックだったよ。俺の目に狂いはないと証明して欲しかった。しかし、それがただの人殺しの犯罪者だったなんてな。それも愉快殺人者と来た。今すぐこの手で殺してやりたいくらいだ」
俺はもう何も言えなかった。
何がここまで彼らを変えたのだろうか?何も心当たりがなかった。
俺は彼に向かって何か言い返そうとするサニアとラミーを遮り、俺は町を出る。門をくぐる直前、振り返ると町の皆が、今一度俺たちを蔑むかのように睨んでいた。
俺は本能的な恐怖ですぐに目をそらす、と同時に門が閉まり俺たちだけが町の外に取り残された。
そして直後、町の中からは大歓声が上がった。俺たちをこの日、この目で追い出せたことが何よりも嬉しいらしい。
慰めるようにこちらを見てくるラミー達を心配させないように極力笑顔を見せつつ、俺たちは歩き出した。
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