第33話 ドラゴン戦『前編』
俺はまず自分の力がどの程度通じるのか確かめるため、俺の一番火力が出せる“雷嵐魔法”で極小の嵐と雷を作り出す。
風が超圧縮されたことでプラズマが発生し、さらにそのプラズマが嵐と共に発動させていた雷と溶け合い、さらなる雷が纏われる。
俺はそれを制御できるギリギリまで溜め込み、“刹那”を使ってドラゴンの下に潜り込んで腹の下にそのまま叩きつける。
とてつもない嵐の爆発と四方八方へと迅る雷の衝撃を受け吹き飛ばされる。
「...やれたか?」
駄目だと分かっているが、つい口にしてしまう。
しばらくして爆煙が晴れるとそこには多少焦げた跡が残っているものの、案の定まるで効いていないドラゴンがいた。
「...ちっ、効かないか」
「多分だけど進化してるわ、あのドラゴン」
「...なるほどな。確かにあれだけの爆発でこの程度なら進化していると考えた方が良さそうだ」
ドラゴンってだけでもやばいのに、その上進化してるってのか。
そういや“鑑定”するのを忘れてた。まぁ、もし本当に進化しているのなら視ることはできないだろうが。
名前:エメラルドガイアドラゴン
種族:翠玉竜
Lv:鑑定できません
スキル:鑑定できません
やっぱりな。
だが翠玉竜、エメラルドガイアドラゴンか。見た目通りだな。
ドラゴンは自分の鱗が多少なりとも焦がされたことにイラついたようで、先ほどまでより若干速い速度で爪を振るってきた。
「...いつまでも食らうと思うなよっ!」
俺はこちらを舐め腐ったドラゴンの爪を俺は全てを切断する刀で切り落とした。
「...グガァ...」
先ほどの攻撃でさえほとんど効かなかったはずの者の攻撃で爪を切り落とされたことに訝しげな様子で俺を見下ろす。
「いくらなんでも俺たちを舐めすぎだ」
俺はまたも“刹那”でドラゴンの胸下に飛び込み、斬り裂いてやろうと刀を振り下ろす。
直後、キィンッッ!!という音と共に俺の体が跳ね上がる。
なっ!....はじかれた...!
なぜだ?!爪は切り落とせたのに!
まさか体の鱗の方が硬いのか?それとも硬化させたのか。
そんな何が起きているのか分かっていない俺をドラゴンは嘲笑う。
「オオッッ!!!」
そこを横からダンテがドラゴンに向けて斧を振り下ろす。
そして、ドラゴンが鬱陶しそうにダンテへ顔を向けた瞬間、今度は逆方向からミネルヴァが槍で鱗の隙間に差し込む。
「ハァッッ!!!」
綺麗に槍の穂先が鱗の隙間に刺さったことでドラゴンが初めてまともに血を流す。
「ガアァァ!!」
流石に鱗の下の肉は柔らかいのか痛がる声を上げた。
俺はミネルヴァの作ったその隙に乗じて、刀に風と火を纏わせ刀の威力を上げる。
そして、“心眼”による弱点部位の判別でミネルヴァ同様、鱗の隙間に刀を突き刺した。
「ガアァァァァァァ!!!」
先ほどより大きな叫び声をあげるドラゴン。
「グォ....グァァァァァァァッッッ!!!」
ドラゴンは大きな翼を目一杯広げ風を思い切り叩く。ガラスが割れたような音と衝撃波を周囲に放つ。
ようやくドラゴンも俺たちを敵と見定めたようだ。
その時、ドラゴンの片目に矢が当たる。さらに同じ場所に鉄の槍が飛んで来てドラゴンの目に突き刺さった。
「グギャオォオオォ...」
ドラゴンは不意の激痛に頭を振り乱し目に刺さった鉄の槍を振り払う。
「エメラルドドラゴンは風属性だ!それなら土属性の攻撃が通るよ!」
その隙を逃さず、クスネが後ろから的確なアドバイスをくれる。そうか、効く属性と効かない属性があるのか。
そりゃ俺の“雷嵐魔法”も効かないわけだ。あれも風属性だからな。
奇しくも今までこのダンジョンで戦ってきたフォーメーションに近い形になった。
どうやらサニアもクスネのお陰で状態は安定したようで、今は戦いの余波が届かない場所で横になっている。
本当は誰か側に付いていて欲しいのだが、このドラゴン相手にそれは自殺行為だ。
「カイトくん達はひたすら攻撃に集中してくれ!僕たちはそれを後ろからーー」
クスネの言葉は最後まで続かなかった。
「ゴルルルルルゥゥウ....!ゴァァァ!!!」
突如、クスネ達の目前に現れた風の玉。その中には俺がドラゴンに放ったものとは桁違いの圧力と雷が圧縮されている。
...それがクスネとミアの前で弾けた。
流石というべきだろう。クスネは一瞬で誰が狙われているか、そして誰を守るべきかを判断した。
...ミアとその奥に眠るサニアを守るため自らの体を風の玉の前に投げ出したのだ。
今までの魔物相手なら、そのある意味悠長な作戦通達もうまく行っただろう。
だが、忘れてはならない。相手はあのドラゴンなのだ。
時には人語も解するとまで伝えられている相手を前にその行為はあまりに甘すぎた。
...そして、その代償も当然のごとく大きかった。
「クスネェェェェェ!!!!!」
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