第27話 噂の行方
次の日、俺たちは昨日決めた予定通りダンジョンへと向かい、今日は4層から始める。
4層につきしばらく歩いていると何度も見たリザードマンの群れがいた。
それに向かってレイミアは慣れた手付きで弓を取り出し、リザードマンを射抜いていく。だいぶレベルも上がったからか2〜3射すると倒せるようになった。
そうしてレイミアのレベルが51になったのでいよいよボスに挑む。
「さーて、レイミアにとっては初のボスだな」
「倒せるでしょうか?」
「大丈夫。今までやってきた自分を信じて。俺たちもサポートするから」
「はいです!がんばります!」
気合を新たにボス部屋の扉を開く。以前のダンジョンと同じように手前から順番に奥へとろうそくがついていく。
奥に鎮座していたのは、以前レイミアが奴隷として運ばれていた際に襲っていた双頭の虎の体を2回り近く大きくした魔物で、また1本だった尻尾は2本となって尾の先が槍のような形をしていた。
名前:サイネスハビキャス
種族:双虎長
Lv:38
スキル:咆波Lv.5 迅爪Lv.6 火吐息Lv.3 風吐息Lv.2 槍術Lv.4
サイネスは俺たちを認識するや否や威嚇とばかりに俺たちに“咆波”を放ってきた。
それを散開して躱し左右に分裂して俺とサニアでやつの注意を引き、レイミアが打ち抜きやすい位置に持っていく。
サイネスは獣の本能なのか後ろの尻尾でサニアを警戒しつつも、攻撃の密度は俺に対するものの方が多い。
俺は迫り来る爪や、“咆波”を刀でやり過ごしつつ“雷嵐魔法”や糸で挑発する。
そこでレイミアから念話が届いた。
(ご主人様っ!ミアはいつでも大丈夫ですっ!)
俺はボス部屋の端で反動を減らすために膝をつきながら限界まで弦を引き絞っているレイミアの方にサイネスの頭が向くように調節する。
そして、レイミアに対してサイネスの体が垂直になった瞬間ヒュッという音とともにサイネスの体に穴が空き、遅れて体が真っ二つになった。
名前:レイミア・シルフィード
種族:森長耳
Lv:51
ステータス:体力496
魔力534
攻撃506
防御517
敏捷463
知力520
スキル:星詠廻転Lv.- Up風魔法Lv.8 Up弓術Lv.7 Up遠視Lv.5 Up遠射Lv.6 New強射Lv.3 New隠射Lv.1
称号星を識る者 風精霊の愛し子
今のはレイミアの“強射”というスキルだ。隙が多く、溜めるために時間がかかるが一度放てばとてつもない威力を放つ。
「お疲れ様、レイミア。よく頑張ったね」
「はい!なんとかうまくできました!」
「うん。完璧だったよ!」
「さすがわたしの妹...」
いつからサニアの妹になったのか...。だけどレイミアも嬉しそうに抱きついているので微笑ましくなった。
そうして俺たちはボスのドロップアイテムである二本の槍尾を拾い、次の階層に向けて開いた階段を降りていく。そうして見えてきた6層の景色は火の海だった。
「暑いな...、火山地帯か...」
「うぅぅぅ...あつい〜...」
「暑いですぅ〜」
俺を含め3人ともグロッキーになっている。そりゃそうだ、俺が日本にいた頃にも経験したことのないような温度で、汗が止まらない。
それも当たり前で目の前にいくつも火山があり、どれも活発化して溶岩が溢れ出している。
そして、その周りには火を得意とする魔物や、初めて見るが火の精霊と思わしきものもいる。
「それじゃ、ここでもレベル上げ頑張ろうか」
「はいですぅ...」
「あつい〜...」
あれから切りのいいところまで終わらせて外に出てきた頃には真っ暗になっていた。
最初はとても暑く長くいられないと思っていた俺たちも俺は“簒奪”で、2人は自力で“環境適応”のスキルを獲得したことで少し暑さがマシになり、レベル上げが捗ったのだ。
しかし、地上に戻ってくると住人が1人もおらず、何やら物々しい雰囲気が漂っていた。
俺は2人を宿に帰らせまたもギルドに向かう途中で、平野の方に向かう勇者たちと彼らが率いる兵士たちを見つけた。
「あれから何かあったのか?...ちょっと付いていくか」
俺は“闇無”と“偽装”、そして夜の暗さに“同化”して彼らの後をつける。
「それにしても王ですら説得できなかったんだろ?どうするんだよ攻めてきたら」
「どうするって言ってもなぁ。王やギルガ様とか勇者様以外に山神様倒せる人なんていないだろ」
「いや、そうなんだけどさ。昔戦った時もこの辺焦土になったらしいじゃん。だから逃げた方がいいのかなってさ」
「お前、それ絶対他で言うなよ。敵前逃亡で家族もろとも消されるぞ」
「わ、わかってるよ。言わねーよ。...それにしても今回は何の招集なんだ?とりあえず来いって言われたけどさ」
「さぁ、俺も知らねー。大方あぶれた魔物討伐じゃないか?」
ふむ。どうやらドラゴンと王の交渉は決裂したようだ。そして、今回勇者が兵たちを率いてどこかに向かっているようだが、兵たちもどこに何しにいくかは知らないらしい。
俺はもっと前にいる指揮官の話を聞こうと兵たちを追い抜く。
「なぁ、今誰か通らなかったか?」
「はぁ?兵士じゃないのか?」
「いや、普通の人...冒険者?」
「何言ってんだよ、通るわけないだろ。もう閉門の時間過ぎてるしな」
「それもそうか...」
少し進むと指揮官と話しながら歩いている勇者を見つけた。どうやら4人全員いるようだ。
「山神様を討伐するってことですか?」
「いえ、そんなことはしません。もし彼女と本気で戦えば都民が全滅します。それにあなた達では天地がひっくり返ろうとも勝てませんし。しかし、彼女が降りてきたことで魔物が活発化していますので」
「むっ、そんなこと...!」
「アサヒうるさい。それで?そういうことならわかりますけど...何で夜に?」
「王はあまり冒険者たちが戦っている場所で兵たちに戦って欲しくはないようで。まぁそれはギルドとの盟約で互いの場所を侵犯しないというものがあるんですが」
「ではなぜ?」
「今回の交渉でどうやら王は彼女を怒らせてしまったようで...。彼女の眷属が少し降りてきているんですよ。その後処理は我々がしなければいけないと」
「なるほど。そういうことだったんですね。でも不戦協定は?」
「それは彼女自身が戦わなければいいということのようです。それに王もそれを許している節はありますし」
「わかりました。では山神様の眷属を倒せばいいんですね?」
「そういうことです。今回は滅多にないドラゴン系統の討伐です。あなたたちにも彼らにもいい経験になるだろうと王が」
「わかりました」
なるほどな。どんなことがあったのかまでは知らないが、立ち退きを頼むことはできなかったらしい。
それにしてもドラゴン系統か。さっきからワイバーンの匂いがすると思ったらそういうことか。この辺りの魔物の生息にワイバーンはいなかったはずだから何でかと思ったが。
俺は聞きたいことを聞けたことに満足し、帰ろうかと思ったが、ワイバーンや平野の魔物がどんなスキルを持っているのか気になり少し探してみることにした。
夜は魔物が活発化し、凶暴になるので危険なのだが、俺ならまぁ大丈夫だろう。
そうして“偽装”を解かずに魔物を討伐し、50匹ほど狩って満足した俺は2人の待っている宿へと帰った。
名前:日向 海斗
種族:人間
年齢:18
Lv:194
スキル:
《魔》火魔法Lv.5→New豪炎魔法Lv.3
《耐》Up豪炎耐性Lv.7
《常》New環境適応Lv.5
《能》New火吐息Lv.4 同化Lv.9 魔炎糸Lv.6 炎纏糸Lv.5 闇無Lv.4 狂化Lv.9 壊震波Lv.6 支配Lv.4 咆波Lv.4 飛裂Lv.4 New精力増強Lv.4 New飛行Lv.6
名前:サニア・バードレイ
種族:狐獣人
Lv:129
スキル:変幻碧尾Lv.- 極氷魔法Lv.2 閃爪Lv.4 瞬動Lv.2 闘聖術Lv.1 採掘Lv.2 隠射Lv.2 New環境適応Lv2
称号:尾格者 限界突破者
名前:レイミア・シルフィード
種族:森長耳
Lv:57
スキル:星詠廻転Lv.- 風魔法Lv.8→New雷嵐魔法Lv.2 Up弓術Lv.9 Up遠視Lv.6 Up遠射Lv.7 強射Lv.3 New隠射Lv.4 New環境適応Lv.2
称号星を識る者 風精霊の愛し子
今日のダンジョンで気づいたのだが、レイミアも経験値が溜まりやすいようだ。
そうして改めてレイミアを“鑑定”したところ、“星詠廻転”のスキル効果ではないはずなのにこのスキルが発動していた。
そしてもっと詳しく調べているとどうやら過去に存在した経験値増加スキルを星から読み取って発動していたようで、俺たちに追いつきたい一心で無意識に発動していたようだ。
「俺たちがぶっ飛び過ぎているから気づかなかったが、Dランクダンジョンで57レベルは確かに育ちすぎだもんな」
「そうだったんですね!もっと頑張ります!」
「無理しないようにね。それじゃあ今後のことを話す」
俺は意気込むレイミアに癒されながら、今日の出来事と今後の行き先を話す。
あまり大事にはならなさそうだが、スタンピードが起きそうなこと、それによってここが危険になる恐れがあるので明日、ダンジョンを最速でクリアし、この街を出てとなりの帝国に行こうとしていることを話した。
「わたしはそれでいいよ...」
「ミアもそれでいいですっ!」
レイミアもだいぶ俺に慣れてくれたのか今日の朝あたりからフランクになり、自分のことをミアと言うようにまでなってくれた。
俺は2人の同意を得て行き先も決まったので、明日に備えて休んだ。
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余はイングラス王国の王、ハバネス・オン・イングラスである。昨日、余が自ら民に山神とも呼ばれる古龍サントニアレルゲスとの交渉に赴いた、のだが...。
余は正直予想外であった。あやつがあそこまで頑なにあの場を動かんとは。
「なぜあそこまで頑なだったのでしょうか?」
「わからぬ。余は“鑑定”などできんしな。だが、あやつを“鑑定”した者も変化は見当たらなかったのだろう?」
「はい。ですがあれは奇妙です。彼女はあそこまで傲慢でも頑固でもなかった。何かあったと考える方が確実かと」
「うむ。余もそれは思っておった。だが、考えられる可能性といえばあやつが操られるか心変わりをしたかだが...、おそらく前者であろう。やつの性格上心変わりの可能性は低そうだ。そして、それほどのことができる存在などそうはいない」
「やはり魔王どもでしょうか?」
「あぁ、それ以外にはおらんだろうな」
余は旅の途中に一度だけ魔王と出会ったことがあるし、今は顔見知りの魔王もいることにはいる。
だが、あの山神と呼ばれるほどの力を持つ彼女を操れるほどの存在など心当たりはない。
「だが、討伐はまずい。できるとも限らぬし、奥山の秩序が崩壊してしまう。それに余波で街が滅びかねん」
「それでは、いかがされますでしょうか?」
「やつが降りてきたことで逃げてきた魔物やあやつの眷属たちをまずは一掃せねばならん。兵たちの訓練にもよかろう...。そうじゃな、勇者たちに兵を率いらせよう」
「なるほど。兵たちも勇者様方もいい訓練になりますな」
「うむ。だが、あそこは冒険者のテリトリーじゃ。ギルドマスターには一報入れねばな。今回は余らが筋を通さねばならぬ」
「はっ。直ちに」
秘書が謁見の間を退出し、1人になったことを確認しておれは息を吐く。
「あー、しんど。この喋り方めんどくせぇ。んだよあいつ、急にそっけなくなりやがって」
そうなのだ。
山神、サントニアレルゲスとおれは旧知の仲である。これまでも度々人間の姿でおれの街に訪れて酒を飲んでは昔話をし笑い合った。
だが、昨日のやつは様子が違った。おれの言葉に耳を貸さず、ただ立ち去れの一点張り、ならせめて元の居場所に帰れといっても断固として頷かない。
「今まであんなあいつは見たことがねぇ。なんでも笑って許すやつだったのに...。何があったってんだよ」
もう200年の仲だ、少しくらい話してくれてもいいじゃねぇかと悪態吐きながらまた一つため息を吐いた。
名前:ハバネス・オン・イングラス
種族:王人
Lv:964
ステータス:軀力98524
咒力96253
剛撃97362
堅禦95245
閃煌96527
賢智91286
スキル:闘神之体現Lv.- 覇王之威厳Lv.- 人間道Lv.-
闘神術Lv.- 軀力特自動回復Lv.10 剛力Lv.10 瞬動Lv.10 覇気Lv.10 崩撃Lv.10 覇轟Lv.10 崩天Lv.10 覇墜Lv.10 剪脚Lv.10 咒纏Lv.10
称号:闘神の体現者 覇者 六道一者 闘覚醒 軀の寵愛 力の寵愛 速の寵愛 カリスマ 闘技覚者 咒纏者 限界突破者 超越者
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