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黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
序章
3/365

幕間〜???〜

「きょうは〜ワタシが〜お〜つかい〜」


 ワタシは、久しぶりのお散歩兼お使いに上機嫌になっていた。最近は自分の仕事も忙しくなり、城に控えさせているメイドに頼むことが多かったのだ。たまには陽の光を浴びるのもお肌に大切なのだ。


「キノコに〜野菜に〜お〜に〜く〜」


 左手に採ったキノコや山菜などを入れるかごを持ち、鼻歌を歌いながら美味しそうなものを見つけては入れる。たまに毒々しい見た目のものもあるが、こういうのは意外と味が良いのだ。


 そんなふうに散策していると、突然空が瞬いた。


「まぶしっ!」


 その、いきなり目を灼くような激しい光がワタシの歩く場所の少し向こうに堕ちる。永く生きたワタシでもそんな現象は初めてだったので、興味本意と暇つぶし、そして我が主にいいお土産話が出来ると思い、その光が堕ちた場所へ向かってみた。


「あらまぁ……」


 光が堕ちた場所に着いてみると、そこには、1人の少年が倒れていた。その少年は、髪が黒く体は痩せ細っている。黒髪はワタシの知る限り1人しか知らない。そのもの珍しさから目を離せず、少年をどうしようか迷っていると、思っていたより早く少年は目を覚ました。


「ここは……、どこだ……?」


 少年は、ここに堕ちてきた経緯を知らないようで、辺りをキョロキョロと見渡す。かと思えば、思い出したかのように自らの体を弄り始めた。


「いやん大胆!」


 ワタシはしばらく彼の様子を見てみることにした。一体彼はどんな人間で、どんな行動をするのか気になったのだ。慌てふためくのか、泣きじゃくるのか、そしてこの状況にはいつ気づくのか。


「こういう感じ久しぶりね〜」


 ワタシはそわそわしながら待っていた。彼の観察の邪魔をされないように、彼に気づかれないように周りに“覇気”を放つことも忘れない。


 しかし、彼は予想していた反応を示すどころか、思った以上に冷静に自身と身の回りを認識し始めていた。だが、流石にこの状況は初めてだったのか、しきりに辺りを見回している。


「あっ!バレないように隠れないとっ!」


 ワタシは近くにあった大きめの樹の後ろに隠れた。これなら彼にバレることもないだろう。


 すると、彼が現れてからそう経たないうちに新たな光が堕ちてきた。彼が堕ちてきた時より薄い光、あれは知っている。


 ——神だ。


 気まぐれに生物に味方し、ある時は気まぐれに生物を貶める。人間にとっても、ワタシ達にとっても害悪。『神』とは、この世界を自分の思うようにいじくりまわせるおもちゃとしか思っていない連中なのだ。


「チッ」


 しかも、今回光の中から顕れた神は、神の中でも一際キライなやつだった。ワタシのイメージする神をそのまま形にしたような奴。一瞬、こちらと目が合い、互いに背ける。向こうもワタシのことが嫌いなのだ。


 だが、今回は様子が違うようだ。何やら必死に黒髪の少年へ頭を下げている。気持ちの悪い光景ではあるが、ソレを見られただけで胸の空く思いだ。奴は彼としばらく話をすると、一振りの刀を彼に渡し、また空へと消えていった。



 彼には何か特別なものでもあるのだろうか?



 本来、『神』は一個人の前に姿を表すことなどそうそう無い。あったとしても一国の主や世界を脅かすほどの傑物の前にのみ、そもそもこの世界に『神』が実在することすら、限られた者しか知らない。


「俄然興味が湧いてきたわ」


 彼はもしかしたら将来とんでもない大物になるかもしれない。であれば、今のうちにマーキングしておくべきだろう。いつか、我が主にも利が生まれるかもしれないものは、そのタイミングで手を出しておくべきだ。


 そして、いずれ傑物になる可能性があるのならば、その『芽』の発芽は早いに越したことはない。ここまで冷静に自分の状況を判断でき、対処することができるならこの程度の試練も乗り越えられるはずだ。


「少年くん、ここからは自分で頑張るのよ!」


 ワタシは彼に気づかせない、かつ強さの選別をしていた“覇気”を解除する。そして、シャドウウルフのリーダーへ視線を誘導する。すると彼もシャドウウルフに気付いたようだ。


「っ!」

「あら!正解よ」


 シャドウウルフを見つけた瞬間、ギリギリで声を抑え、戦闘態勢を取る。そう、ここで声を上げなかったのはとても偉い。今は、ワタシが乱入を防いでいるが、こんな森の中、魔物の巣窟で大声をあげようものなら、自分から餌の場所を伝えているようなものである。


 そして、敵を見つけてから戦闘に意識を切り替えるまでも早い。以前はどこかで戦っていたのだろうか。それにしては体の線が細すぎる気もするが。


 そんなこんなで彼とシャドウウルフたちによる戦闘の火蓋が切られた。




 結果から言おう。


 彼は満身創痍、予想以上に傷を負いながらも見事、シャドウウルフに勝つことが出来た。感想としては、戦闘は完全に素人だ。判断能力は高いが、それも通常の域を出ない。


 現状のままでは、とてもじゃないが我が主どころか、この森を出るまでに死んでしまう。なぜ、『神』なんかに目をつけられているのか甚だ疑問ではあるが、それほどまでの潜在能力があるのか、“鑑定”を持っていないため判断できない。


「あ、倒れた」


 戦いに勝利したことで緊張の糸が切れたのか、単純に疲労が限界に達したのか、あるいはその両方か。少年は、力尽きたように血と肉が広がった地面に倒れ込んだ。


 ただ、このまま放置しているとこの血の匂いに釣られた魔物がここに集まってしまう。それに、少年の傷では、このままでは明日まで命を繋ぐことはできないだろう。


 ワタシは完全に意識を失った少年に近寄る。それだけで漁夫の利を狙っていた魔物ものは、いなくなった。


 あれから2日が経った。少年は一度も目を覚ますことなく、けれど細々しくも命は繋いでいる。とりあえず体を清潔にする必要のあった彼は川のほとりまで連れてきた。そこできれいな水で傷口を洗いながら応急手当をしておく。


 ワタシの有する魔法を使えば、欠損までは治せなくとも、傷を完治させることは出来る。けれど、それでは今回の戦いで負った彼の傷が意味のないものとなるし、何より面白くない。彼が今回の戦いを経て今後どのように成長していくのか見てみたくなったのだ。まぁ——


「傷がある男の子って、カッコいいわよねっ!」


 その理由が一番大きかったりする。


「あ、そろそろ起きる頃かしら」


 今まではなかった、少年のわずかな吐息に声が混じる。そう遠くないうちに目を覚ますことだろう。幸い、この辺りの魔物は片付けておいたし、シャドウウルフの肉は鮮度を保った状態で残してある。


 この先、彼がワタシの予想通り生き延びてくれれば、またいつか出会うこともあるだろう。直接言葉を交わすのはその時でも遅くはない。ワタシは、少年が目を覚ます前に念入りに痕跡を消してその場を離れた。


「ん……、ここは……」

お読みいただきありがとうございます。


今回は幕間ということで、前回ご指摘のあった世界観について少し説明したいと思います。



まず、今作は最近メジャーな転生と転移が微妙に融合したものです。


彼、海斗のいるこの世界はいわゆる『剣と魔法の世界』です。


彼のいる大陸、『ユーバニス』は3つの大国と多数の小国がある人族領、数は少ないが数多の力と各魔王ごとの領地を持つ魔族領が大陸のほとんどを占め、他は様々な種が生存しています。


また、ここに住む人々はスキルあってこその生活をしています。そして、スキルは先天的なものと後天的なものがあります。


今回のお話は、よくある魔王を倒せやら、奴らを見返してやるみたいなものではありません。


地球での生活に退屈さを感じていた海斗が、異世界に来て、好きに過ごしていくものとなっています。


ただ、タグにも書いてあります通り、ほのぼのではなく、割と戦闘もあるものですので、楽しんでいただければ幸いです。


また、『ここがわからない』など教えて頂ければ、適宜後書きに追加していきたいと思います。

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[気になる点] 火蓋を切って落とすは誤用です。 [一言] 火蓋を切るです。 もっと日本語を大事にしてほしいです。
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