第26話 レイミア育成計画
俺たちは宿での騒動があった後ずっと宿を探していたのだが、夜中ということもあってどこも開いてすらいない。
「うーん、これじゃ休めないな...。かといって王宮には行きたくないしなぁ」
「わたしたちのことを考えてるなら気にしなくていいわ...」
「まぁ、それもあるんだけど、単純に行きたくないんだよね。めんどくさそうだし」
「そうなのね...。あ、あそこは?扉が開いてるわ」
「お、ほんとだ。ちょっといってみようか」
歩いていると見えてきた宿に入るとそこには、椅子に座ってなお腰の曲がったおじいさんがいた。
「すいません、部屋を借りたいんですけど」
「んー?いーぞー。1人銅貨5枚じゃ」
「いいんですか?ありがとうございます」
「何を言っとる、当たり前じゃろ」
「ありがとうございます。それじゃおやすみなさい」
「んー。亜人がいるわけでもないのに律儀な子じゃのう」
その声は階段を上っていく俺たちにちゃんと聞こえていた。よかった、彼は目が開いていなかったが、それでも俺の鼻のように別の手段で判断されていたら危なかった。
俺には“幻惑”がある。
それで彼女たちの特徴を消し、普段から人間にしておけばいいと思い念のため彼女たちに“幻惑”をかけていた。
なんとかバレなかったようだ。
まぁ、ひとまずもう眠いので寝ます。
それにしても、レイミアは1度も起きなかったな...。結構眠り深いのか。
次の日、俺たちはこの都市にあるダンジョンへ行くことにした。これはレイミアが提案したことで、やはり俺たちに守ってもらうことに申し訳なさを感じているようだ。
当然、俺たちもまだまだ強くなりたいし、新しいスキルも欲しい。なので、特に反対意見もなくすんなりと決まった。
この都市のダンジョンは3つあり、Dランクダンジョン、Cランクダンジョン、Aランクダンジョンがある。
今回はレイミアのレベル上げと所持スキルの練習、可能ならば新スキルの獲得をするので最終目標はクリアだが、ゆっくり進むつもりだ。
まずはレイミアの弓を買い、それからダンジョンに向かうとしよう。
無事、レイミアの気に入った良い弓も買えDランクダンジョンへ到着した。
俺たちはダンジョンの入り口で認証してもらい(レイミアはまだ身分証を持っていないのでここから元の奴隷の姿)中へと入った。
少しの浮遊感の後、中は以前行ったダンジョンの中のような荒涼とした地帯ではなく、湿気の多い沼地帯だった。
湿った空気が漂い、足元は泥濘化していて歩きにくい。それに靴も汚れるので気分が滅入ってくる。
「沼地かー。足を取られるから戦いにくいなぁ」
「でもレイミアなら弓だからあまり動かなくていい...」
「確かにそうだな。じゃあレイミア、捌き切れない奴は俺たちでやるから、遠くの敵を弓で倒していく作戦でいこう」
「はいですっ!わかりました!」
レイミアはふんすっと勢い込み、遠目に見えるリザードマンに狙いをつける。
それにしてもあの距離が普通に見えるのか。俺は“千里眼”を使わないと見えないのに。
それにレイミアの場合、“風魔法”で弓の距離補正がさらにできるから、より弓士向きなのだろう。
そして、レイミアが放った矢は綺麗にリザードマンの頭に当たった。
だが、威力がまだ低く倒しきれない。リザードマンは周りにいた仲間たちとこちらへ向かってきた。
「ひ、ひやぁぁぁ!こっちに向かってきますぅ!」
「レイミア!落ち着いて狙え!ここで怖がっていたらいつまでも弱いままだぞ!」
「うぅぅぅ。それは嫌ですぅ!」
レイミアは怯えを引きずりながらも、懸命にリザードマンへ矢を当てていく。怖がりながらもきちんと当てているあたりもともと素養は高いのだろう。
そうして5発めくらいでリザードマン1匹を倒し、経験値が入った。だが、残りの4匹までは手が回らず弓では近すぎる位置に来てしまった。
それを瞬きする頃にはサニアがあっさり倒す。そして俺は乗り遅れた感じを出しつつも1匹を倒す。
『経験値を獲得しました。スキル:簒奪により取得経験値が半減します。スキル:簒奪の効果により、スキル:槍術 水吐息 突破を獲得しました』
名前:日向 海斗
種族:人間
年齢:18
Lv:194
《能》Up水吐息Lv.4 New突破Lv.4
名前:サニア・バードレイ
種族:狐獣人
Lv:129
スキル:変幻碧尾Lv.- 極氷魔法Lv.1 閃爪Lv.3 瞬動Lv.1 闘術Lv.9 採掘Lv.2 隠射Lv.1
称号:尾格者 限界突破者
名前:レイミア・シルフィード
種族:森長耳
Lv:24
スキル:星詠廻転Lv.- Up風魔法Lv.4 Up弓術Lv.3
称号 星を識る者 風精霊の愛し子
スキル 突破 槍術の武技。突進力を活かして切っ先を突き込む技。
それから俺たちは1日かけてゆっくりとレイミアのレベリングをし、3層まで潜った。
このダンジョンはDランクなので全20階層だ。おそらく5層ごとにボスがいるはずなので、あと2層だな。それまでになんとかDランクダンジョンの適正レベルにまで育って欲しい。
ちなみに各ダンジョンの進入可能レベルはFだと10以上、Eは20以上、Dは30以上、Cは40以上、Bから上がり60以上、Aは80以上、Sは未知数となっている。
だが、あくまで進入可能であって適正ではない。
だいたいそのダンジョンに出てくる魔物とほぼ同じレベルが進入可能となるが、適正というよりマージンはそれよりも10レベルより上となる。
なので、せめてボスまでにはレイミアを50あたりにはしたい。なのでそれまではボスへ行かず、5層でレベリングするつもりだ。そして今日の成果はこんな感じ。
名前:日向 海斗
種族:人間
年齢:18
Lv:194
スキル:
《魔》水魔法Lv.7→New極氷魔法Lv.2 Up光魔法Lv.7
《耐》毒耐性Lv.7→New猛毒耐性Lv.1 麻痺耐性Lv.8→New特麻痺耐性Lv.1
《常》Up魔力自動回復Lv.7
《能》Up融体Lv.6 Up水吐息Lv.4
名前:サニア・バードレイ
種族:狐獣人
Lv:129
スキル:変幻碧尾Lv.- 極氷魔法Lv.1 Up閃爪Lv.4 Up瞬動Lv.2 闘術Lv.9→New闘聖術Lv.1 採掘Lv.2 Up隠射Lv.2
称号:尾格者 限界突破者
名前:レイミア・シルフィード
種族:森長耳
Lv:36
スキル:星詠廻転Lv.- Up風魔法Lv.6 Up弓術Lv.5 New遠視Lv.3 New遠射Lv.3
称号星を識る者 風精霊の愛し子
こんな風に各々割と成長した。
俺とサニアはまだレベルが上がらないが、どうやら100を超えるとそれ以下の魔物を倒してもなかなか上がらないようだ。
俺はスキルの効果で経験値が半減するが、成長促進のスキルを持っているサニアですらほぼ上がらないのはそういうことなのだろう。
だが、レイミアの成長は著しい。新しいスキルも覚えたし、近づかれても怖がらなくなった。やはり実践に勝る訓練はないな。
そんなこんなでダンジョンから宿へ帰ってくる途中、厄介な知らせを聞いた。
「ねぇ聞いた?山神様が降りてきてるって」
「聞いたわ!なんか今まで奥地にしかいなかった強い魔物が平地に降りてきてるから何かあったのかって調査しに行ったら、山神様まで降りてきてるみたいね!」
「怖いわぁ。やっぱり山神様討伐しちゃうのかしら」
「でも討伐しちゃったら魔物が氾濫するって王様言ってたわよ?」
「そうなのよねぇ、どうするのかしら?」
「怖いわねぇ」
この話を聞いた俺は、2人を宿に戻らせギルドに向かった。
そこで色々話を聞くと、どうやらこの国には山神様なるものがいるらしい。
だが、本来山から降りて来ないはずの山神様がなぜか降りてきていて、それを恐れた奥地の魔物が逃げてきた結果、人の住んでいるこの辺りまで出てきているようだ。
この都市はダンジョンが有名なため、そちらをメインにする冒険者が多く集まる。
そのため、平野はゴブリンやオークなどの初心者や初心者上がりの中級者などが相手にするそうだ。
だが、今回の件でその平野に中級者では相手にならない魔物が多数出たらしく、日頃ダンジョンメインの冒険者が調査に駆り出された。
それで山神様が降りてきているというのが発覚したらしい。
そして、この山神様というのは平地の奥に聳える岩山の頂上を住処とするドラゴンらしい。
曰く、そのドラゴンは人語を解し、この国の王と盟約を交わして、不戦無侵犯協定を結んでいるようだ。
だが、そのドラゴンが何の断りもなく人里の近くに降りてきた。なので明日王自ら事情を聞きに行くらしい。
普通、こういった細部の事情は伏せられるものだが、王が拡散せよといったらしい。また、王自らがとんでもなく強いので国民たちもそこまで悲観してはいないらしいようだ。
「と、俺がギルドで聞いたのはそんなところだな」
「ドラゴン...でもなんで不戦協定...?」
「あぁ、なんか今の王が昔、王になる前に戦ったことがあって決着が付かなかったらしい。それでその時の戦闘の余波で、今の王都がめちゃくちゃになったから不戦協定を結んで、互いに領域を侵犯しないようにしたらしい」
「そんなに強いの...?ここの王様...」
「らしいな。見たことがないからわからないけど」
その後、俺たちは今後のことをいくつか話し決まったことはドラゴンがもしこの王都に襲ってくる、あるいは奥地の魔物が氾濫するなどの事態になれば逃げる。
まず理由の一つとしてレイミアがまだあまり戦えないからだ。さらにドラゴンといえば魔物の最強格だと思われる。
いくら俺たちが人間離れしたといってもたかが人間だ。まだ見たことがないと言っても、万全を期するならドラゴンには敵わないと思って行動した方がいい。
「ドラゴンと互角ってどんだけ王様強いんだよ...」
ブクマとチャンネル登録よろしくね!




