第25話 闇の攻防
「それにしても勇者か。いるかもなとは思ってたが本当にいるとはなぁ」
「あいつ嫌い、ウザい...」
「...ご主人様、....あの、ほんとに酷いことするつもりだったんでしょうか?」
「うーん、それは分からないけど、レイミアの目から見てどう思った?」
「えっとぉ...、悪い人ではないとは思います。あ、あれですよ?!ご主人様が悪い人とかそういう意味ではなくてですね?!あぅぅぅ」
「ははっ分かってるよ、レイミア。別に怒ってるわけじゃないから。でもレイミアには嫌われてるのかなって思ったけどね」
俺がそう笑いながら言うと面白いぐらいに、レイミアは慌てて弁明してくれる。それを俺とサニアはほほえみながら眺めていた。
今日、2人はあの勇者たちに会うまで俺の頼んだお使いを終わらせた後、自分たちの服や小物、レイミアのための弓を探していた。
王都なら何かしらいい武器はあったと思うのだが、なかなか手に馴染むものがなかったらしい。
しかも、レドックの町の時のように女子供に武器を売らないという店もあったようだ。
武器屋の店主が冒険者の実力を測れないでどうするんだよ。
「主さま、怒らないで...。何かをされたというわけじゃないから...」
「あぁそれは分かってる。ただ、理不尽だなと思っただけだよ」
俺は慰めてくれるサニアを撫で、3人で食堂へと向かった。
今日の夕食は勇者が街に訪れたからか、昨日よりメニューが多かった。
かぼちゃに似た野菜の煮物とサラダ、そしてメインは昨日と同じ虎の肉だが、こちらは醤油のようなもので煮込まれている。
この肉は筋切りがちゃんとされており、より柔らかくしてあるので肉が舌の上で蕩ける。
そうしてゆっくり食事を楽しみ、また部屋に戻って買ってきたものの確認をし終わった後、ゆっくり休んだ。
「ここだな、あの亜人どもとそいつらの主がいる宿は」
「あぁ、ドブリさんからの情報だからな。確実だよ」
「にしてもほんとにホイホイついていくんだな、やっぱガキは楽でいいや」
「ほんとだな。この街に亜人を連れて来る方が悪い。これなら王もベルズ教を国教にしてくださるだろう」
「おら、ぐちぐち喋ってねぇでいくぞ。だが、気を抜くな。情報が確かならレドックの町のサイタスさんがやられたって話だ。もしそれが正しいなら俺らも無傷じゃすまねぇ」
「お頭〜ガセですって。サイタスさんがそう簡単にくたばるわけないじゃないですか。大方、バレそうになったんで死亡の情報を回したんじゃないですかね?」
「まぁな、その可能性はある。本当に死んだにしては情報が出回るのが早すぎるからな」
俺は先に部下たちを先行させ、ドブリから部屋番号を教えてもらい、突入させた。
しばらくすると上階から物音が聞こえてくる。
「お頭!助けっガッ!」
「ヤベー!ヤベー!なんでバレてんだ!あの耄碌ジジィ裏切りやがったな!?」
おかしい。
宿の店主は我々の中でも上位に位置する幹部だ。裏切るはずがない。
俺は精鋭の部下を引き連れ、すぐさま宿に駆け込む。
やはり店主も知らなかったのか、驚いた顔をしている。上の部屋に行くとすでに先行した部下たちは全滅していた。
「おっ、親玉かな?」
「なぜ気づいていた...?」
「むしろなんで気づかないと思ったんだ?あんなタイミングでこいつらを連れ回してた俺のところに、事情は分かっていますよとばかりに宿を勧めてきた。何かありますよと言っているようなものじゃないか」
「ちっ、バカじゃなかったのか。これは俺たちがやられたな」
「まぁ俺たちみたいなガキを騙すにはこの程度でいいと思ったんだろ?それに心優しい勇者様に入れ知恵をして彼女たちを諭せば、ホイホイついていくと思ったか?」
「それは俺ではないな」
「てことはお前らの組織の誰かってことだな」
「...............」
彼らが宿に攻めて来る15分前、俺はこの宿の周りに人が集まって来るのに気がついた。ほぼ同じタイミングでサニアも気づいて、目を覚ましていた。
「このまま、やつらのうちの誰かでもこの宿に入ってきたら迎撃するぞ」
「分かったわ...レイミアは起こす?」
「無理に起こす必要は無いよ。でも騒がれても困るから」
そういうと俺はレイミアの周りに風で遮音結界を張った。
これはあのレドックの町の親子の時にやった“雷嵐魔法”の応用だ。窒息死させずに遮音することができるようになった。
「来る...!」
やつらは迷いなく俺たちの部屋に入ってきた。俺たちが起きているとは思わなかったのだろう。無遠慮に扉を開き、それと同時にサニアに引き裂かれた。
そして、次から次へと来る男たちを退けていると最後にボスらしき男とその取り巻きが入ってきた。
どうやら俺たちが襲撃に気づいているとは思わなかったらしく、非常に驚いていた。
気づいた理由など簡単だ。
もともとこの宿を勧めた店主のことなど最初から信用していなかったので、“鑑定”をしたらベルズ教の派生宗教の幹部だった。
それにたびたび宿を出てどこかに行っていることを匂いで知っていた。
また、サニアが宿の裏で俺たちを襲撃することを話していたのをたまたま聞いたらしく、それが最大の警戒理由となった。
それでも泊まったのは、あれ以上探しても宿を取れそうになかったからだ。
「ま、そういうわけだ。見た目で判断せず、襲うなら万全の準備をするんだったな」
「あぁ今度から気をつけるよ」
「そうしてくれ。次があるならな」
俺は逃げられないように“大地魔法”で扉や窓を塞ぐ。最初から逃げようとは思っていなかったか、それとも逃げられると思っていなかったのか真っ直ぐ俺へと向かってきた。
サニアには手出しせず、流れ弾がレイミアに当たらないように守ってもらい、俺はヤツを迎撃する。
名前:ナハト・シーク
種族:人間
Lv:59
スキル:剣聖術Lv.6 飛裂Lv.4 見切Lv.5 俊敏Lv.4
俺は今、剣術以外の戦い方を身につけるため武術使いには肉弾戦や糸で、魔法使いには魔法でという鍛錬をしている。
今回、やつは速さを軸とした剣での戦いだ。なので俺は無手で構え、真っ直ぐ向かってくるやつに“震空”を放つ。
これは透明なため見にくいが、空気が震える際に音がなるので牽制になる。ナハトはこれを剣で切り裂き、そのままの勢いで斬撃を飛ばしてくる。
俺はそれを拳でかき消すと同時にやつに突っ込み、場所が入れ替わるタイミングでナハトに糸を絡み付ける。
そして“炎纏糸”を使い糸に炎を纏わせることでヤツを燃やした。だが、火力が少し低いのか、なかなか燃えないので“火魔法”で火力を底上げした。
しばらくするとナハトは燃えカスとなったが、宿も燃えカスとなった。一応サニアに火を消してもらったが、これだけの火事が起きたのに誰一人見にくるものはいない。
なぜなら人間の匂いが全くしない。おそらくこの辺り一帯はこいつら傘下のエリアで、あらかじめ人払いをしていたのだろう。
「バレないからありがたいんだけど、不気味だよね」
「まぁいいわ、行こう...」
「そうだな、さっさと逃げるか」
レイミアは俺が背負い、俺たちはすぐにそこから離れた。
『経験値を獲得しました。スキル:簒奪により取得経験値が半減します。スキル:簒奪の効果により、スキル:剣聖術 飛裂 見切 俊敏を獲得しました』
名前:日向 海斗
種族:人間
年齢:18
Lv:194
《能》New飛裂Lv.4 New見切Lv.5
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