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黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
第7章
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第212話 結集

完全に日にちを間違えておりました!

すみません…。

 その日、精霊たちで活気溢れる精霊界は、いつも以上に慌ただしかった。


 理由は外にいる精霊からの一報。ついに【色欲】が軍を大幅に動かした、との情報が入ったのだ。


「ついにこの時が来たな……。思っていたより早かったが」

「そうですね。……本当に始まってしまうんですね」


 ルーミョルドは俯きがちにボソッと呟く。ミユたちが精霊の試練を始めてから一週間が経過していた。もともと想定していた開戦はさらに一週間後。こちらも準備はある程度完了しているが、少し不安が残る。


 しかし、ルーミョルドはその不安を隠して顔を上げ、まっすぐと前方を向く。視線の先にはミユ・サニア・テミスの3人とその側に浮かぶ3柱の聖霊。そして後方にずらりと揃う名も無き精霊たち。


 中には小さすぎて目では見えないほどの精霊もいる中、多種多様な精霊がここに集った。5大元素の精霊にその派生の精霊、それらから位階の上がった聖霊がミユたちのノリに合わせて鬨の声を上げている。


 不思議なのは光と闇の精霊、聖霊、星霊が極端に少ないことだろうか。いないことはないのだが、数が多いはずの精霊でさえ数える程度だった。


「皆がやる気に満ちているのはとてもいいことなのですが、やはり心配です……」

「大丈夫、とは言えないかもしれないが、可能な限り彼らは前線には出させない。あくまで俺たちの補助がメインだ。それに——」


 ちら、と俺は右に視線を向ける。精霊たちが戯れているのはミユたちだけではない。俺が視線を向けた先にいる集団にも精霊たちは興味津々で到着した途端、囲まれていた。


「……えぇ。彼らは皆清い心の持ち主であるのでしょう。古くから自然と共に生活していた、というのは本当のことだったのですね」

「あぁ。まさかこんなに早く来てくれるとは思わなかったけどな」


 そんな話をしていると、精霊に囲まれている集団から1人の青年が肩に一柱の精霊を乗せて俺の方へ来た。


「メルエト」

「お久しぶりです、カイトさん。呼んでいただきありがとうございます」

「村のこともあるのにすまないな」

「いえ、恩人の頼みですから。それに聞けば我々にも因縁がある相手なのだとか。それを聞いて黙っていられるほど温厚ではありませんからね」

「恩に着るよ」


 それから二、三言葉を交わしてメルエトは俺とルーミョルド、そしてミユたちに一礼して仲間の元へと帰っていく。


 そう。今回の【色欲】との戦いに快く参戦を表明してくれたのが、先日【暴食】と戦った際に共に奮闘したエルフの一族だった。


 あれから日が経ち、亡き村長の代わりに防衛軍の隊長であったメルエトが村長に就任したらしい。若くして就任したメルエトだが、エルフの仲間たちからも信望が厚かったことで反発は起きなかったらしい。


 また、メルエトは少し離れた他のエルフたちにも声をかけてくれ、メルエトのいた村民の数よりも数倍多いエルフの戦闘員を連れてきてくれた。


 連絡はテミスにやってもらっていた。どうやらダンジョンでグリーンエルフの村にいた時、彼らの通信を傍受したことがきっかけで、軽い意思程度だが、自分からも遠方に飛ばすことができるようになったのだとか。


 正直、何を言っているのか理解出来なかったが、テミスがそれを行い、こうしてたくさんのエルフたちが参加してくれたのだからいいだろう。


 そして、もう一つ挙げるなら精霊界には入ってきていないが、さらにもう一つの部隊が動いているという連絡があった。現在は、一歩先に【色欲】領にいるらしい。




 こうして、俺の思っていた以上の戦力が整った。総数は精霊も含めて約2000、半分近くが精霊たちになる。だが、それでも【色欲】に比べると圧倒的に少ない。先行して潜ってくれている集団もエルフたちと人数は大差ないのだが、奴の動員できる数を考えるなら戦力差は絶望的だ。


 だからこそ、俺たちの作戦が意味を為す。


 どちらとも戦争を示し合わせたわけではない。奴も国を攻めようとしているわけではないからか、宣戦布告もない。いや、ある意味【色欲】の近隣国に送っている俺の手配書の文言が宣戦布告になり得るか。


 どちらにせよ俺に直接送られたわけではない。にもかかわらず、奴は国周辺の平地に兵を忍ばせている。


 自然と一体化する『精霊』という諜報員は想像以上に優秀だった。


 現在、【色欲】軍は忍ばせている兵はそのままで広く薄く軍を展開している。おそらく向こうは向こうで俺たちを見つけるのは困難なのだろう。数が少ない上、奴らからしたら俺たちがいつ攻めるかまでは把握できないはずだ。


 そこが奴らの隙を突く基点となり得る。


「では、改めて!集まってくれてありがとう。皆種族や経緯は違えど、ともに同じ敵を持つ同士だ。今この時から我らの間に垣根はない!」


 俺自身に集まった視線に応えるように演説をする。さっきまでどこか慌ただしく浮ついていた空気は、一気にピンと張り詰めたものに変わった。


「決行は明日、深夜12時。それまではゆっくり英気を養ってくれ。……これ以上奴を、【色欲】の魔王を許すな!!」

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