第18話 鍛冶師の町〜レドック〜
町を出てから2日が経過した。
俺たちは他の冒険者のように、商人の護衛任務と一緒に次の町へ向かうというようなことはしておらず、気ままに歩きながら魔物を倒し、女将さんが教えてくれた鍛治師の町へと向かっていた。
俺もサニアもあまり鎧をつけて戦いたくないタイプなので鎧に魅力はないが、何かあればと思い目的地にした。
また他の理由としてはこの2日でサニアは新しいスキルを手に入れていた。
名前:サニア・バードレイ
種族:狐獣人
Lv:127
スキル:変幻碧尾Lv.- 水魔法Lv.8 迅爪Lv.9 俊敏Lv.6 New闘術Lv.2
称号:尾格者 限界突破者
そう。“闘術”を手に入れたのだ!
むしろ何故今まで手に入れてなかったのかと思うぐらい今更だった。
理由としては爪で倒しているから会得していなかったらしい。しかし、いまや爪ではレベルとステータスが開きすぎたせいで敵を細切れにしてしまい肉が取れない。
そこで蹴りで魔物を倒しているといつのまにか覚えていたようだ。
「主さま、鹿の魔物がいたから取ってきたわ...。食べたい...」
「あぁ、ちょっと待っててね。今野菜を切ってるから」
俺はサテュラの町を出る前に一通りの調理器具は買ってきていた。
日本にいた頃は大学生で一人暮らしをしていたし、料理もそれなりにしていたのであれば便利だと思ったのと、荷物が多くなったとしても俺には“限倉庫”があるので、並大抵ではあふれ返らないからだ。
そして野菜を切り終わった俺は、沸騰した鍋の中に野菜を入れ、煮込んでいる間に鹿の解体をする。
本当はこの鹿も知らない魔物なのでスキルが欲しいのだが、俺はまだしもサニアはレベルだけが高くなってスキルレベルが付いてきていない。
それではこの先ステータスに振り回されるだろう。それらの特訓も兼ねてサニアに魔物を狩らせているのだ。
鹿を“解体”して血抜きをし、血が抜けた後ブロック状にして鍋に放り込む。
そこにサテュラの町で手に入れた調味料や肉の臭み消しのための葉っぱを入れていく。
そうしてできたシチューは流石にあの宿のものには遠く及ばないが、割と美味しくできたと思う。
俺たちはシチューを食べ終わり、陽も落ちてきたのでさぁ寝よう、とした時、こちらに近づいてくる複数の匂いを感知した。
そのことを“異種伝心”でサニアに伝えるが、サニアも気づいていたようだ。しばらくすると森の奥から10人ほどの人間がやってきた。
「おーいたいた。バカみてーに明かりつけっぱなしにしちゃってー。ここにいますよーって言ってるようなもんじゃねぇか。おーい!すいません!どなたかいませんかー?」
「どうしたの...?こんな森の中で...」
「いやー迷っちまいましてね。こんだけ人数いるもんだから同じ場所に留まると魔物に見つかっちまいそうで。少し一緒にいさせてもらってもいいですかい?」
「ええ、いいわよ...。ただテントの中には入れられないわ...」
「いやーありがたい!そこまで図々しいことは言いませんよ!」
「それじゃあわたしは寝るから邪魔しないでね...」
「へいっおやすみなさい!......おい、いくぞ」
全部聞こえてるんだけどな。獣人の五感が鋭いことをこいつらは知らないんだろうか?
そうして一斉に襲ってきた盗賊をサニアは倒していく。彼らは嘆く暇もなく全てバラバラの生ゴミになってしまった。
「バカな人たちね...」
サニアの“水魔法”でさっと辺りを掃除して匂いも消し、改めて就寝した。
あれから10日ほどかけてゆっくりレベリングしつつ進んでいると、鍛治師の町レドックが見えてきた。
結局レベルは上がらなかったが、スキルの方は割と成長した。といってもやはり俺は戦っていないので上がっていない。
名前:サニア・バードレイ
Lv:127
ステータス:
スキル:変幻碧尾Lv.- 水魔法Lv.8 迅爪Lv.9 Up俊敏Lv.7 Up闘術Lv.6
称号:尾格者 限界突破者
「割と成長できたな。やっぱりこのスキルは優秀だな。レベルが上がりやすい」
「そうね...。100を超えてから余計に育ちやすくなってるわ...」
「俺は刀があるからいいけど、サニアには何かナックルのようなものがあると爪を壊さずに済んだりするかもな」
「ナックル...?爪を守るの?」
「うーん、少し違うかな。拳を守るやつっていう感じかな?」
「なら爪は関係ないんじゃない...?でもあった方がいいのかしら...」
「まぁいいのがあったらにしよう。無理に買う必要もないしね」
「そうね...」
そんなことを話していると、ようやくレドックの町の検問所に着いた。
そして、身分証を見せて中へ入ると視界の殆どが鍛冶屋で、住人の殆どがドワーフだった。
「これは...すごいな。本当に鍛治の町って感じだ」
「すごい...人間の方が少ない...」
「ほんとだな。この町にもギルドはあるようだから一度行ってみて、その後宿を探そうか」
「わかったわ...」
そうして俺たちは見覚えのある建物の中に入り、クエストボードのところへいく。
目的はそこに貼ってあるクエストを見て、どんな魔物がいるのかを確認することだった。
「魔物の数はあまり多くないな。そのかわり鉱山採掘の依頼が沢山ある。鉱山採掘って依頼するものなんだな、初めて見た」
やはり鍛治師の町だからなのか、それとも鉱山が多かったから鍛治師の町になったのかは分からないが、鉱山採掘の依頼がとても多かった。
他には、どうやらダンジョンが1つ存在するようで、そのダンジョンでしか取れない鉱物も複数あるようだ。
それの納品依頼なども沢山あった。ダンジョンはいつか行ってみたかったので、今度行ってみることにしよう。
「よし、見たいものは見られた。それじゃあ宿を探して鍛冶屋を見て回ろうか」
「...こくっ」
しばらく宿を探して回っているが、なかなかピンとくる宿がなかった俺たちは唯一食堂が付いていた[火の渦]亭に泊まることにした。
「とりあえず食堂がある宿を取ったけど、ここも美味しいといいな」
「そうね...お肉が美味しければ許すわ...」
「何をだよ...」
宿の値段は1人銅貨10枚と少し高めだった。その分ベッドはいいものだったし、部屋も広かった。
そして、当初の目的通り、サニアの武器を見繕いに行くことにした。
そうして、色々な鍛冶屋を見ていると何かに惹かれたのか、サニアが1つの鍛冶屋の前に並んでいる武器を見つめている。
それは日本ではレッグガードと呼ばれるであろう防具だった。
しかし、日本に売っていたものと違い、何かの魔物の牙のようなものが膝あたりに来る部位に付いている。
それはレッグガードといっても足を守るというよりかは、敵を蹴り殺すことを目的としたようなものだった。
「サニア、それ欲しいのか?」
「欲しいけど、高いから...」
「欲しいならいいじゃないか。それに買えない値段じゃないし。いいよ」
「おいおい、嬢ちゃん。これは使うためにあるんだぞ?観賞用じゃねぇ。帰んな帰んな」
「わたし使えるわ...」
「そんなほっそい体で何ができるってんだ。それならまだ同じ細くても兄ちゃんの方が...っておい!な、なぁ兄ちゃん、その刀ちょっと見せてくんねぇか?!」
「あ、あぁそれはいいが、この子はちゃんとそれを使いこなせるぞ。だから売ってくれないか?」
「はぁ...、わかったわかった!買いたいなら買いな!銀貨5枚だ!...ほれっ買わせたろ?!だからその刀を見せてくれ!」
はぁ、もっと丁寧に接客して欲しかったんだが...まぁサニアが喜んでいるからいいが。俺は黒刀を店員に渡した。
「ほら、これでいいか?」
「おぉ!これは...すげぇな。初めて見たぜ、伝説級!兄ちゃん!これどこで手に入れたんだ?!」
「教えられないな」
まさか神にもらったとは言えまい。それに俺はこのドワーフの態度にいい加減イライラしていた。
俺に対して態度が悪いのもイラつくがまぁいい。しかし一番は、彼女を侮り、適当に相手をし、そして自分のことしか考えていないことだ。
「なんでだよ!?どこで手に入れたかぐらいはいいだろう?!どうせ兄ちゃんには扱いきれてないんじゃないか?!それだったら俺に売れ...ヒッ!な、なんだよ」
「いい加減黙れ。俺とサニアの実力すら見抜けない奴に売るわけがないだろうが。設定価格の武器を買ってやっただけありがたく思え」
俺は気づかぬうちに“威圧”を発動させてしまっていたようだ。だが、無意識なためか俺のレベルがぶっ飛んでいても相手にはあまり効かなかったらしい。
それに“威圧”もそこまで高いレベルではないしな。
俺はドワーフから刀をふんだくって取り返し、足早に別の店へと向かった。
「すまなかったな、サニア。嫌な思いをさせて」
「ううん、別にいいわ...。それよりもこれ、ありがと...」
「あんな奴が作ったものだけどいいのか?」
「いい、主さまに買ってもらったものだもの...」
「そっか、サニアがいいならいいんだ」
そうしていくつか鍛冶屋を回ったが、サニアが目を惹くものは見つからず、俺もいいローブを見つけることは叶わなかった。
その内の1つに他の店でも刀を見せてくれと言われ、嫌な予感がしたが、そのドワーフは丁寧に接してくれたため貸し出したところ、武器のグレードの話を聞かせてもらえた。
そのドワーフが言うには、武器のグレードは7つあり、上から《創星級》(ジェネシス)、《神話級》(ミース)、《伝説級》(レジェンド)、《英雄級》(ヒロイック)、《達人級》(エキスパート)、《稀少級》(レア)、《一般級》(コモン)となっている。
そして、《一般級》は見習いが、《稀少級》は三流から二流が作れる。《達人級》や一部の《英雄級》は一流や超一流が作れるようになる。
そして、《伝説級》は作れることには作れるが相当修行し、なおかつ才能に恵まれていないといけないらしい。
また、世の殆どの《伝説級》は高難度ダンジョンのドロップ品から出てくるそうだ。
《神話級》は作ることは出来ず、高難度ダンジョンのボスや、超高難度ダンジョンでしか手に入らない。
そして最後に、《創世級》に至っては伝説やおとぎ話の中でしか確認されておらず、実際に存在しているところを確認されたことは無いらしい。
その夜、俺たちは宿の食堂でご飯を食べていた。
まぁここもたしかに美味しいのだが、やはり[羊の沼]亭の食事が美味しすぎたせいか、少し物足りなく感じてしまった。
...ちなみにお肉をたくさん食べられたサニアはとても満足そうだった。




