第13話 盗賊頭目戦『後編』
第9話のサニアのスキル“変幻碧尾”のスキル内容を加筆しました!
気になる方は是非読んで下さい!
戦いが始まって半刻が過ぎて、僕は焦っていた。
それはギライドが予想以上に強く、技術を持っていたことにも驚いたし、いつの間にかカイトがいなくなっていたことにも驚いた。
しかし、奴は強いといっても僕と同じレベルだし、カイトはおそらくまた隠れて機会を伺っているのだろう。
だが、何より気になるのは後ろの氷の壁の向こうだ。分断されてすぐは戦闘音が聞こえたのだが、今は全く聞こえない。
それが勝ったからならいいのだが、もはや声すら聞こえないのだ。そちらが心配で、ギライドに押されてしまっていた。
「おいおい!そんなに後ろが気になるか?!お守りは辛いねぇ!雑魚が味方にいちゃ戦いに集中出来ねぇよなぁ!」
「くっ!うるさい!彼らは雑魚ではない!きっと今も戦っている!」
「その割には何も聞こえないんですケドォ?もしかして死んじまったんじゃないんですかねぇ!」
当然、ギライドも僕が何に気を取られているのかわかっており、そこを執拗に突いてくる。
そして、次第に受け流せず当たってしまう攻撃が増えて傷が多くなり、体力も削られていた。
そこで僕は一旦、大きくギライドの槍を弾くと距離を広く取り、槍も届かない位置まで下がる。
「そうやって逃げてばかりじゃ、俺に勝てねぇぞー?」
「くっ、別に逃げているわけじゃ...」
「その割には腰が引けてる...ッ!」
「ちっはずした。でも、逃がさん」
「な、なんだっ!どこにいやがった!がっ!」
その時、僕は何が起こったのか分からなかった。
いや、起こったことはわかる。
僕がギライドの槍を弾いたことで戦いが止まり、奴が油断した瞬間、後ろからカイトが姿を現し、ギライドの首を切ろうとした。
しかし野生の勘か、ギリギリでカイトから距離を取りつつ、刀の間に槍を挟み込んだ。
だが、カイトの刀はまるで槍をバターでも切るようにあっさりと切り、そのままギライドの体を削った。
そして、ギライドを追うように追撃を放ったカイトに倒されてしまったのだ。
分かる、何が起こったかはわかる。
だが、分からない。
普段あれだけ物腰が低く、敬語を使い、奴隷に対しても対等に扱うような男が、まるで、路傍の石を見るような目で人を殺している姿が、僕には一致しなかったのだ。
別に、人を殺すなと言うつもりはない。僕も手にかけたことなどいくらでもあるし、高ランク冒険者になるための試験に、盗賊を殺させることもあるのだ。
だが、それでもあそこまで無関心に手にかけることは僕にもできない。ある程度は制御できるようになったとはいえ、未だに手が震える時だってあるのだ。
僕は今回の任務で少しだけ、カイトが怖くなってしまった。
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ふぅ、危なかった。ギライドは“気配感知”を持っていなかった。だが、どういうわけか切られる寸前で俺の攻撃に気づき、防御をした。
運良く刀の効果で槍ごと切ることができたが、この刀がなければ負けていたかもしれない。
今回は戦闘経験の差が如実に出ていたのだろう。
俺はレベルアップのアナウンスを聞きながら、キュレイに引き上げる指令を出すよう頼んだ。
「おかえりなさい!カイトさん!ご無事で何よりです!お怪我はありませんか?」
「ただいまです、ティサネさん。はい、大丈夫ですよ、キュレイの方が傷が多いですしね。彼がいなければ危なかったです」
「そうですか、とにかく何事も無かったようで良かったです。はい!これは今日の報酬です!」
ドサリ、とカウンターに置かれた袋の中には数え切れないほどの銀貨と数枚の金貨が見えた。
「え?こんなに?あの討伐だけで?」
「はい!カイトさんはあの男から聞くに、幹部もボスも全て倒されたとのことでしたので、一番報酬が高いですよ!」
「え、でも俺、いいとこ取りしただけだと思いますけど...」
「いいんですよ!もらってください!」
「....なら、ありがたく頂きます」
「はい!それでは連続になってしまいますが、明日もよろしくお願いしますね!」
「はい、よろしくお願いします。それでは。行こうか、サニア」
「...こくっ」
俺は正直思わぬ報酬額に、内心ホクホク顔だった。
そして、俺たちが盗賊退治をするのが早かったせいか、1日仕事だったものが昼過ぎで終わってしまった。
なので、俺たちは屋台でお昼ご飯を買い食いしながら、この世界のルールや解体の知識、分かっているスキルなどを調べるため、図書館へと向かうことにした。
その後、俺たちは図書館に着き、入場料の銀貨1人一枚合計2枚を払う。
この世界では銅貨一枚100円程の価値なので、そんなに高いのかと思ったが、本は貴重なため破ったり、持ち帰られたりしないための保険らしい。帰るときに半分返してもらえるそうだ。
それでも、半分は取られるのだが。
そうして俺たちは暗くなるまで図書館で過ごした。
....ちなみにサニアは鼻ちょうちんを作りながら寝ていた。
「ただいまです。女将さん」
「女将さん?まぁおかえり、もうすぐでご飯食べられるようになるからねー」
「わかりました!ありがとうございます!」
いつものやりとりをして、俺は部屋へと入り、ベッドに座る。
「それじゃあ、はい。これがサニアの分」
「...?」
「今日は頑張ってくれたからね。その報酬だよ」
「でもこれは主さまに渡されたお金...わたしはもらえない...」
「いいから、はい」
「嫌、なら主さまが持ってて...」
「んー、そうか?なら欲しいものがあるときは言うんだぞ?買っていいから」
「...こくっ」
本当は半分に分けたかったのだが、思いのほか嫌がったため、強要はできなかった。
「それじゃあ、今日のサニアのおさらいをしようか。今日でだいぶレベルが上がったね。それに新しいスキルも覚えているし」
「主さま、わたしのステータス見れるの?」
「あぁ、言ってなかったか。うん、見れるよ。買った時もそれで決めたんだ」
「そうなのね...えぇ、上がったわ、いっぱい...」
「うん、だいぶ強くなったと思う。だから、さらに強くなるために、1つアドバイスをしようと思うんだ。サニアは水を爪に纏わせたことはあるか?」
「爪に...?ないわ、どうやるの...?」
「そうだな、こう、水で爪を包む感じでやってみてくれ。そうそう、そんな感じ」
「これで強くなるの...?」
「いや、まだだ。そこから爪の周りで水を回しながら、爪の形にしてみてくれ」
「.....んっ!こんな感じ...?」
「そうそう!センスいいな、それでこの土を切ってみてくれ」
そう言って俺は“土魔法”から進化した“大地魔法”で、ある程度固めた土を作り出し、サニアの前に浮かべた。
そして、サニアは言われた通り土に向かって爪を振るうと、綺麗に真っ二つになった。
「すごい、全然違う...」
「よかった、それじゃああとは、ウォーターカッターとかを知ってるか?」
「知らないわ...。それもできるの?」
「あぁ、水を細く、高圧で噴射することで、鉄とかも切れるようになるんだ。」
「すごい...教えて...」
そうして、サニアに俺の知る限りの水の扱い方をご飯が食べられる時間まで教えた。
その後、食堂にやってきて俺たちは席に座る。すると、いつものようにミリーがやってきた。
「お疲れさま!今日も仲良いねー。何食べる?今日はボア・クレイグっていう魔物の肉が入ったよ!それに盗賊団が退治されたからそれからまたいろんなメニューを食べられるようになるよ!」
「じゃあそのボアの料理をもらおうかな。それに盗賊団は討伐されたんだね!よかったじゃないか!」
「はーい!ほんとによかったわ!これでまたお客さんも増えるから頑張らないと!」
よかった。ここの料理は美味しいからな。いろんなものを食べてみたい。ミリーは俺たちの注文を聞き終えると、別の客のところへ行った。
「主さま、わたし今日頑張ったわ...だから、お金はいらないけれどお肉は食べたいわ...」
「おお、いいぞ。好きなだけ食べな」
「嬉しいわ...」
うん、最初に会った頃よりサニアはだいぶ話しかけてくれるようになった。といってもまだ2日しか経っていないが、何かサニアの中で変わるものがあったのかもしれない。嬉しい兆候だ。
ミリーがおススメしてくれたボアは、イノシシの肉で、料理は角煮だった。イノシシは脂だけが多いイメージだったが、そんなことはなく、脂はあるものの旨味もしっかりとあり、とても美味しかった。
食事を堪能した俺たちは部屋に戻り、サニアは爪とぎ、俺は今日得たスキルを確認していた。
今日はさまざまなスキルを取ることができたし、久しぶりのレベルアップも果たした。
名前:日向 海斗
種族:人間
年齢:18
Lv:64
ステータス:体力924
魔力1006
攻撃634
防御637
敏捷651
知力673
スキル:気配感知Lv.10→New看破Lv.1 槍術Lv.4→New槍聖術Lv.6 剣術Lv.7→New剣聖術Lv.4 土魔法Lv.3→New大地魔法Lv.4 俊敏Lv.3→New瞬動Lv.5 闘術Lv.1→New闘聖術Lv.5 繁栄Lv.1 集中Lv.1 New棒聖術Lv.6 New睡眠耐性Lv.7 New錬成術Lv.8 New威圧Lv.6 New良識Lv.8 New念話Lv.6 New心眼Lv.8 New奴隷術Lv.7 New虚言Lv.4 New交渉Lv.5 New限倉庫Lv.9 New罠作成Lv.9 New剛力Lv.3
称号:簒奪者 強者食い
俺が一番使う刀もついに上位スキルとなり、キュレイがやっていたような、受け流しのやり方も感覚的に掴めるようになった。
そして、“錬成術”や“奴隷術”などの特殊な魔法やパッシブスキル系も揃い、何よりアイテムボックス系のスキルも手に入れることができた。
スキル 看破 偽装されたものや隠されたものを見破ることができる。レベルが上だと見抜けない。
スキル 槍聖術 槍の扱いがさらに向上する。
スキル 剣聖術 剣の扱いがさらに向上する。
スキル 大地魔法 土だけでなく、大地を従えることができる。また大地に存在するものにも効果が及ぶようになる。
スキル 瞬動 より敏捷力に補正がかかり、動体視力も向上する。
スキル 闘聖術 肉体の扱いがさらに向上する。
スキル 棒聖術 棒の扱いがさらに向上する。
スキル 睡眠耐性 眠らされにくくなる。
スキル 錬成術 素材を使って、別のものに変化させることができる。レベルによってできることが増えるが、そもそもできないものも存在する。
スキル 威圧 相手に一時的な恐怖感を与える。自分よりレベルの低いものにしか通じない。
スキル 良識 知力に補正がかかる。
スキル 念話 相手に思念を送ることができる。相手がこのスキルを持っていないと一方的になってしまう。
スキル 心眼 相手の弱点がわかる。また、相手が何をしようとしてくるかが少しわかるようになる。
スキル 奴隷術 奴隷契約を結ぶことができる。
スキル 虚言 嘘をついてもバレにくくなる。また、相手に信じ込ませやすくなる。
スキル 交渉 対話による駆け引きを有利に働かせられる。自分の出した条件を相手に飲ませやすくなる。
スキル 限倉庫 亜空間に容量のある倉庫を持つことができる。レベルごとに大きさが決まっている。
スキル 罠作成 道具を使って、罠を作成できる。
スキル 剛力 攻撃力にさらに補正がかかる。
さまざまなスキルを新たに獲得できた今回の盗賊討伐任務は、俺にとってとても美味しいものだった。
また、俺自身も成長できたし、サニアも成長することができた。
それでは、明日もあることだし、今日はもう寝よう。
今日もよく眠れそうだ。
ちなみに“睡眠耐性”は寝ようと思えば働かないようだ。あくまで寝たくない時などに発動するらしい。
それじゃあまた、明日。
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わたしはもしかしたら良い主に買われたのかもしれない。普通女奴隷は、体や倒錯趣味のために使われることが多い。
だが、この主は違った。
確かに今日はたくさんのことがあった。今日の朝、いきなりついてこいと言われてついていけば、ギルドマスターに合わされ、勝手に調査に参加することとなった。そして、終わったかと思えば、盗賊退治に参加させられ戦ってこいと命令された。そこでお前の力を見せろと。
主がわたしをパーティメンバーに入れたいといっていたのは本当だったのだ。
たから、渋々わたしは従った。だが、実際は人間を殺せる機会をくれた主に感謝していた。
しかも、わたしが戦った人間はみんな弱かった。それに久しく離れていた戦いの勘も戻った。
嬉しいことにレベルが38にもなり、新しいスキルを覚えることもできた。さらに、主はわたしに新しい戦い方も教えてくれた。
「この人は本当にわたしを、わたしそのものを求めているのね...。この人といると強くなれる?...わからない...」
ただ、今は少し、興味があるから、一緒にいるだけ、ただそれだけよ。
「おやすみなさい、主さま...」
名前:日向 海斗
種族:人間
年齢:18
Lv:64
ステータス:体力924
魔力1006
攻撃634
防御637
敏捷651
知力673
スキル:簒奪Lv.- 鑑定Lv.5 超嗅覚Lv.2 偽装Lv.1 暗黒魔法Lv.1 噛み砕くLv.3 気配感知Lv.10→New看破Lv.1 身代わりLv.3 統率Lv.4 器用Lv.7 集団行動Lv.5 槍術Lv.4→New槍聖術Lv.6 剣術Lv.7→New剣聖術Lv.4 体臭遮断Lv.9 火魔法Lv.3 水魔法Lv.5 風魔法Lv.8 土魔法Lv.3→New大地魔法Lv.4 樹魔法Lv.4 弓術Lv.4 幻惑Lv.4 融体Lv.3 遠視Lv.4 鋼化Lv.5 俊敏Lv.3→New瞬動Lv.5 火耐性Lv.2 水耐性Lv.2 風耐性Lv.1 土耐性Lv.3 樹耐性Lv.3 光耐性Lv.2 闇耐性Lv.2 毒耐性Lv.3 麻痺耐性Lv.5 夜目Lv.3 体力自動回復Lv.7 自己再生Lv.6 斧術Lv.2 魔力自動回復Lv.5 物理透過Lv.6 死霊作製Lv.8 闘術Lv.1→New闘聖術Lv.5 繁栄Lv.1 集中Lv.1 New棒聖術Lv.6 New睡眠耐性Lv.7 New錬成術Lv.8 New威圧Lv.6 New良識Lv.8 New念話Lv.6 New心眼Lv.8 New奴隷術Lv.7 New虚言Lv.4 New交渉Lv.5 New限倉庫Lv.9 New罠作成Lv.9 New剛力Lv.3
称号:簒奪者 強者食い