第12話 盗賊頭目戦『前編』
「ようこそ、俺のアジトへ。大したもてなしはできないが、歓迎しよう」
「ありがたくもてなされよう。こちらからの粗品だ。喜んでくれると嬉しいよ」
そうキュレイがいうと懐から手錠を取り出した。
「ありがたい申し出だが、俺は人からものを受け取らないたちでね。欲しいものは自分で貰いにいくほうが性に合っているんだよ」
「それは残念だ。せっかくいいものを持ってきてあげたのに。喜んでもらえなくて悲しいよ」
彼らが口撃をしている間に、俺は2人を“鑑定”する。他の隠れている5人は“鑑定”できない。遮蔽物があると“鑑定”が働かないのだ。
名前:ギライド・バーン
種族:人間
Lv:53
スキル:罠作成Lv.9 槍聖術Lv.6 剛力Lv.3
名前:アスト・レスト
種族:人間
Lv:36
スキル:虚言Lv.4 交渉Lv.5 限倉庫Lv.9
こいつらが持っているのは、俺が知らないスキルや持っていないスキルばかりだ。
それにアイテムボックスらしきスキルを、気弱そうな男が持っているが、それがあいつの本性では無いような気がする。
まぁ、それはスキルを見たからだが。
奴の持つ“虚言”と“交渉”。明らかにこの盗賊団のボスはこいつに踊らされている気がする。
「交渉決裂だな。んじゃあ...消えろ」
「嫌だね。それにお前らを捕らえに来たんだから、消えるわけないじゃないか」
ギライドの雰囲気と声質が変わった途端、隠れていた5人が一斉に現れた。俺はあらかじめいることが分かっていたし、キュレイも“気配感知”でギリギリで避けたが、他2人は小さく無いダメージを負ってしまった。
「くっ!オラァッ!!」
リュカから先に倒そうとしていたようだが、5人はボワルドの“挑発”によって、意識を逸らされる。その一瞬で、リュカは“極氷魔法”を使い、俺とキュレイとボス、リュカとボワルドと5人に分けて壁を作ってしまった。
「私たちは大丈夫だから!そっちをお願いするわ!」
「っ!わかった!僕たちに任せろ!そっちも気をつけろよ!」
「当たり前よ!」
突然だったので壁の向こうに行きかけたが、なんとかこちら側に来られて良かった。
「あらま、お仲間がいなくなっちまったなぁ」
「彼らは強い。心配せずとも大丈夫だ。こちらも始めようじゃないか」
「言われずともわかってるよ!ハッ!」
ギライドはいつのまに握っていたのか、見ただけで業物とわかる槍を、キュレイに突き出す。
キュレイはその突きを、こちらもいつのまに抜いていたのか自前の剣で受け流し、その勢いでギライドに斬りかかる。
だが、ギライドはその流れに逆らわず、自ら前に進むことで距離を殺し、キュレイに膝蹴りを放つ。
「チッ!」
キュレイは剣を振り切ることを諦め、バックステップで後ろに下がる。しかし、その下がったところにギライドの槍が脇腹を突き、バランスを崩してしまう。
すぐさまキュレイは立ち上がろうとするが、今度はギライドの槍が膝を掠め、さらに傷を負ってしまった。
「強いなぁ、テメェ」
「僕こそ驚いたよ、ここまでやるとは思っていなかった」
「あのガキはちびったのか逃げちまったが、お前は楽しめそうだ...なっ!」
今度はギライド自身がキュレイに向かって飛び込み、槍を横薙ぎに振るう。それをキュレイはかがんで避け、逆袈裟斬りを放つ。
そういや、俺は何をしていたかというと流れに乗じて窓から逃げようとしていたアストを仕留めるため、隠れていた5人が襲ってくる瞬間に“偽装”を使った。
そして俺は、そのままいつも通りにアストの後ろに回り込む。
「何逃げようとしてんだよ。逃すか」
「...ッ!」
アストは叫び声をあげる暇もなく、俺に首を切られて死んだ。
あとはあのギライドだけだが、レベルはキュレイのほうが高いのに、押されている。
しばらく観察していると、どうやらキュレイは後ろの仲間たちの安否が気になるようだ。そういや、声が聞こえないもんな。
彼らは離れたのか、殺されたのか。だが、確認しようにも完全に閉じられており、通れない。
まぁ、俺は“超嗅覚”で部屋の壁の隙間から微妙に彼らの匂いを探知している。ただ、血の匂いは多少するから、傷は負っているだろうが、生存は確認できている。
なので俺はキュレイとギライドの戦いを眺めつつ、確実にギライドを殺せる瞬間を待つことにした。
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「くっ!ここじゃ狭いわ!ボワルド!引くわよ!」
「おう!」
私は、ボワルドに守ってもらいつつ、“極氷魔法”で牽制しながら後ろに下がっていく。だが、よく見ると1人いない!
「アアアッ!」
すぐに1人いないこともそいつが後ろにいることも気づいてくれたボワルドが、また“挑発”で意識を逸らしてくれた。
その間に私は“極氷魔法”で相手の口と手足を凍らせて、捕らえた。
しかし、“挑発”は同じ相手に連発すると効果が薄くなる。
それにただでさえ、人間にはあまり効果がないのに、何度もやっているので、もう次は相手には効かないだろう。
ボワルドは大斧を盾のように使って敵の攻撃を防ぎ、私が1人ずつ凍らせて捕らえていく。
本当はもっと離れた位置から放てば、一瞬で凍らせる魔法も使えるのだが、それをすればボワルドを巻き込んでしまうし、最悪この家が崩れてしまう。そうなってはボスと対峙している彼らの邪魔をしてしまう。
「ふんっ!」
ボワルドが敵の攻撃の間隙を縫って、横薙ぎに斧を払う。
しかし、2人捉えることができたがもう2人をあと一歩で逃してしまった。敵は闘術タイプの盗賊が3人。そして、暗殺者タイプが1人と魔法使いが1人だ。
暗殺者タイプはもう捕らえたし、闘術タイプは2人倒した。あとはもう1人の闘術と魔法使いだ。
しかし、魔法使いは最初から攻撃してこなかった。何を企んでいるのかと思ったその時、ずっと詠唱していたのか、魔法使いの両手がこちらに向けられ、直後飲み込まれそうなほど暗い渦が生まれ、ついに魔法が放たれた。
「惑えて潰せ、カオスホール!!」
魔法使いはあろうことか、味方の闘術使いも巻き込み、“暗黒魔法”を放った。いや、あれは“暗黒魔法”ではない...。禁術指定されている“混沌魔法”だ...。
それは、他人の意識に入りこみ、自由に意識を操作できる魔法だった。現在は、危険度が極めて高いとして、研究や使用は禁止されていたはずだが、どこで知ったというのか。
「しまっ...」
「くそっ...」
私はそれを最後に意識を手放してしまった。
「がはっ...はぁはぁ、やりましたよ、ボス、ついに発動できました...。“混沌”の魔法。あとはボスのために動くようにして...と」
「そこまで...」
「ぐっ...誰...だ...?」
「そんなことはどうでもいい。さよなら...」
“混沌”の魔法を放ち、意識を乗っ取った魔法使いは、階段を登ってきたわたしに背中から爪で貫かれ絶命した。
しかし、“混沌”は発動者が死んでも解かれないようで、リュカとボワルド、さらに闘術使いはわたしを標的とした。
「ちっ、疲れてるのに...。あとで主にお肉を要求する...」
「アアアアッ!」
「ガアアアッ!」
「ッ!」
ボワルドと闘術使いは奇声を発しながら、わたしに襲いかかる。そしてリュカはなぜそんな詠唱で発動するのか、氷の槍を飛ばしてきた。
わたしはそれを軽々と避け、一番厄介なリュカを狙い、飛び上がる。そして、意識を落とすため、回り込んで首を叩こうとするが、首の周りを氷の盾で守られてしまう。
わたしは首を狙うことを諦め、リュカの横腹を蹴り、追撃をしようとした。しかし、リュカはその蹴りで、意識を失ってしまった。
「あれ、気を失っちゃった...まぁいいや、次...」
リュカを狙い、飛び上がったサニアを追ってきていた2人のうち、闘術使いの目を狙って小さめの水の玉を作って飛ばし、脳を破壊する。
そしてボワルドには粘性の高い水を足元に流し、バランスを崩したところに腕の筋繊維を狙って爪を振るい、斧を握られなくした。
そうしてリュカと同じように首を叩いて、意識を絶たせようとしたが、首の筋肉が強く何度か叩くとようやく気を失った。
「疲れた...魔力ももうない...帰りたい...」
本来、ここにきた時のサニアでは、リュカとボワルドはおろか、闘術使いにすら勝てなかっただろう。
だが、下っ端たちと戦っている間に、集落にいた頃のような戦闘感を取り戻していき、さらに人間に対する憎悪とレベルアップによって飛躍的に強くなっていた。
また、“混沌”の魔法によって攻撃が単調になっており、対処しやすくなっていたことも理由の1つだった。
名前:サニア・バードレイ
種族:狐獣人
Lv:38
ステータス:体力412
魔力396
攻撃365
防御319
敏捷397
知力298
スキル:変幻碧尾Lv.- Up水魔法Lv.7 Up迅爪Lv.8 New俊敏Lv.4
称号:尾格者
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