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黒隻の簒奪者  作者: ちよろ/ChiYoRo
序章
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第1話 第2の人生の始まり

初投稿となります!誤字脱字の報告や忌憚ない意見お待ちしております!


今回はもう1話投稿します!

「あ、死んだ……」


  俺は大学からの帰り道、いつもの道を通って家路を辿る。時間は夕方、辺りは住宅街で、車通りはそれほど多くない。これからバイトや飲みに出かける大学生が増えてくる時間帯だ。


 この辺りは近くに大学があることで、その大学に通う学生が多く住んでおり、そのためか普段はあまり車通りはない。そんな道すがら、俺はそこまで大きくない道を大概なスピードで走る大型トラックにはね飛ばされた。


 一瞬の出来事だった。俺がそのトラックを認識した時には、すでに体は宙に浮いていた。


 その時、ちらりと視界が運転手を捉える。俺を轢いた運転手は、気持ちよさそうに眠っていた。俺にぶつかった衝撃くらいでは、気づきもしないほど、夢の世界へどっぷりだ。


 そういや案外走馬灯とかは見ないものなんだな、とまるで他人事のように思う暇もある。


  そして、俺が代わりに見たものは、バラバラになって行く自分の体だった。








  「ここは……どこだ……?」






  気がつくと、俺はどこかに寝そべっていた。ゆっくりと瞼が上がっていく。最初に捉えたのは、美しく広がる澄み切った青空と緩やかな風。それに鼻を掠めるこの匂いはどこかで嗅いだことのある匂いだ。ああ、ここは森の中か。


「ん?なんで森の中?」


  体を起こして辺りを見回すと一面の緑があった。そして、俺はその森の中の平地の真ん中辺りに寝そべっていたようだ。


「え、あれ?……生きてる?」


 俺の最後の記憶は大型トラックに跳ね飛ばされたこと。痛みすら感じることなくバラバラにされた、あの奇妙な感覚は記憶には新しいが体には残っていない。あちこち自分の体を触り、自分の目で見て確認したが、特に傷跡のようなものは見られなかった。


  だが、とにかくはっきりしていることは、俺は確実に死んだということ。自分がバラバラに砕け散っていく様は鮮烈に残っているのだ。それに頬を引っ張っても痛みはあるなら夢でもなさそうだ。


  「とするとここは、死後の世界みたいなものなのか?」


 それならまだ納得ができるか。肺が浄化されていくような綺麗な空気に澄み切った青い空、目に優しい緑を携えた草花とそこに隠れる一匹の大きなゴリラ。


「うん。これは死後の世界に違いない。いや、これからまた死ぬのかもしれない」


  俺は現実逃避するようになるべく視界の端にとらえたゴリラに目を合わせないようにしながら、観察してみる。


 距離が遠いので正確ではないと思うが、大きさは約3メートル程もある。そして毛並みは俺の知っているゴリラの毛の色である黒ではなく、ひとつのシミもない綺麗な白だ。そんなゴリラがまあまあ太い木の幹の左右から思いきり肩が出た状態でこちらを見つめているではないか。


 もうこの時点で俺が普通の状況にはいないことが確定してしまった。あろうことかこちらを見つめてくるゴリラの目には心なしか知性が宿っているような感覚もしてくる。


  (いや!隠れられてないから!!)


  そうツッコミたくなるが、もしツッコんで謎の地雷を踏んで怒りを買って攻撃されたら一溜りもない。


 俺の知るゴリラでさえ、人間は素手でゴリラに勝てないのだ。


 あんなでかいゴリラに襲われでもすれば一瞬でミンチ直行だ。ひき肉になるのは1度で十分だ。


 そんなことを考えていると突然、空から光が降りてきた。


「やっほーっ!みんなのアイドルKAMISAMAだよっ!!」


  いきなりの光に驚きながら目を擦ると、やけにテンションの高い、なんかよく分からん奴が光の中から現れた。第一印象は『なんだコイツは……』以外にない。それにキャラ付けなのかは知らないが、アイドルなのか神なのかハッキリしろよ。


「あーっ!今君私の事よくわからんやつだと思ったでしょっ!それにアイドルなのか神様なのかハッキリしろともっ!」

「分かってんならハッキリさせろよ」

「こういうのは最初が肝心なんだよっ?」

「うるさい……。耳が痛くなる、とりあえず誰なんだ?」

「話を聞いてくれない子には何も説明してあげませーんっ」

「今話を聞いてるだろ?誰だって質問してやったじゃないか」

「んっ?確かにっ?ならよしっ!話してあげましょうっ!」

「しかもなんだよ、その気持ちの悪い喋り方は……」

「細かいことは気にしないのっ」


 めんどくさいやつだな……。こっちはただでさえ、色々なことが起きていて、俺の脳みそは処理オーバー気味だっていうのに。まぁいい、とっとと話を終わらせるか。可能であれば、ここがどこなのかくらいは情報を得たい。


「まぁいい。それでお前は誰だ?」

「そうっ!この私こそっ!この世界のKAMIであるっ!」

「で?」

「君は気づいていないかもしれないが……、ここは異世界であるっ!!」


  まぁ、俺の予想、というか期待から大きく逸れてはいなかったようだ。


 俺は地球にいた頃、こういう異世界転生ものの小説などは好きで結構読んでいたからな。死んだことも認識しているし、地球に戻りたい、という感情も正直そこまでない。


 地球でのというか日本での生活に何か不満があったのか、と言われればそういう訳ではないのだが(細かい不満はあれど)、誰だって非日常的な体験はしてみたいと思うものだろう。


 小説の世界でしか無い、ファンタジーのような出来事が、実際に自分の身にも起きたのだ。 むしろ異世界に来られて、少しワクワクしているくらいだ。ここからスキルとかを貰えたりするのだろうか?


「そうか。でも、お前が神ってんならなんでわざわざこの場に姿を現したりするんだ?普通、神様との対面はなんていうか、一面が真っ白い『光の間』みたいなところでやるんじゃないのか?」

「それはぁ……、そのぉ……」


 俺の問いかけに対し、なんだか煮え切らない態度を示す。俺はその態度に少し不安を覚えた。俺を転生か何かさせるときに不都合でもあったのだろうか?


  もしかすると異世界に来たこと自体がミスだったとか?


 それは悲しいな……。せっかく地球よりも楽しく過ごせそうなのに。


「なんだ?ミスでもしたのか?」

「うぐっ……、ミスしたといえばそうなんですがぁ……」

「もしかして俺はこの世界に来ては行けなかったのか……?」

「いやっ!そういうわけではないのですっ!」


  よかった、異世界に来ては行けないわけではなかったらしい。俺にとって一番の懸念材料がなくなって良かった。それにしてもこいつキャラブレまくりだな。


「なら、そのミスってのはなんなんだ?」

「えーっとぉ……、実はですね——」


  そいつの話によると、異世界転生させる前に必ず天界で審査を行い、前世できちんと過ごしていたかどうかをまず判断される。


  そうしてあまり良くないことをしていたものは地獄に送られるし、きちんと過ごしていたものはそのまま天界で過ごすか、別の世界に転生するかを選ぶことが出来るようだ。


  そして、俺は転生を選んでいた。まぁ当たり前だな。そしてその際、新しい世界で生きやすいように、体が自動でチューニングされるらしい。


 今回の世界だとスキルを1人ずつに付与していたようだ。生まれた時に皆一人一人与えられるらしい。そのスキルはそれぞれで異なるそうだ。運が良ければ、誰も持っていないスキルを手にすることも出来るらしい。


 だが、この神の不手際で俺はスキルを貰うことなく、さらに、本来のはじまりであるはずの赤ん坊からスタートすることなく、転生してしまった。


 もはや転生というよりは転移に近い。


 そして俺は、正規の手続きを経ていないので、こんな森の中で目覚めた上、このままだとスキルがないので、この世界に存在する脅威である魔物に、あやうく殺されていたかもしれないということだった。


「おいっ!それはダメだろ!」

「はひゅぅっ!ごめんなさいです……。なので今回、謝罪とお詫びを込めてこうして神自らが降りてきました……」

「なるほどな。まぁ死にはしなかったしそれはいいとして、お詫びに何かくれるのか?」

「はいっ!通常はおひとり様お一つまでしかスキルをお渡ししていないのですが、今回、貴方様には2つ差し上げるようにと言われておりますっ!」


 また口調が変わっている上に君から貴方様になっているし……。

 

  まぁ本当に悪いと思っているんだろうし、もともと怒るつもりがあった訳でもないが、スキルを2つくれると言うなら有難くもらっておこう。


「どんなスキルを貰えるんだ?」

「はいっ!まずはステータス画面を開いてくださいっ!“ステータス”と念じれば出てくるはずですっ!」


  言われた通り、頭の中で“ステータス”と念じてみる。


  おおっ!なんか出てきた!



 名前:日向 海斗

 種族:人間

 年齢:18

 Lv:1

 ステータス:体力100

  魔力100

  攻撃100

  防御100

  敏捷100

  知力124

 スキル:

 称号:



 ん?これめっちゃ弱くないか?まぁレベル1だし、これが最低なんだろう。たぶん、本来は赤ん坊から始まる予定だったからレベルが1なんだ。そうに違いない。


「確かに、ステータスが低い上にスキルも称号も何もなしだ。逆によく俺は寝ている間死ななかったな」

「ほんとに申し訳なかったのですぅ……。あとはスキルを念じて頂ければ、貴方様が覚えられるスキルの一覧が出てきますので……」


  俺は再度言われたとおり念じてみると、確かに出てきた。


  神が言うには1度取得することを決定してしまうともう変更は出来ないようだ。


  何はともあれ、取るスキルなど決まっている。他のスキルなど全く目に入らない。興味も湧かない!こういう話が好きな奴は一度くらい、自分が使いたいスキルをイメージしたことがあるだろう。あとはそのスキルを俺が覚えられるかどうかだが——。


 ——あった!これだ!



  スキル:簒奪Lv.- 他者のスキルを奪うことが出来る。相手を倒した後に簒奪可能。(自動発動)代わりに全ての取得経験値が半分となる。



  これだよ!いつか異世界に行くことが出来ればこういうスキルを使ってみたかったんだ!魔物とかが持っているスキルを俺も使えるようになるスキル!運良く俺が使えるスキルにあって良かった!


「スキルを取得できたようですね!あともう1つ選んでいいですよ!」


  そうだった。目当てのスキルを取る事が出来てすっかり舞い上がってしまった。このスキルがあるならもう一つのスキルは決まったようなものだろう。



  スキル:鑑定Lv.1 人や物などを鑑定し、性能を把握することが出来る。Lvが上がるごとに鑑定できる精度が上がる。また、偽装などを看破できるようになる。



  もうこれしかないだろう。これがなければスキルを選んで集めることなど出来ない。いわばセットのようなものだ。あぁ!本格的に異世界が楽しみになってきた!


  まぁどっちにしろ俺はコンプ勢だからな。今までやってきたゲームもトロコンなんか必要科目だったし。そんな俺がスキルを奪える“スキル”を持ったなら、もうやることは一つだよな!


「無事スキルを取得して頂けたようですね。それでは私はそろそろ帰りますね」

「なに?町まで送ってくれるとかはないのか?」

「あぁ、そこまで一個人に肩入れすることは出来ませんので。今回のことはこちらのミスでしたので対応させて頂きましたが、それ以外は特に何もしませんよ」


  なんか、急に冷たくなったな。それにその神は目の前にいたはずなのに、急に距離が遠くなった気もする。神というやつはやはり理不尽なものなのかもしれない。


「ですがこのまま放置というのも気が引けますので、こちらを差し上げます」


  そう言って神が差し出した手の上には1本の刀があった。


  柄・刀身・鞘に至るまで、見ているこちらが飲み込まれそうなほど黒く、だが、決して扱いにくそうな感じはしない。


  この刀は、素人が見ても一級品であることを伺わせるものだった。重さもレベル1の俺が持ってもそこまで重く感じない。実際に振るってみても、長年使い続けていたかのように手に馴染むのが分かる。


「それじゃあこれ使ってねっ!まぁあんまり良いものじゃないし要らなくなったら売ってもいいよっ!じゃあねっ!頑張ってっ!」


  そう言って降りてきた時と同じように、光とともに空へ消えていった。


  くれると言うなら有難くもらっておこう。というか、最後まで口調もキャラもブレブレだったな。まぁいいか。


  それにしてもこの刀、俺は良いものだと思ったが、神はあまり良いものでは無いと言っていた。刀などに関しては素人だし、詳しい善し悪しは分からないので、とても裕福なのか、本当にそうなのだろう。だが、刀は俺の好きな武器でもあるので、今のところ売る気はない。


  とりあえずちゃんとスキルが取れているか確認のためもう一度ステータスを見ておこう。



 名前:日向 海斗

 種族:人間

 年齢:18

 Lv:1

 ステータス:体力100

  魔力100

  攻撃100

  防御100

  敏捷100

  知力124

 スキル:簒奪Lv.- 鑑定Lv.1

 称号:簒奪者



  よし、ちゃんとスキルは取れているな。というかさっきは気づかなかったが、俺の年齢おかしくないか?


  俺は死んだ時には大学3年生だった。それに一浪もしているため、年齢は22歳だったはずだ。


  それなのに、18歳に若返っている。確かによく小説とかでは、18歳の子達が召喚されているのを見るがそれに合わせられたのだろうか。それか、赤ん坊から始めようとしていたところでミスをしたせいで、中途半端な年齢になってしまったのだろうか。


  まぁ若くなったならそれでいいか。


  そういやあのゴリラはまだ居る——いた。微動だにせずにこちらを見ている。


  いや、時々別の方向を見ているな。ゆっくりと俺もゴリラの見ている方向を見ると、何か景色が揺らいで見えている。もっと目を凝らしてみると勝手に“鑑定”が発動した。



 名前:シャドウウルフロード

 種族:闇狼族

 Lv:67

 ステータス:見ることができません

 スキル:嗅覚Lv.7 隠密Lv.7 統率Lv.4 闇魔法Lv.6



 ……え、はぁ?!なんだこの化け物みたいな奴は?!

面白いと思っていただければブクマなどよろしくお願いします!


また同じ名前“ちよろ”でYouTubeに動画投稿しておりますので是非そちらもご覧ください!

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― 新着の感想 ―
基準も何も分からない状態で「このステータスは低い」が分かるわけないじゃん というか何も知らない人がパッと見で「結構高い」と思える数値だよ この主人公は何を基準に「低い」と言っているのか
[気になる点] なんで、初めてステータスを見たのに低いって思う? なんか基準があるの? よく高いか低いかよくわからんって描写は見るけど、いきなり低いって決めつけるのは初めてのパティーンですわ
[良い点] 無し [気になる点] , . の使い方 [一言] 根本的に使い方が違います。 文章や会話に<間>を作りたいのであれば、<,>や<.>ではなく<・>を使います。作者様のオリジナル性を主張した…
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