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短編

私の知らない彼

作者: 小沢琉祢

隣でブランコが揺れている。

それは風のせいだとわかっているのについ彼がいるんじゃないかと考えてしまって隣を見るけど、やっぱり彼はいなくて、少しがっかりする。

私はブランコをこぐ。

大人の私は痩せてるとはいえやっぱり重いみたいで、ぎーぎーときしんだ音を立てる。

子供のころはブランコから飛び降りたりしたなあ。

そんなことを思う。

小心者の私は思いっきり遠くに飛ぶのは怖くてできなくて、いつもちょっとこいでぽんと飛び跳ねるくらいのことしかできなかった。

彼はどうだったのだろう?

そういえば彼のことをよく知らない。

彼は自分のことをあんまり話さなかった。

今、何してるんだろう?

久しぶりに話したくなった。

連絡先はまだ消してない。

彼がアドレスを変えていなければ繋がる。

でもなあ…

ブランコから降りて、公園を後にすることにした。

そもそもこの公園はブランコと、鉄棒と、滑り台しかない小さな公園だ。

私ができる遊具はこの中だとブランコぐらいだろう。

滑り台や鉄棒をやる20代女性なんて誰が見たいのだろう。

ブランコぐらいならぎりぎり許される気がする。

私の気のせいじゃないといいけど。

携帯が震えて、何かと思ってみると、彼からのメールだった。

「嘘!?え!?」

一人で大声を出してしまった。

だって私と彼はもう別れたのだから。

連絡をしてくることなんてないと思っていたし、こっちから連絡することもないと思っていた。

メールの内容を見てみてさらに驚く。

『会いたい』

「…なんで今更」

会いたいなんて言われてかなりうれしかった。

私はまだ彼に未練たらたらだったから。

私も会いたいよ。

そう送ろうかとも思ったけどやめた。

『なんで会いたいの?』

率直な疑問を送った。

『なんとなく。思い出したから。』

…なにそれ。

なんだか泣きたくなってしまってやっぱりまだ彼のことが好きなのだと思う。

それでももう会えないんだと知っていた。

また会ったらそれ以上を求めてしまうから。

『悪いけど会えない』

これでいいんだ。

もう終わったのだから。

未練があるのは私だけなのだから。



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