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模倣剣の担い手  作者: 掃除 
始まり
9/144

魔物の階級

 9,



 朝。温かい日差しに照らされ、ジークは目を覚ます。部屋にある時計を見ると朝食までまだ時間があり、ジークは布団の心地よい微睡みに身を任せ、二度寝を敢行しようと布団をかぶる。


 すると突如、落雷のような音が衝撃と共に訪れ、屋敷全体が大きく揺れる。


「ふぇっ!! 何だ何だ!!」


 突然の衝撃に、ただ事では無いと感じたジークは、慌ててベットから起き上がると、寝間着のまま廊下に出る。


 そして音の発生源の中庭へ出ると、そこには、大きな凹みを挟んでインスとハーバルトが互いに剣を持って睨み合っていた。


「あら? ようやくお目覚めね、ジーク。まぁ、あれだけ屋敷が揺れれば流石に起きるでしょうけど」


 横を向くと、二人から少し離れた場所で、いつも通りニコニコしながらセリアが声をかける。セリアのいる場所の地面には魔法陣が描かれており、その内側は外とは違い戦闘で巻き上げられた土が魔法陣を避ける様に散乱しており、セリアは、シーラが淹れた紅茶を飲みながらジークにこちらに来るように手招きをする。


「母さんコレは一体……」


 セリアの元に行き、この惨状を尋ねると、セリアは手に持っていた紅茶のカップをテーブルに置く。


「今朝ね、インスさんが中庭で剣を振っていたの。私は、それを窓から少し見ていたのだけど、そしたら屋敷からハーバルトが出て来て、二人で何やら少しお話をし始めたのよ。するとハーバルトが少し考えたあとに頷いて、互いに少し距離を置いたらいきなり戦闘が始まったのよ。とても面白そうだから、こうして態々(わざわざ)結界まで張って見学していたの」


 戦闘までの経緯(いきさつ)を説明し終えると、セリアはカップに残った紅茶を飲み干した。


「ん? なんだジーク起きてたのか」


「おや、ジークおはよう」


 そして、先程まで打ち合っていた二人は、こちらに気が付くと、剣を降ろし近づいてくる。


「二人共、早朝から何やってんだよ」


 ジークが呆れた様子で尋ねると、二人は、照れくさそうに笑う笑う。


「い〜や、少し模擬戦を頼んだら白熱しちゃってな。やっぱ強いなお前の親父。昨日話聞いてたら戦いたくなってな、危ない場面が何度かあった」


 遠慮気味にインスが答えると


「いやいやそうは言うが、貴方もお強い、まだ本気じゃ無かったでしょうに」


 ハーバルトも同じく謙遜気味に返す。


「それはお互い様だろ?」


 インスとハーバルトは、互いに笑いながらも、両者の間では、バチバチと火花が散る。


「そこ、そんなに睨み合わないの。まったく、負けず嫌いなのは分かったから、今度は街から離れた草原でやり合いなさい。誰がその凹みを直すと思っているの? さぁ、ジークも起きてきたことだし、そろそろ食事にしましょう」


 すると、二人の様子を見かねたセリアが話を切り出すと、ハーバルトは魔法で作ってたであろう剣を解除し、インスも本体の剣をしまう。


「ジークも早く着替えてらっしゃい」


 セリアに言われ、ジークは自分が寝間着のままだということを思い出す。 


 何時までも寝間着の格好という訳には行かず、ジークは着替えの為部屋に戻ることにした。


 部屋に戻る途中、付いてきていたインスは、難しそうな顔をしながらジークに話しかける。


「お前の親父ヤバイほど強いな、もう少しで負けそうだった」


「当たり前だろ? 神鉄ってのは人の頂点と言ってもいい程の力を持ってるんだ。それに、七大国家に属する神鉄は、それぞれが国を背負ってると言っても過言じゃない。そう簡単に負けてしまえば、それは国のメンツに関わる」


「ふ〜ん、国家の最高戦力とは不便だな」


 インスは、国のメンツなんてものに縛られたハーバルトに、哀れみの感情を抱く。


「どういう事だ?」


「いいか? 大々的に最高戦力と知られているお前の父親は、国……いや、国民の期待や羨望を一心に受けていると言ってもいい。だが、それは、民の絶望も背負う事と同義だと言う事だ」


 ジークは、インスが何を言っているのかわからず、困惑する。


「憧れや羨望は、容易く反転する感情だ。そんな物背負うくらいなら、俺はさっさと隠居する。英雄が背負うのは、何も希望や憧れの様な正の感情だけじゃない。憎悪や嫉妬の様な負の感情すら知らぬ内に背負う事がある。例えそれが理不尽な物でも、人の憎悪は止められない」


 どうして間に合わなかった! 何故来てくれなかった!? 何故助けてくれない!?  何故? 何故? 何故? どうして……


 脳裏に響く、その声をインスは頭から追い出す。


 すると、ちょうどジークの自室へ到着し、二人は中にはいる。


「……まぁ、お前が父親に対してどう思っているかは知らないが、その事だけは覚えておけ。俺は少し寝る。時間が空いたら呼んでくれ」


 中に入るなり、インスはそう言い残し、剣の姿になると、そのまま反応が無くなる。



 一方中庭。


「インスさん……いえ、息子として扱うのだから敬称は要らないわね。それで? インスの実力どうだったのかしら? 珍しく本気だったんじゃないの?」


 セリアが尋ねると、ハーバルトは難しい顔をする。


「素の状態の俺と打ち合えはするが、あのままだと俺が勝っていただろう」


「あら? そうなの、じゃあ──」


「ただし」


 セリアの言葉にかぶせるようにハーバルトは続ける。


「本気だと、どちらが勝つか全く解らない……あれは、奥の手を隠している」


 ハーバルトにそこまで言わせる事に、セリアは驚いた顔をしていたが、やがて面白そうに笑う。


「なら、インスをこのままは学園に入れるのは決定ね」


 セリアはハーバルトそう笑いかける。


「あぁ……」


 ハーバルトが考え事をしながらそのまま屋敷に上がり、食堂に行こうとすると


 バシ! っと、いきなり後頭部を痛みが襲う。


「いきなりなんだ?」


 ハーバルトが振り向くと、セリアが扇子を畳んで手に載せていた。


「そのままお風呂に行って着替えてきなさい。凄い土塗れよ」


 セリアはハーバルトの服を扇子で示す。


「分かったから今度からは、先に口で言ってくれ……」


 ハーバルトがげんなりした顔で言うと、扇で口元を隠しながらセリアは笑う


「考え事してる時は口で言っても反応しないじゃない」


 きっぱりとそう言われハーバルトは頭を掻くのだった。




 朝食が終わり、今日はローグが来る事を思い出したジークは、急いで部屋へ戻り、インスを連れて外で待って居ようと準備を始める。


「ジーク様。ローグさんがお越しです」


 動きやすい服に着替えていると、ミラがローグの到着を知らせてきた。


「わかった今行く」


 ジークは剣の姿のインスへ声を掛ける。


「インス行くぞ」


 声を掛けると、いつもの様に剣が光り、光が収まると剣のあった場所には人の姿のインスが立っていた


「わかった行こうか」


 インスの返答を待たずジークは急いで玄関に向かう。玄関につくと、ハーバルトと何やら話をしているローグの姿があった。


「ローグさん!!」


 ジークが声をかけると、ローグはハーバルトから視線を外しこっちを見て笑う。


「おお、ジーク今度はやらかしたらしいな」


 ガッハハハ、そう笑いながらジーク頭をグリグリと撫でる。


「じぁやローグ、後は頼んだよ」


 ハーバルトは、そんな二人を微笑ましく見たあと、そう言って立ち去る。


「父さんと何を話してたんですか?」


 ジークが尋ねると、ローグは難しい顔をしながら頭を掻く。


「お前が行った森の調査だよ。この領地は滅多なことじゃ魔獣が魔物化するまで放っておくなんて事をしないからな。何か異常がないか調べに行くんだ」


 真剣な顔のローグを、ジークは不安そうに見ていると


「へぇ……そいつがローグか」


 歩いて追い付いてきたインスは、ローグを観察するように見ていた。


「ほぉ……コレは驚いたな。本当にジークとそっくりだ」


 ローグはインスを見て驚愕の表情を浮かべると、ジークの頭に置いていた手を離し、インスへと近づく。


「さっき旦那から話は聞いている。はじめましてだなインスくん? 俺はジークの師匠をやってるローグだ」


 ローグが挨拶するとインスに手を差し伸べる。


「ああ、ジークから聞いているよ」


 それに応えるように、インスはローグの手を取り、両者は硬い握手を交わす。


「そうか……ジーク、お前俺についてはどこまで話した?」


「冒険者の階級とオリハルコンと神鉄までです」


「そうか、なら、冒険者ギルドと魔物の階級も話しておくか、中庭に行こう」


 三人は、玄関で待機していたミラから木剣を受け取ると、中庭へ向かう。中庭に付くと、今朝の戦いのあとは綺麗に直されていた。


「じゃあ、ギルドと魔物の階級についてインスくん説明しよう。ジークは復習のつもりで聞いてろよ」


 ローグはそう言うと、説明を開始する。


「冒険者ギルド。それは簡単に言うとなんでも屋の仕事仲介所だ。まず、冒険者ギルドに登録する。この時確認されるのは犯罪を犯してないかまた、指名手配されて無いかの2つだけだ、後は名前と前衛か後衛の二つこれを紙に書いて魔力を登録し完了だ。この情報はギルド支部全てに送られ、万が一登録抹消されたりするとギルド全てに伝わる。そうなると基本的全ての街などで、仕事をする事が出来なくなる」


 ローグは一息つくと続ける。


「そして、魔物の階級は冒険者ギルドの方で決められる一番下が魔動物と言い、コレは次に強い魔獣とあまり変わらないが人などを襲わない家畜としても飼われている。次に魔獣が進化した魔物やその他の魔物これらは順に石、銅、鉄、銀、金、黒曜、ダイヤ、オリハルコン、神鉄と、冒険者と変わらない階級が決められている。コレは、それぞれの階級の冒険者が無理して依頼を受け死なない様に同じ階級で扱うことにしてあるからだ」


 そうした次はジークの方を見る。


「次にジーク、お前が倒した牛型の魔物の名前は、鉄級のミノロードと言い、知恵の有る魔物だ。こいつの厄介なところは体を『身体硬化』で硬くしていて、斬れにくいところだ。普通の剣などは奴の体にあたった瞬間に砕ける、だから剣じゃなく叩き斬る斧やハンマーで倒すのがセオリーだ」


 ジークは、剣の折れたことや待ち伏せを思い出す。


「あまり無理して奥様や旦那に心配掛けるなよ」


 ジークにそう言うとローグはインスの方を向く。


「何か聞きたいことはあるか?」


「オリハルコンと神鉄はどんな魔物がいるんだ?」


 その質問に対し、ローグは答える。


「ほとんどすべての魔物は、オリハルコン級に成長すると魔人に進化する。例外はあるがな。例えば、神鉄級の魔物には神獣と呼ばれる種が存在する。こいつらは神鉄級に分類されているが、基本的に住処から動くことはない。稀に、魔人が神鉄級まで行くとは魔王と呼ばれる物に変わる。過去二百年魔王は存在していないが、魔人は何回か確認されている。一番新しい魔王は教国が召喚した勇者によって倒されたと記憶されているが、その後勇者は魔王との戦闘で命を落としたと書いてある。そして他には龍種とドラゴンだなドラゴンが進化したのが龍種と言われているが、正確には不明、強さもピンキリだ」


 ローグは地面に置いていた木剣を拾い上げる。


「まぁ、進化なんて滅多にあるもんじゃないし心配するだけ無駄だ」


 そう言うとジークへ木剣を投げ渡す。


「さて、ジークお前がどれだけ強くなったのか見せてみろ」


 ローグは剣を構え、ジークへ木剣の鋒を向ける。

修正完了(9/2)

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