両親とインス
7,
ジークが目を覚まし窓の外を見ると、既に太陽は地平線の向こうに消えていた。治療を終えたのが昼過ぎなので、軽く寝ていたみたいだ。ゆっくりとジークはベットから降りる。
「ジーク様、夕食の準備が整いました」
体の調子を確かめていると、ミラが呼びに来たので、返事をし部屋を出る
その時、すぐ側にあったインスを見るが、寝る前に移動させた時と変わってはいなかった。
持って行くか少し悩むが置いて行くことにし部屋を出た。
「お待たせミラ」
「はい、では参りましょう」
身体の調子を心配するミラに、問題ないことを告げ二人は食堂へと向かう。
「あら? ジーク、怪我は大丈夫なの?」
すると、丁度母親の部屋の前を通り過ぎようとしたその時、部屋から出てきたセリアとばったり遭遇した。
「あぁ、心配掛けてごめん、だけど治療魔法を掛けてもらったから今は大丈──」
先程と同じく、ミラに答えたように返答すると、セリアは、すぐ側に来てジークを抱き寄せる。
「まったく、無理しちゃだめよ……」
そう言って、ジークを片腕で強く抱き締め、もう片方の手で、ジークの頭をなで始めた。ジークはミラが側にいるので恥ずかしそうに身を攀じるが抜け出せないことを悟ると、大人しく、セリアに撫でられるのだった。
「コホン。奥様、ジーク様、旦那様がすでにお待ちです」
咳払いが聴こえると、いつの間にか横にいたシーラが二人に話しかける。そのとき、セリアはジークの高速を解いたことで、ジークは開放された。
「それは大変ね、すぐに行きましょう」
セリアは何事もなかったように先を歩く。そして、四人が食堂に着くと、ハーバルトは、すでに席についており。
「はぁ……ジークまた無茶をやらかしたらしいな」
ジークの姿を見るとハーバルトはため息を吐く。そして、早く席につくように指示する。
「あぁ、ごめん、今はもう大丈夫」
ジークは、座る前に一言謝罪をし頭を下げる。それを見たハーバルトは、「そうか」と呟く。
「夕食が終わり次第、書斎に来なさい。ミラに聞いたが面白そうな物を持って帰って来たらしいな。……後セリアも書斎に来てくれ、もしかしたら今までの謎が解けるかもしれない」
「えぇ、わかったわ」
「さて、夕食が冷めないうちにいただこう」
そして、ジーク達は軽い雑談などを交わし、夕食が終わる。
ジークは夕食後すぐに部屋に戻ると、ハーバルトに言われた通り、剣の状態のインスと牛の魔物の角を持って書斎に向かう。
やがて、書斎の前に到着すると、数回深呼吸をし、扉をノックする
「ジークです、今到着しました」
「入りなさい」
中からハーバルトの許可が出たので、ジークは書斎に入る。書斎には既にソファに座って寛いでいるセリアの姿があった。
「さて、揃ったな。さぁ、ジーク。今日あったことを報告しなさい」
ハーバルトは、険しい顔をしてジークに話す様に促す。
「はい、今日。森の方で魔獣の目撃情報があったから、屋敷を抜け出して、森に魔獣の討伐に行ったんだ」
ジークは、ハーバルトの虚偽を許さぬ迫力に押され、正直に話す。
セリアは、ジークの行動に驚いた顔し、その後何か言いたそうな顔をするも、何も言わず紅茶を口に含む。対して、ハーバルトは眉をしかめる。
「続けなさい」
ハーバルトからの催促により、ジークは続きを話す。
それは今日、森で魔物にあった事。死にかけた事。少し悩んだが、インスの事を報告し終わると、ハーバルトはおもむろにジークの持つ、剣に視線を向け話しかける。
「ジークから話を聞いた限りだと、話せるのだろう? 出てきたらどうだい?」
やや疑念を含んだ物言いに対し、剣がわずかに光る。
「そうだな、このままは流石に礼儀に反するか……」
そう声が聞こえ、ジークが横を見ると、いつの間にかインスが現れていた。
突然の出現に、セリアとハーバルトが警戒する。
「はじめまして。いや……あなた達は俺を見た事が有りましたね。改めまして、俺は模倣剣〈意志ある剣〉のインス。どうぞよろしく」
インスが自己紹介をし、完璧な作法でのお辞儀、ジークは視線を両親に戻すと、二人共驚いた顔をしていた。
「さっきジークから話を聞いたが、実際に見ると驚くな。それに、ここまでジークにそっくりだとは……。では、君が、十五年前の錆びた剣なんだな? それに模倣剣に〈意志ある剣〉(インテリジェンスソード)か……ふむ」
ハーバルトはおもむろに机の引き出しを開く。そして、一ヶ月前にジークに渡した例の紙を取り出し机に置く。
「すまないがこの紙に魔力を流してもらえないだろうか? それといくつか聞きたい事がある」
インスは、軽く返事をすると、ハーバルトの机の上にある紙を手に取り魔力を流す。暫くするとジークの時と同じように紙に文字が浮かび暫くするとプレートに変わる。
「これで良いのか」
「いや、もう一度魔力を流して貰えると有り難い」
インスはプレートをハーバルトに渡そうとするが、ハーバルトにもう一度と言われ再度魔力を流す。するとプレートに印された魔法陣が起動。インスの情報が浮かび上がる。
するとハーバルトはそれを見て驚いた顔をしていた。
「これは……」
セリアもジークもハーバルトと同じく目を見開く。
インス 〈男〉???歳
人族(魔力体)
模倣剣 LV??
魔力人体生成LV6
意思伝達
シンクロイメージ
武術
魔力量???
Error
Error
:
それは余りの情報量の少なさだった。
「なぜこのような事に……」
ハーバルトが呟くと、インスは困った顔で頭を掻く。
「それは、俺の能力に原因があるかもな」
そう言ってインスは、ジークに視線を向け話を続ける。
「ジークには説明したが、俺の能力は神話や伝承の武具とアイテムそして伝承や神話更に歴史的『人物』の特性を【模倣】する事が出来る」
話しながらインスは、ジークから自身の本体となる剣を受け取ると、ハーバルト達に付き出す。
「この剣の能力は【模倣】した物、そして人物の特性を俺かジークに付与する事ができる。だから俺の能力は、【模倣】した物によって変わるし、後は単純に表示できないか、だな」
説明を終えると、剣は光の粒子となり、消えてしまった。
「さて、他に聞きたいことはあるか?」
インスがハーバルトに問い掛ける。するとハーバルトは真剣な顔でインスを見る。
「……最後に一つだけ。何故君はジークを選んだんだ?」
その問いに、インスは、少し黙り込み、やがて二人に、自分の正体を語った。
「そんな訳で、俺が望んだからがさっきの質問の答えか? 貴方達には悪いと思うが、俺からジークに害を与えるつもりは一切無い」
俄に信じられない話を聞かされ、二人は困惑するも、やがてそれが真実だと知り、納得するしかなかった。
「なるほど……分かった。それで? 君は此れからどうする気だ?」
ハーバルトの質問にインスはジークを見ると指さし答えた
「暫くは記憶の整理をしながらこいつを鍛える事にする。俺の目的は自分の前の魂がどんな人生を送るのか見る事だからな」
「そうか……もう一つ、君と居るとジークは安全なんだな?」
ハーバルトがインスに問い掛ける。
「まぁ、ある程度の危険は俺がどうにか出来るからな。確約は出来ないが、俺の目の届く範囲でなら安全と言っていいだろう」
「そうか」
ハーバルトは納得したらしくジークの方を見る。
「ジークお前は学園に入るまでの間、強くなれ。彼を出来るだけ使いこなせる様に」
ジークが力強く頷くと、ちょっと良い? と、今まで黙っていたセリアが口を挟んできた。その顔は先程とは違い、いつも通り笑っていた。
「あなた、この際インスさんも学園に入れてはどうかしら?」
「「なっ!!」」
予想外の言葉がセリアから発せられ、ジークとハーバルトは同時に驚愕し固る。
「プレートの情報を見る限りだと、インスさんは剣技なども出来るのよね?」
インスは、セリアの問いに頷きながら答える。
「たしかに俺には武器を扱う上での剣技など一通りの技を使えるが、……まさかそれで一緒に学園に入れと?」
「ええ、貴方はジークを強くできて、私達はジークの安全を確保できる。互いに得しかないでしょ? それにジークの事でどうにかして付き人を一緒に入れる予定だったのだから」
インスは頭を掻きながら小声でマジか……とつぶやくとセリアの方を向く。
「だが、俺を学園にどう入れるつもりだ? そんな事しなくても剣の姿でいれば問題ないだろ?」
そう質問する、それを読んでいたのか、セリアはにこやかに笑いながら手を合わせる。
「それなら貴方をジークの双子と言う事にすればバレはしないわよ。こんなに似ているのだから。それに普通に入学させてもクラスが離れてしまう可能性もあるわ。ならいっその事全て偽ってしまえばいいんじゃないかしら? それに貴方の言うとおりにするとジークはずっと貴方を手放せなくなるから却下ね」
いい考えだわ! と、セリアは突拍子もないことを言い出した。
するとインスあっけに取られてたのかしばらく固まる。が、やがて
「ふっはははははは」
と、インスは大声で笑い出しながらセリアの方を改めて見る。
「いいな! あんた最高だ!! 良いぜこいつと一緒に学園生活も悪くなさそうだしな!」
(えぇ……)
こうして今日の家族会議は終結し幕を閉じたのであった。
修正完了(8/27)