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模倣剣の担い手  作者: 掃除 
プロローグ
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プロローグ1

初投稿よろしくお願いします!

(改良済み)

1.


 ある満月の夜、青年は家族に見守られながら眠るように息を引き取った……。


「ここは?」


 青年が目を開けると、そこは壁一面が真っ白な部屋、正面には机と椅子が向かい合わせで2つ。その向こうには木材で出来てると思われる扉。


 背後を見ると正面のと同じ扉があり、ドアノブを回し押したり引いたりしてみるが鍵が掛かってる様で開かない。出るのを諦めて机の側へ近寄ると、机の上には紙が置いてあり青年は、それを手に取る。


『座って待て』


(えぇ……)


 手に取った紙に書かれていた、たった一行の文字を見て、青年は顔を引きつらせ、そして途方に暮れる。再度辺りを見渡しても真っ白な壁と扉しか無く、青年は「はぁ……」とため息を吐く


「取り敢えず立ったままなのもあれだし、書いてある通りに座るか」


 席に着き、待つ事五分。


 何もすることが無く記憶の整理をしていると、ドアノブをひねる音が聞こえ扉の方を向く。


 扉を開け入って来たのは、和服姿の初老の男性だった。

 

 男は黒の髪に厳つい顔をした、如何にもヤクザの親分の様な姿であり、背中に龍の入れ墨でも彫っていそうな人物だった。


「次はオメェか」


 そう呟くと男は観察するように青年を見ると大きく息を吐き、青年の向かいの椅子に座る。


「さて、取り敢えず自己紹介からするとしよう。俺の名前は@#^#@&$&……あぁ、すまない。聞き取れなかったか、そうだな……黄泉の神とでも読んでくれや」


「黄泉の神ですか?」


「そうだ。さぁ、次はオメェの名前を教えてくれねぇか?」


 黄泉の神と名乗った男は青年を見て笑うと、青年も恐る恐る自己紹介を始めた。


「ええっと、自分の名前は葉山 司と言います」


 青年が自分の名を名乗ると、黄泉の神は満足そうに頷き、いつの間にか机に出現していた湯呑みを手に取り一息つくと尋ねる。


「司だな。で、オメェはどうしたい?」


「どう……とは?」


 いきなり、どうしたいと言われ司は何をどうしたらいいのか分からず、黄泉の神へと聞き返した。


「スマンな端折り過ぎた。まず、オメェに残された道は二つ、このまま成仏し死後の世界へ行くか、それとも記憶を消して新しく生を受けるのか」


 選択肢を提示されたが、その前に司は、疑問に思った事を質問してみる事にした。


「……死後の世界? 黄泉の国じゃなくて?」


 死後の世界とは宗教における天国や地獄などを指し、これは仏教や他宗教における死後の世界。


 黄泉の国とは日本に古くから伝わる死者の国のことである。


「ん? ああ、じゃあそこからまず話すか。まずは、そうだな……先に言うなら他の神話の神々は勿論だが死後の世界も、お前さんらの信じる神よって複数存在してる。まぁ、いくつかの神々は同一神でもあり、死後の世界なんてのも何処も似たようなもんだがな。それに、神話ってのは他の場所で神々の活躍を人が語ったものだ。元々は一つの神が複数の神話を持つのはそう珍しい事でもない。そんな訳で、神って言ってもそんなに多くなかったりするんだよ。そして魂だ。魂ってのは死後、勝手にフラフラと現世を彷徨い続け時に生者に取り付いたり、邪気を取り込んで悪霊とかしたりと悪さをしだす、下手すりゃそのまま消滅なんてこともあり得る。魂の数ってのは世界で有限だ、作ることもできるが時間も手間もかかる。逆にあり過ぎて世界の限度を超えられても困る、下手に消滅させたり減らしたりして世の理ってやつが崩れたら大変面倒な事にもなる。だから俺達神々は個神で監視する範囲を決め、魂が勝手に飛んで行ったり、悪さや消滅してしまわないように、こうしてこの部屋に誘導して連れてくるわけだ。まぁ、誘導するのは天使だったり眷属だったりと様々だがな」


 黄泉の神は話し終わると、また一息つく。


「ではオメェはどうする」


「もう一つお聞きしたいです。新しく生を受けてとは、どういったことですか?」


「はぁ……いいか? 新しく生を受けるとは、解りやすく言えば転生だ。よくオメェたちが言う漫画やラノベなんかがわかりやすいか? 勿論だが、今テメェが持っている記憶は綺麗サッパリ消される。まぁ、稀にだがこの記憶の残留から前世を思い出す奴等もいるな」


「そうなんですか……じゃ転生を別世界に、と言うこともできるんですか?」


 司のその質問はもしかしたらと期待を乗せて聞いてみたが、帰ってきた答えは「無理だ」の一言だった。


 だが、黄泉の神は話を続ける。


「正確には可能ではあるが確率が低い」


「確率……ですか?」


「そうだ、オメェたち若い世代に多いんだが。別世界に、とか。剣と魔法の世界に、とか。ロボットと魔法の世界に、とか。可能ではある。だが、魂ってのは生まれた世界から基本的には離れ難い、だから転生しても世界が変わることは本当に稀だ」


「では確率が低いとは?」


「何事にも例外はある。基本的には離れたがらない魂だが、世界に無頓着な魂はある。そういった魂は、世界の壁って奴を超えることができるが、それでも人に転生することは本当に稀だ」


「?」


「分かってないみたいだから言うがオメェは人間にしか魂が無いとでも思っているのか? 例え世界の移動に成功しても人間に宿るなんて奇跡が起きるようなものだ。転生先が動物や虫或いはその世界限定の生き物だったりな。その中からピンポイントで人間に転生だなんて確率が低すぎるだろ。まぁ、ここに連れて来られた以上その偶然すらないんだがな」


 そう言って黄泉の神はガッハハハと笑った。


「では、異世界の人間に転生は不可能と……」


 司が落ち込むように顔を下に向けた。すると、それを見て黄泉の神は少し考える素振りを見せると呟くように話す。


「一つだけ、故意にそれを可能にする手はある」


 それを聞くと司は勢い良く顔を上げる。


「ホントですか!!」


「だが、この方法はオススメしない。」


 黄泉の神は首を横に振るが、司は構わず「教えて下さい」と黄泉の神を凝視した。


 黄泉の神は「はぁ……」とため息をつくとボソリと話す。


「記憶を維持したまま俺達神々の作った模倣世界が終わるまで、転生し続けること。これは、神々が長い神生を楽しく過ごすために考えた遊びだ。それと同時に自分の選んだ魂が果たしてどのくらい保つのか競わせる残酷な遊びでもある。大抵の魂は途中で投げ出しあの世へ行くか、記憶を消して転生する。さらに、無理をすれば魂が壊れてしまうそんな遊びだ。魂が壊れてしまえば二度と、あの世にも転生も出来なくなる。完全な消滅だ。しかし、テメェたちの言う漫画みたいな世界に故意に行ける可能性が一番高い方法でもある」


 黄泉の神は司を見る。その目は暗に『不可能』と語っていた。


「このゲームで、神々の創った世界が終わるまで、その世界で転生し続ける事が出来たのなら、俺達神々の力を使い、いくつかの特典と別世界へ移動。そして、人間への転生を俺達が助けてやる。だが、世界がいつ終わるのかは神ですら解らない、それでもやるか?」


 黄泉の神が司に問いかけると司は自信に溢れた目をしていた。


 それを見た黄泉の神は、ため息をつくと、どこからか紙とペンを出す。


「分かった。この紙にどの世界に行きたいか、また、どのような特典がほしいか、後、要望などがあれば書いてくれ」


 司は紙とペンを受け取ると、いくつか書いて黄泉の神へそれを渡した。


「へぇ……面白いことを書くな。少し待ってろ可能かどうか他の神々に確認を取ろう」


 司の書いた内容を読んで黄泉の神は、席を立ち、入って来た扉から退出する。そして、二十分経った頃、手に分厚い本を持って戻ってきた。


「神々の確認が取れた。その報酬を許可するそうだ。オメェがこのゲームをクリアー出来ればこの報酬を渡そう」


 そう言って持ってきた分厚い本を開くと、そのページには先程書いた内容の紙が書き写されており、それを机の上に置いた。


 黄泉の神は、またどこからか取り出した判子を先程開いた報酬を書いたページに力強く叩きつける。


 重い重低音が部屋に響き渡り、そして、すべてを圧倒する声で宣言した。


「今ここに!! 葉山 司のゲームへの参加を認める!! 模倣世界で死ぬたびにテメェはこの部屋に送られる!! もし、ゲームを続けるのならば左の扉に! リタイヤするのなら、この本のページを破り捨てろ! ゲームをクリアーしたその時、俺はまたオメェの前に現れる!! そして、この部屋での出来事はこの部屋にオメェが現れるたびにオメェの記憶から再生される!! では、オメェがゲームをクリアーすることを俺達は祈っている!!」


 すると、いつの間にか左の壁に扉が現れていた。


「行くといい、その扉を潜ればゲーム開始だ」


 黄泉の神がニヤリと笑うと司は席を立つ


「ありがとうございます、ゲームをクリアーしてまた会いましょう」


 そして黄泉の神へと深々とお辞儀をし、出現した扉に向かう。


 ドアノブを捻り扉を開ける。


「頑張れや。また、会おう」 


 扉をくぐる寸前、黄泉の神の声が聞こえた。それを聞いて司は――。


「はい!!」


 力強く返事をし、扉をくぐるのであった。


 司の去ったあとの部屋では黄泉の神が、司の書いた内容を見ながら笑っていた。


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